ローテーションがあったとはいえ、今のマドリーにとって考えうる最も悪い展開の試合となった。勝ち点3を得たのは幸運だったとしか言いようがない。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:オドリオソラ、バラン、セルヒオ・ラモス、ナチョ
MF:カゼミロ;モドリッチ、セバージョス
FW:アセンシオ、ベンゼマ、イスコ
60分:ベンゼマ→マリアーノ、63分:セバージョス→ルーカス・バスケス、79分:イスコ→マルコス・ジョレンテ
オドリオソラが初先発。マルセロ、クロース、ベイルもいないラインナップとなった。
■エスパニョールの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
DF:ハビ・ロペス、ナウド、エルモソ、ダビド・ビラ
MF:マルク・ロカ;エルナン・ペレス、ダルデール、グラネロ、ピアッティ
FW:イグレシアス
55分:ダルデール→ビクトル・サンチェス、ピアッティ→レオ・バチストン、70分:エルナン・ペレス→セルヒオ・ガルシア
4節終了し2勝1分1敗。まずまずのスタートを切っている。
■不安的中
誰が点を取るのか、というポイントに尽きる試合となった。
ポゼッションを安定させることに問題のあるメンバーでないことは確かだが、それをどうゴールに結びつけるのかに不安があり、それが見事に的中した。
クロースが不在だったため、サイドチェンジの回数も普段より少なく、ショートパスでボールを動かすことが多くなった。
セルヒオ・ラモスから右サイドバックへという斜めのパスのラインも、カルバハル不在でぱっとせず。
マルセロ、ベイルがいないサイドから突破できそうな雰囲気もなく、待ち構えるエスパニョールの守備ブロックの周りだけをボールが動く、典型的な「持たされる」状況に。
そんな中、初先発のオドリオソラは気を吐いた。
スピードを生かして何度かえぐれそうな場面を作れていた、数少ない突破の可能性を感じるプレーヤー 。カルバハルのような呼吸でボールが出てくるところまでは達していないので、思うような形にはなっていなかったところもあるが、カルバハル不在でも乗り切れる可能性を見せてはくれた。
■仕掛ける人、その選択を受け入れること
エスパニョールは4-1-4-1での守り。全員が自陣深くに下がることもある徹底した組織作りだった。
マドリーはピボーテの脇のスペースを生かしたいが、ボールが入っても早い寄せですぐにスペースから追い出されているような状態。
とはいえ、さすがに前を向くことも出来ないというような厳しさが持続していたわけではなく、勝負できるタイミングはあった。
そこでアセンシオやイスコが仕掛けなかったことで、チーム全体の攻撃が停滞してしまった感は否めない。
安全な位置でボールを守れば良いプレーヤーではないし、そういうポジションで起用されているわけでもない。1枚はがして自分でゴールに直結するようなプレーを期待されるところにいるのだから、手詰まっていた状態を脱せられるようなプレーを選択してほしかった。
だが、これは彼らだけの責任ではない。
例えば、ポゼッション全盛の頃のバルセロナでも、メッシが仕掛けられる時に仕掛けることは許容されていたようであった。
守備側からすれば、ディフェンシブサードでのプレーが続く中、ゴールに繋がる位置でメッシにドリブルされることほど嫌なことはない。シュートの意識を見せられると足を出さざるを得なくなるし、そこから守備のずれが生じてしまうことにも繋がる。
こうした効果を生むために、ショートパスでのポゼッションを基本としながら、状況判断によっては仕掛けがあることを、チームとして受け入れていたということだろう。
マドリーに立ち返ると、ベイル、マルセロあたりはそうした仕掛けをある程度認められているようだが、少なくともこの試合においては、アセンシオやイスコはそういう立場でないようなピッチでの振舞いであった。
彼らのチーム内での立場がいまだにそうしたところにあるということに、攻撃の停滞の遠因があるように思われる。
ロナウドもなき今、アセンシオやイスコは高い位置で勝負してゴールに直結する仕事をする立場になるべきだ。
だから、こうした展開の試合においては、良い位置で受けたら独力で変化をつけるような選択肢も持ってほしいし、彼らのそうした選択を許容するチームでなければならない。
ロペテギは彼らを重用するならば、ピッチ上での立場を明確に引き上げることもしていくべきだろう。それがセットでなければ、彼らはいつまでも殻を破れない。
■リードを得ても不安
全くゴールの予感がしない時間が続いていたが、41分、モドリッチのシュートがこぼれたところにアセンシオがおり、これをファーに射抜いて先制。
アセンシオにとっては待望の初ゴール。こういうシュートを持っているのだから、やはり狙えるところでは狙ってほしいし、良いきっかけになれば。
リードしたマドリーは60分以降ベンゼマを下げ、バスケス、マルコス・ジョレンテと守備バランスを整える交代で、1点で逃げ切るムード。ベルナベウからはブーイングも出ていた。
マリアーノは、前半なかったゴールへ向かう意識を復活させてくれる可能性があったが、チームが下がり気味になっていたこともあり、エリア内でらしいプレーとはならなかった。
マドリーは攻撃も上手く行かないし、ローテーションしての試合だからこれで終わりにしたいという試合運びだったものの、そういう試合にしては後方でのミスが多く、エスパニョールに決定的な場面を何度も与えることに。
エスパニョールに希望を持たせることになって、終盤は主導権がどちらにあるのかわからない時間もあった。ゴールにならなかったことは幸運としか言いようがない。
■最後に
代表でも見られたような、ポゼッション主体の攻撃の弊害がもろに出た。
慣れない組み合わせのマドリーに対し、エスパニョールがしっかり守った格好で、ある程度対策されていくと、こうした試合展開は増えていくのではないかと思われる。
だからこそ、誰かが勝負する場面も意図して作っていってほしい。そのためのプレーヤーはいるし、ロジックによらない、個での打開を高いレベルでも実現できるのがマドリーというクラブの良さだ。
メインのスタイルはこれまで見られたもので良いので、そこから少し逸脱した余白を持てるようになれば。
また、ローテーションでうまくいかなかったからといって、主力偏重になることも避けたい。早い段階で少数精鋭路線となると、シーズン後半が苦しくなるからだ。
オドリオソラのように、控え組でもポジション争いに参加し得る存在はいる。課題は拾いつつも、こういう試合内容となることを恐れず底上げを図ってほしい。
今週はミッドウィークにもリーガ。セビージャと対戦する。