バルセロナにとっては強く否定することは難しいであろう政治的問題が絡んだにも拘らず、無事に試合が開催されるまでに環境を整えてくれたことに感謝を。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ
MF:カゼミロ;バルベルデ、クロース
FW:ベイル、ベンゼマ、イスコ
ベイルとイスコが先発に。左サイドバックはメンディとなった。
■バルセロナの先発メンバー
GK:シュテーゲン
DF:セメド、ピケ、ラングレ、アルバ
MF:ラキティッチ;セルジ・ロベルト、デヨング
FW:メッシ、スアレス、グリースマン
55分:セメド→ビダル、83分:グリースマン→ファティ
ブスケツは体調不良のため直前で出場を回避したとのこと。ラキティッチが中盤の底に入った。
■マドリーの守備が機能
マドリーの形はイスコシステム。
前の3人が相手のボールの位置に合わせてコースを切り、中盤より後ろがそれに連動してパスコースを消すようにプレッシャーをかけていく。
それに対するバルセロナの組み立てが不安定なのは予想外。1人ずつマークされている時にはがす動きが少なく、前線から降りてくるサポートもほとんど見られなかった。
以前は、組み立てに苦労するとメッシが中盤の低い位置まで下りて数的優位を作り、コースを作って優位性を保つ形が見られた。メッシをその位置に動かせればゴールへの脅威は減るから、それを狙って、彼個人を消すのではなく、彼以外を潰していくことでプレーエリアを下げさせるやり方はマドリーも取ったことがある。
今回はメッシはそういうことをせず、前線で待っていた。以前のメッシの役割はグリースマンが担っていたようだが、彼もそこまで極端に中盤の組み立てに参加することはなく、前線は前で受けられるようになるまで我慢していた。そのため、マドリーの意図する通りに前から守備を当てはめていくことができるように。
問題はロングボール。
バルセロナの前線が残っているので、彼らにボールが渡れば一気に持っていかれる恐れが強い状態となっている。
シュテーゲンは精度が高いボールをけるし、狭い局面ではマドリーの守備が勝っても、蹴りだしたボールが前線に収まれば(彼らがそれをスタイルとして望ましいと考えるかどうかはともかく)バルセロナの火力なら得点の可能性は高まる。
ロングボールは概ねマドリーが回収できていたが、時折収まることで決まっていた速い攻めには少人数で対応することが求められた。
■シュート意識の高さ
マドリーの攻撃は、シュートで終わることを意識しているようであった。
悪い失い方をすると、守備参加していないスアレスとメッシによるカウンターが怖い。そのため、プレーが切れることが多いシュートで終わることを徹底できていたことの意味は守備的に大きい。
結果として前半だけで11本のシュートを放つことになった。
欲を言えば、エリア内でのシュートを増やしたかったところ。
クロスからのこぼれ球を拾っての形や、相手のボールを回収した直後の場面などが多く、崩してエリア内に侵入してのシュートは多くなかった。
そういうやり方と言えばそうだが、相手陣内での時間が長い割に決定的な場面が作れなかったとも言える。
こういうところが、アザールやマルセロを入った時に解決するかどうかの答え合わせは、次回の対戦まで持ち越し。
彼らが入ることにより必要となる守備バランスの修正と、得られるメリットを両立できるかは、楽しみな課題として残ることとなった。
普段よりつらかったのは、クロスの場面で良いボールが少なかった点。
カルバハルが良い形でボールを受けられる場面が少なく、手数をかけることになっていたし、左のメンディは精度がいまいち。
バルベルデがエリア内に入ることができるので、良いボールを継続して供給できていれば良い場面を増やせたかもしれない。
中2日で運動量の問題もあったと思うが、もったいなかった。
前半のマドリーで目立ったのはバルベルデとカゼミロ。
バルベルデが前に出てプレスに参加し、出てきたボールをカゼミロが回収する役割分担ができており、守備の強度が高い彼らが揃っていれば、バルセロナ相手にもここまでやれると今後に向けて自信が高められた。
バルベルデが底に入ってバランスを取るプレーが多かったバレンシア戦に比べると、中盤の有効性は大きく違った。
彼らが揃うことが今のマドリーの生命線と言えるだろう。
■交代によりバルセロナは改善
前半うまくいかなかったバルセロナは、セメドを下げてビダルを投入。
前半の状況と彼らの信条からすれば、試合の支配を取り戻すべく、この交代は後半頭からでも不思議ではなかった。
右サイドバックがセルジ・ロベルトとなり、この部分の繋ぎの精度が改善。また、ビダルが入って中盤が戦えるようになる。一石二鳥の交代だ。
バルセロナはセカンドボールを拾えるようになり、速い攻めが繋がることが前半よりも増えた。
数的同数以上でゴールに迫る機会はマドリーよりも多く、スアレスがシュートしてファーに外したところなど、決まっていておかしくない場面も。
これにより、マドリーが攻撃をスタートする位置は低くなった。バルセロナの前線の守備は緩いので、ある程度まではボール運びに支障はなかったが、ビダルが入った中盤とのせめぎあいはハードになった。
マドリーがそうした中盤を回避する時は、ベイルをめがけてのロングボールがメイン。アルバとの競り合いはほとんど勝利していた。
サイドバックとの空中戦を起点にする形は、現有戦力では彼にしかできない。前半から主導権がバルセロナにあれば、こうした形でボールを進めることをメインに考えていたのかもしれない。ロングスローの採用も併せて考えると、ベイルの使い方は準備していたもののように思われた。
■無理せず
速い展開が増えたことに対応するため、イスコをロドリゴに代えたのは妥当。
イスコは、やりたいプレーを多くやれなかったかもしれないが、守備面での規律を維持し、中盤の駒として十分な働きであった。
一方、バルベルデをモドリッチに代えた意図は良く分からない。バルベルデを残してクロースをモドリッチと入れ替えるのがこれまでのスタンダードだから、驚いた。
考えられるのは、そこまで混戦となることを望んでいなかったということだろう。
バルセロナは速い展開にしたい。マドリーがそれに同調すると、失点の恐れは強くなる。前線はスピードを確保しつつ、最悪の場合前線が孤立するようなことになっても中盤より後ろのバランスは保つようにしてリスクを低減し、セットプレーでクロースが蹴って少ないチャンスを狙うという考え方である。
そうだとすれば、あと一枠の交代を使わず、無理に得点と勝利を狙わなかったのも頷ける。
前半からの出来を見ると、1点取りにいきたくなっても当然。それに乗るならば、ベイルに代えてビニシウスを入れて変化をつけていく手を打っておかしくはない。
その場合は、バルセロナにつけ入れられるリスクを負うことにもなるから、リターンを得るよりもリスク回避を主眼とした考え方をしたと解釈している。
バルセロナは後半の修正によって、ようやくらしいプレーが見られるようになった。アルバが高い位置を維持してメッシとの関係でサイドを崩せるようになっていたから、彼らにしてみれば前半の出来はもったいなかった。
ブスケツがいれば守備強度、配球とも、最初の中盤より良かっただろう。マドリーがアザール、マルセロ不在の影響を受けたのと同様、バルセロナも中盤の構成で大きな影響を受けた。
ベストの布陣ではないことから、互いにもっとやれたのではないかとの思いを抱きつつ、無理をすることも避けてのスコアレスとなった。
■最後に
バルセロナの状態もあってのことだが、前半のように守備がはまり主導権を握れたのは予想外。
現有戦力でやれることを発揮してのドローだから、全体としては納得できる結果だ。
バレンシア戦に続いてのアウェイ2戦で勝ち点2を少ないとみる向きもあるだろうが、1勝1敗でも得られる勝ち点は3だ。内容も含めて、決して悪い結果ではないと考える。
劇的なゴールでの引き分けと、カンプノウで試合を掌握しての引き分けだから、うまく乗り切ったと肯定的に見るべきだ。
あわよくば勝ち点4が欲しかったが、よくやったと言うべきだろう。
バルセロナと互いのベストメンバーを揃えての対戦はシーズン後半に持ち越し。ここからのさらなる進化に期待したい。
次節はアスレティックとベルナベウで対戦。
良い流れを維持しているので、2019年をそのままの雰囲気で終えたい。