レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

CL決勝トーナメント1回戦第1戦 vPSG

完敗。

得点の糸口も見いだせなかった。

 

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■マドリーの先発メンバー

GK:クルトワ

DF:カルバハル、ミリタン、アラバ、メンディ

MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース

FW:アセンシオ、ベンゼマ、ビニシウス

 

72分:カルバハル→ルーカス・バスケス、アセンシオ→ロドリゴ、82分:ビニシウス→アザールモドリッチバルベルデ、87分:ベンゼマ→ベイル

 

ベンゼマ、メンディが帰ってきて、予想通りのメンバー。

 

■PSGの先発メンバー

GK:ドンナルンマ

DF:アクラフ、マルキーニョス、キンペンベ、ヌーノ・メンデス

MF:パレデス;ダニーロ、ベラッティ

FW:ディ・マリア、メッシ、エンバペ

 

72分:ディ・マリアネイマール、87分:ダニーロ→グイェ

 

ネイマールはベンチスタート。でも出てくるのはディ・マリアである。

 

予想は外れ

バルセロナ晩期のメッシは中盤に下りることが多く、パサーとして振舞っていて、彼自身が攻撃での脅威になっていた全盛期(マドリーでいえばモウリーニョ期以降)ほどの存在感はなかった。

また、守備に参加することがないので、全盛期バルセロナを支えた奪われた後のプレスの早さは失われていた。

 

よって、戦前の私の予想は次のようなものであった。

 

  • マドリーに対するパリの前からのプレスの強度はさほど高くなく、マドリーはボールを持てる。
  • 低い位置に下りるメッシを含めたパリの組み立てを阻害し、ベンゼマとビニシウスを中心とした速い攻めに繋げるために、中盤より前の守備が重要。

 

ところが、この予想は完全に外れた。不明を恥じるのみである。

実際の状況を見ていく。

 

メッシがいても実現したパリのプレス

一応当初の配置が前線の中央だったメッシが中盤に頻繁に下りるのは、バルセロナ戦での経験から想定通り。

メッシが下がるとエンバペ、ディ・マリアが中央に近いポジションを取り、空いたスペースを両サイドバックが押し上げて使っていた。

 

この形からの守備でマドリーのポゼッションを脅かすほどのプレスはないのではないかというのが予想だった。

だがパリは、守備に貢献しないメッシを中盤に下げたままの形を維持。

ディ・マリア、ヌーノ・メンデス、ベラッティ、アクラフが主体となり、エンバペも時折参加して、サイドへのパスコースやクロースとモドリッチへ渡すコースを切り、マドリーのセントラル2人とクルトワを追い、ロングボールを蹴らせる形を実現していた。

 

マドリーとしては、ロングボールをベンゼマやアセンシオを経由してビニシウスに届けられれば、ドリブルで最低でもパリを押し下げることができる。

これを避けるため、ビニシウスはダニーロが第一に監視しつつアクラフやマルキーニョスが加勢して、ビニシウスに縦に運ばれないよう警戒。

これによって、マドリーのロングボールは収まらず、パリが早いタイミングで回収することとなっていた。

 

守備を期待しないメッシが前線からいなくなるのを利用して、守備強度で勝負できる面々を前に押し出しすことで、マドリーの組み立てを寸断したのだ。

 

雑なロングボールばかりになったマドリー

対するマドリーはセントラルが開き、その前に位置するサイドバックとインテリオールで局面の打開を図るいつもの形。

ただ、メンディのボールタッチが怪しくディ・マリアに厳しく寄せられていたのと、メンディに隠れがちだったがカルバハルもミスが見られ、彼らのところが奪われるきっかけとなっていた。

 

そこで、クロースとモドリッチが最終ラインの高さまで下がって組み立てを助けるわけではなかった。

この判断の理由はよくわからない。

彼らを消すためにマーカーがついてくるから、後ろが重くなりすぎて、狭い局面で奪われる恐れが高くなるプレスを受けることになると考えたのかもしれない。

 

彼らが下がらず、ベンゼマを後ろからサポートするような位置取りを保ったこと、ボールを逃がしたいサイドバックのタッチが悪かったことで、パリのプレスは効果を発揮することに。

マドリーは精度の高くないロングボールを蹴ってはボールを回収され、パリのペースで試合が進むこととなった。

 

当初こそクロースとモドリッチが下がる形が見られたのだが、すぐに止めていることから考えると、「どうせロングボールを蹴ることになるなら下りて手数をかけてもしかたない」と判断した可能性はある。

実際、前半は彼らの上をボールが通過しパリのボールになって、守備に回ることが繰り返されていた。

蹴ってしまうからサポートに行かなくなるし、そうしてサポートに行かないから蹴ってしまう。

その先で収まれば「結果オーライだったね」で済むのだけれど、ダニーロが非常にうまく守っていて、前半は特に収まる回数が少なく、ずっとパリのターンとなってしまった。

 

速攻を意図していたマドリーの思惑がパリの守備にうまく利用され、速攻が成立せずただただ引いて守らされたという印象。

 

守備では前述のダニーロ、効果的な縦パスを何本も通し、メッシを起点とした前線のプレー時間を長くすることに貢献していたパレデスの存在感が大。

クラックだらけの前線に比べるとネームバリューは落ちるが、攻守にわたって中盤がチームを支えていた。

 

マドリーが継続を嫌い、パリは前線が生きる

後半になると、クロースやモドリッチが前線に出ていってプレスをかける、よく見られるプレーが復活。

パリのセントラルをほぼ放置していた前半、さんざん押し込まれていたので、同じ展開が続くのを嫌って前からの守備を意図したと思われる。

 

また、見返してみると、最初の印象よりも、後半はボールを持ってパリ陣内に入ることはできていた。

しかし、勝負したかったビニシウスのところは中へのコースが消されており、少し怪しい時はサイドにいるうちにファールで止められていて、彼とベンゼマの関係から明確なチャンスができず。

 

逆にパリが奪ってからエンバペを走らせる速攻を実現。ここでも中盤の配球力が生きていた。

エンバペは縦に運ぶことでマドリーの面々を自陣に戻らせる。これはビニシウスにやってほしかったプレーであったのだが・・・

 

アタッキングサードで勝負するプレーでも、こうした運ぶプレーでも、カルバハルがエンバペを全く抑えられなかったのが痛かった。

攻撃の場面でもミスで速攻のきっかけとなっていたから、バスケスと入れ替えられてしまうのはやむなし。

 

マドリーが出てきたことによって、アタッキングサードでパリの前線の能力の高さが生きるように。

エンバペは「速くてうまい」のレベルが、ビニシウスより上であることを何度も示していた。

 

手当て以上にならず

カルバハルと同じ右サイドのアセンシオ。

彼には流れを無視して決められるシュートがあるが、それどころではなかったというプレー内容。それは収めてくれというボールも収められていなかった。

守備に神経を使ったからというのもあるだろうが、それでチームの悪い流れに飲み込まれてしまうと、アセンシオのメリットは少ない。

守備で頑張れるロドリゴバスケスとともに入り、エンバペ対応を強化することになったのは自然な判断であった。

 

だが、この変更は手当てでしかなく、自分たちの良さを出すためのものではない。

(結果としてあまり改善はしなかったのだが)守備を改善できたなら、マドリーに比べて自由にプレーできていたパリに、自分たちが好む状況を強いることを考えないと状況は変わらない。

 

アンチェロッティを保守的と言うのは、この右サイドの交代によってではない。

その先で自分たちのペースに引き込む変化をつけようとしなかったことによってである。

 

前半ほどではないが、モドリッチとクロースは後半も生きる場面が少なかった。

また、当初から意図していた速攻に厚みがなく、単騎でやらざるを得ず簡単に処理されていたということから、状況に合わせてバルベルデやカマビンガを使うことを考えても良かったのである。

 

前半よりも敵陣でプレーする時間が生まれていたことで、中盤を変えるハードルが返って高くなってしまったようではあった。

だが、残り10分を切ってからでは、ワンチャンスに賭けるくらいにしかならない。

ほとんど相手にへの対処だけで試合が終わってしまったということになる。

 

結果として、下がって受けるだけの前半と、多少ボールは持てるようになったもののシュートの場面は作れず、逆にゴールを脅かされるばかりとなった後半という印象だけが残った。

どうせこうなるなら、走って相手に混乱を生み出せるバルベルデやカマビンガを組み込むべきとなるのは当然で、アンチェロッティがフロントに「今後は彼らをもっと使うように」と言われたという報道が既になされている。

 

 

私もこの試合においては途中交代でバルベルデを早めに入れるべきだったと思うが、先に指摘したように、これが「クロースとモドリッチの時代」の終わりのきっかけとなるということについては疑わしいと考えている。

 

 

まず、パリのプレーが単純に良かった。

バルベルデで変化が起きるかもしれないと期待はしたが、振り返っての全体の印象としては彼一人で変わるような差だったとは思えない。

 

その差を埋めるには、バルベルデやカマビンガが望ましい形になる前、ただ相手にボールを渡すだけになっていた後方の組み立てを改善することをまず考えなければならない。このボールの出し方の安定なくして、その先の攻撃はないからだ。

その点において、現有戦力ではクロースとモドリッチの組み合わせが最適であることは間違いないだろう。

 

もちろん、走力勝負になる試合、相手に混乱を与えたい状況ではバルベルデとカマビンガの方が勝る。

だが、この試合でマドリーが自分たちの形を作るため、まずしなければならなかったのは組み立ての改善であり、そこを飛ばしてバルベルデとカマビンガに頼るのは順序が違う。

 

試合後、アンチェロッティはボールを持った時に困難があったと述べている。

クロースとモドリッチによって組み立てを整え、望む攻撃ができるようにすることを第一としつつ、状況に応じてバルベルデとカマビンガを使えるという層のメリットを生かすことを考えるべきではなかろうか。

 

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最後に

ここ4試合で1点。

負傷者が出て苦しいやりくりが続いたこともあり、ペースが落ちている。

次節のアラベス戦では、自分たちのやりたい形を思い出してプレーしてほしい。

 

パリとの第2戦に向けてはメンディとカゼミロが出場停止。

守備を考えると厳しいが、この試合と同じやり方をして受けても2点取るのは難しいと思われる。

良い守備を作るために良い攻撃ができるような構成になれば。