第33節、マドリーはアウェイでラシンと対戦。
前日にバルセロナが引き分けていたため、勝てば勝ち点差をさらに広げるチャンスとなる。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
MF:ガゴ、ディアラ、スナイデル
シュスターが理想とするメンバーが最終ラインに並んだ。
中盤ではガゴが底に位置し、ディアラとスナイデルが前。
前線はロビーニョとロッベンがラウールを挟む形。ロビーニョ・ロッベン併用の効果はいかほどだろうか。
■ラシンの先発メンバー
GK:トーニョ
DF:ピニージョス、モラトン、セサル・ナバス、アヨセ
FW:チテ、ムニティス
中盤の底にドゥシェル、コルサを配した形。
マドリーの最終ラインと、チテ、ムニティスの2トップとの対決の行方はいかに。
■理想的展開
前半はマドリーがボールを支配する。
ラシンの中盤での寄せも速かったが、ディアラが高い位置でよくボールを持てたことで、相手がスナイデルだけを見れば良い状況でなくなった。中央でボールを持てれば、両サイドの攻撃もうまくいく可能性が高くなる。
ロッベンがチャレンジできるシーンも多く、アウェイながら期待できる立ち上がり。
13分、スナイデルとガゴの壁パスから、ボールはロビーニョへ。
ロビーニョが左サイドからセンタリング。中でラウールが合わせて先制ゴール。
ロビーニョが簡単にクロスを上げられ、中央でもラウールがたやすくラインの裏に出てこられた。少なくともどちらかは防ぐべきだったか、と考えれば、この序盤の1点はマルセリーノ監督の言うとおり、ラシンのミスだったかもしれない。
いずれにせよ、早い時間に先制できたマドリーは楽になる。
無理する必要はないので、十分時間をかけて攻撃を構築できる。最終ラインでのボールの保持も長くなり、当然ボール支配率は増していく。
一方のラシンはチテがサイドに流れながらボールを受ける形がいい。マドリーにとっては危険。
ここを起点にされ、ペナルティエリア内に侵入されることも多く、信頼できるディフェンダーをそろえたといっても、エリア内でのリスクはある。
36分、チテが抜け出してのシュートはカシージャスがセーブしたが、チテの対処は考えた方が良さそう。
前半半ばごろに、お互い中盤にスペースを空け、攻めては攻められを繰り返す状況があったが、そうした状況で追いつかれる危険性は十分にあった。
■我慢の後半
後半開始時点で両チーム交代はなし。
ラシンがギアを入れ替えてきて、後半開始当初から押し込まれる。チテを狙うことが徹底されてきて、攻めの糸口はつかまれた印象。
ラシンはセラーノに替えてスモラレク。攻めの姿勢を崩さない。
マドリーとしては、ディアラも下がってくれば守備の厚みは増すが、押し返すことができづらくなる。
また、シュスターは現段階で理想的なメンバーをピッチに送り出しており、交代で調整することも難しい状況だと思われた。
実際、最終ラインは堅実にプレーしていた。左サイドバックとしてプレーしたエインセは守備においてマルセロとは隔絶したプレーを見せたし、全体としても、久々の組み合わせながらさすがといった印象。
66分、ラシンがさらに交代枠を使う。ムニティスに替えてパブロ・アルバレス。
マドリーは76分にロビーニョに替えてイグアインが入ったが、最初の交代が残り15分を切ってから、ということが、先発メンバーをできるだけ維持したかったシュスターの思いを代弁しているように思う。
後半のマドリーは、攻めるラシンの裏を狙うようなパスが増え、2点差にして試合を決めようとするがなかなかゴールに納まらない。
78分、抜け出してスナイデルのパスを受けたロッベンだったが、シュートは枠外。
1-0のままだが、ホームのラシンが流れをつかんでいる状況は変えられない。
82分、ラシンはコルサに替えてオルテマン。
84分、ロッベンに替えてバルボア。バルボアは昨シーズン在籍したクラブとの試合で久々の出場となった。
どちらもそのまま置き換える形での交代。
93分、バティスタとバルボアがパス交換。完全にうまくいったわけではなかったが、最終的にはバルボアが右で待つイグアインにしっかりパスを出した。
フリーのイグアインがきっちり決めて、最後にようやく試合を決した。
ボール支配率はマドリーの56%。枠内シュート数はマドリーが6本、ラシンが3本。
今節はアウェイでしっかり我慢し、結果として我慢が奏功した。
10回あったコーナーの場面で何とか失点せず乗り切れたのも大きかったかもしれない。シュスターの交代采配が遅い癖が出たようだが、このような試合では結果としてうまくいったことを評価したいと思う。
この2人を比べると、ロビーニョの方が下がってまで守備をする場面が多い印象。よってロッベンの方が高い位置取りとなり、まず狙うのがロッベンになることが多いのも当然だろう。
また、攻守に運動量が多いロビーニョから先に交代するのも納得できることだ。
が、ロビーニョがより守備をする、といった形が取り決められているのかというと、そうではないような気がする。以前からロビーニョは戻って守備に参加することもあったからだ。
前線に残っていがちなロッベンが、ロビーニョの守備意識に影響していないとは思わないが、ある程度は自然な「住み分け」をしているように感じた。
ラウール、ニステル、ロビーニョという前線と比較すると、残るのはロビーニョでラウールとニステルがより守備をする役割だった。
1人が残り、2人が守備もする、という大雑把な状況は維持されている。
だから、ある程度は使えるめどはたったといっていいと思う。
現状で彼らを併用しても、おかしなことにはならないだろう。
だが、果たしてそれで良いのか。
彼らの一番の良さはやはり攻撃。両サイドに彼らを配しておいて、結果片方しかその一番の長所を生かせないとなれば、もったいないことだろう。
そう考えると、併用することで大きな違いを生み出せるか、というと、今のところ答えは「いいえ」だと思う。今後、役割分担の変化で、様々に変わっていくことはあり得るので、そこに可能性を残しておきたいとは考える。
■次節にむけて
次節はホームでアスレティックと対戦。
今節アスレティックは、サン・マメスでバレンシアを5-1と一蹴した。
中盤の核であるシルバを欠いたバレンシアを相手に、しつこいチェック、攻守の切り替えの早さを見せた。
マドリーにしてみれば、球離れが悪いと、中盤でことごとく引っかかる展開になりかねない。
テンポよくボールを動かしていきたい。復帰するグティのプレーには期待したいところ。