今年最後のリーガの対戦はバルセロナ。
アウェイ、カンプ・ノウでは4年間勝利がなく、苦戦が予想されたこの試合では、
普段起用しているマルセロを、守備の能力が高いエインセに替えて臨んだ。
GK:カシージャス
一方のバルセロナは、ロナウジーニョやデコ、グジョンセンなどの選択肢によって、スタートメンバーの組み合わせの可能性はいくつかあったが、
結局ロナウジーニョとデコがスタートで出場。
GK:バルデス
MF:シャビ、トゥーレ・ヤヤ、デコ
■マドリーの守備方法と前半の展開
マドリーとしては、前線の3人に簡単にボールを入れさせないこと、ボールを持たれても前を向かせないことがディフェンスの鉄則。
また、前線にボールを運ばせないために、最終ラインから中盤を楽に経由させないことも必要。
バルセロナ最終ラインと中盤へ高い位置でプレッシャーをかけ続けるかと思っていたが、マドリーは基本的にはラウールとニステルがヤヤを挟みながらパス出しの方向を制限し、
ディフェンシブサードに入る辺りで人数をかけようという意図に思われた。
いつもと違うのはロビーニョもかなり低い位置まで戻って相手を追いかけていた点。
攻撃の要である彼が低い位置にいては攻撃の構築はしにくいが、それだけ守備に重点を置いていたということだろう。
20分くらいまでは、バルサは左サイドの攻めが多く、ロナウジーニョを使おうという形が多く見られた。
ロナウジーニョにはセルヒオ・ラモスがぴったり張り付き、前を向かせない。
ペペも頻繁にカバーに回っているが、よくないボールの取られ方をして完全に数的不利になる状況があった。
この要因はバルセロナの前からの執拗なプレッシャーだろう。
マドリーの最終ライン周辺からのパス出しはバルセロナよりも苦しく、ディアラのパスミスが多く、ペペは不用意なプレーが何度かあって、そこからピンチを招いた。
26分、前回の招集リストの記事の時にポイントとしたロビーニョとプジョルの1対1が初めて発生した。
かなりスペースがある中での対決だったということもあり、ロビーニョがプジョルをかわせたが、
プジョルのファールでストップ。
しかしプジョルにイエローカードが出て、今後のこのマッチアップを優位に運べる。
29分、エトーが抜け出すが、カシージャスが良い飛び出しを見せ、さらにイニエスタに渡ったボールも追ってセーブ。
33分には右サイドのイニエスタが抜け出し、クロスにロナウジーニョが合わせるがこれもカシージャスがセーブ。
序盤よりもバルセロナの攻撃陣に前を向かれる回数が増え、裏に抜け出される機会が続いていて、よくない流れの時間帯。
しかしここでマドリーが一つのチャンスをものにした。
カシージャスのフリーキックが跳ね返り、ディアラへ。ディアラからニステル、ラウールとわたり、
バティスタがボールを受ける。
バティスタは浮き球のパスをニステルへ送り、ニステルはワンツーパスを選択。
マルケスを振り切ったバティスタがサイドネットへうまくボレーシュートを決め、マドリーが先制。
浮き球のワンツーを完成させ、しっかりおさえたボレーシュートを決めるという素晴らしいゴールだった。
43分、守備で懸案の1対1だったロナウジーニョとセルヒオ・ラモスのマッチアップが起こる。
こちらも26分のロビーニョとプジョルの対決同様、局面では攻撃側の勝ち。
何とかコーナーに逃れたが、やはり1対1では苦しく、不安が残った。
■前半の印象
前半は1-0で終了。
この時点でボールの支配率はバルセロナの54%と、戦前の予想通り。
シュート数はバルセロナが4本(枠内2本)、マドリーが5本(枠内3本)。
シュート数ではマドリーが上回っていたが、シュートにならなかったものも含め、チャンスはバルセロナの方が多かった印象。
バルセロナは序盤左サイドを多用したが、セルヒオ・ラモスがロナウジーニョを比較的よく守っていた。
何度か抜かれたり簡単に前を向かれたりしたが、そもそもスペースがある中で守らざるを得ないこともあって、彼だけの責任でない場面もあった。
マドリー左サイドはイニエスタとシャビ、デコがうまく絡んで攻められた。
ロビーニョが下がったり下がらなかったりで、退かない場面で人数が足りないこともある印象。
上にも書いたように、ディアラとペペの不用意なプレーがバルセロナのチャンスになりかける場面があったので、もっと簡単にプレーして良いはず。1点リードしたのだから、余計なリスクを負う必要はないだろう。
ラウールは攻撃の場面で顔を出すことが少ないが、最初のディフェンダーとしての役割はしっかりこなしている。
■後半 ―両チームの交代策と、攻めのバルサ・守りのマドリーの対照―
後半開始時点での交代はなし。
49分、早速ロビーニョ対プジョル。エインセがほとんど初めてオーバーラップするが、チャンスを作れず。
追いかけるバルセロナは人数をかけて押し込みだした。それにともなってマドリーは守備に人数を割くことになり、結果ロングボールが増えてきた。
手薄なバルセロナ守備陣をつくカウンターを狙いたいが、ボールが収まらず、苦しい時間帯。
57分、デコに替えてジオバニ・ドス・サントスが出場。
イニエスタが中盤に下がり、ドス・サントスが右のFWに入るような変更で、縦へのスピードを重視しようという交代だと思われる。
63分マドリーが右サイドで数的有利を作り、攻め込む。ファールをもらうがフリーキックが合わず。
ただ、この時間帯からマドリーのカウンターがいくつか形になりだした。
ファールも増えてきて、いい位置でのフリーキックなど、マドリーにもチャンスがありそうな雰囲気。
76分にプジョルとザンブロッタを交代。キャプテンマークはロナウジーニョに。
サイド攻撃の厚みを増すべく、攻撃能力が高いザンブロッタを起用した。
マドリーもこれに対応し、守備を固めるため、78分にスナイデルに替えてガゴ。
スナイデルを替えることで、ボールの保持よりも守備、カウンターへの志向が強まった交代だった。
81分、バルサは最後のカードを切る。シャビに替えてボヤン。
ボヤンが左のFW、ロナウジーニョが一列下がったが、攻撃に注力するため、前線は流動的。
82分に早速ボヤンがミドルシュート。
続いてコーナーがこぼれたところをヤヤがシュートするも枠外。
この時間帯は完全に攻撃のバルサ、守備のマドリーという流れ。
役割は替えず、そのまま置き換える交代。時間稼ぎという面もあったか。
カンプ・ノウで負けるわけにはいかないバルサが攻撃を続けるが、ラウールがよく相手を追い、時間をかけさせていた。
献身的なランニングによって、守備陣の構築の時間を稼ぎ、また最終ラインの負担を軽減することもでき、ディフェンダーにとっては非常に助かる。
87分にマドリーが最後のカードを切った。
イエローカードを既に受けていたセルヒオ・ラモスに替えてトーレス。
カードの影響で窮屈になりがちだった右サイドの守備をトーレスに替えてしのごうという意図。
88分、時間稼ぎをしたいマドリーだったが、ラウールが無理せず落ち着いてマイボールのスローインにした。
大したことのないプレーだったが、この時間帯でこうして落ち着いた判断をし、マイボールを確保できるのはさすがだろう。
ロスタイムは4分だったが、3分になってマドリーボールになったところで試合終了。
カンプ・ノウで4年ぶりとなる勝利でバルセロナとの勝ち点差を7とした。
ボール支配率はバルセロナの55%。
シュートはバルセロナが16本(枠内6本)、マドリーは9本(枠内5本)。
■試合全体の感想
65分過ぎからは攻めたいバルセロナの裏を突くカウンターが何回かあったが、追加点はならなかった。
バルセロナの攻撃は迫力があったが、残り10分ほどは自陣でギリギリの守備を展開、最終ラインをはじめとしてよく踏ん張ったと言える。
攻めを遅らせれば人数をかけ、ボールが戻ればラウールやニステルがよく追いかけるという、守備意識が統一されていた印象だった。
前線に入るボールを取ろうと相手の前に出るところを入れ変わられることが何度かあったが、最後まで集中力を切らさずに守り切った守備は評価できる。
バルセロナを無得点に抑えたことは自信につながるだろう。
また、前半よりもディアラやペペの不用意なプレーが減った。
クリアが増え、押し込まれる展開にはなったが、バルセロナの俊敏な攻撃人の速い攻めを受けなかったので、ドス・サントスやボヤンのスピードを活かさせなかったという考え方はできるだろう。
スナイデルは前半よりもボールを持ってカウンターの起点になるなどしたが、ボールがバルセロナに良く持たれていたこの試合では致し方ないというところだと思う。
代わってバティスタが良く走り、攻守によく顔を出していた。
得点を挙げた場面のように前線に現れ、守備時にはしっかり中盤へ戻って守るという両面の活躍が素晴らしかった。
次の試合は年が明けて2008年の1月2日、コパデルレイ決勝トーナメント一回戦第2戦、アリカンテとの試合。控え組主体で臨むだろうが、しっかり勝ち抜けてもらいたい。
リーガの次節は1月6日にサラゴサとの対戦。
来年は今年以上のプレーを見られることを期待している。