2日遅れでバルセロナ戦を振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:コエントラン、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ
FW:ベンゼマ
58分:エジル→カカ、63分:ラス→ケディラ、68分:ディマリア→イグアイン
形は4-2-3-1。いつも通りのやり方を選択した。
■バルセロナの先発メンバー
GK:バルデス
FW:メッシ、セスク、アレクシス・サンチェス
79分:セスク→ケイタ、84分:アレクシス・サンチェス→ビジャ、89分:イニエスタ→ペドロ
最初は4-3-3。ポゼッションが落ち着いてからはアウベスがあがり3-4-3に変形。そういう変形が出来るメンバーを選んだように思われる。
■試合前に
まず、コエントランの右サイドバック起用に触れておきたい。
彼のこのポジションでの起用は最近になって始まったもの。
カルバーリョの負傷、それに伴うセルヒオ・ラモスのセントラル移動で右サイドバックのポジションが空いて、当初はラスが中心となって起用されていた。しかしながら、ケディラのプレーが良くなく、ラスをピボーテにおきたかった、という経緯がある。
しかしながら、この試合ではアルベロアも招集され、ベンチ入りもしていた。
前に出て攻撃に絡ませたい、ということならこの起用の1つの理由になるだろうが、プレーを見るに、攻撃は自重する形となっていて、守備が非常に大きなタスクになっていたことは明らかだ。
アルベロアはアヤックス戦でも70分ほど出場しており、コンディションの問題は起用しない理由としては弱いもの。
そうであれば、守備面で信頼できる本職のアルベロアを使うべきだった。もし無理ならば、アルビオルという第二の選択肢もあった。
それでも、右サイドに不慣れなコエントランが先発することとなった。
こうした起用は、ある種の疑念を抱かせるに十分なものだ。
自ら主導したコエントラン獲得の大きな理由、ユーティリティー性を示す場としているということ。
そして、代理人ジョルジュ・メンデスとのコネクションから特定の選手を使っている、もしくは使わざるを得ないのではないか、ということだ。
こうした疑念を晴らし、純粋にフットボール的な問題からアルベロアではなく、コエントランを使ったと言えるだろうか。私はそうは思わない。
また、この疑念はもう一つのところへも波及する。
モウリーニョは全てを勝利のために尽くしているかという、根本的な問題だ。
ビジネス的な見地から先発メンバーが左右されているとしたら、彼のメンバー選考は信頼できないものとなってしまう。
もちろん、クラブは収益をあげなければやっていけないのだから、ビジネスを考える必要はある。しかし、それを考えるのは監督ではない。
かつてもペレスが選手の扱いに介入したとの話があったが、モウリーニョ自身のビジネスにせよ、ペレスのビジネスにせよ、そうしたことをピッチにさしはさむようになっては勝利は遠のくばかりだ。
■全員での守備は構築されないのか
さて、試合。
バルデスのプレゼントパスによるゴールから試合は始まった。
プレゼントパスではあったが、序盤の激しいプレスの賜物といっていいだろう。形はともかく先制したことにより、落ち着くことはできた。
ただ、バルセロナも1失点では形を崩さない。ポゼッションを基盤とした攻撃を整え、途中からは3バック化した。マドリーのプレスが長い時間続くことはない、それは過去の対戦からはっきりしていたから、ペースが落ちてきたところで中盤を厚くすることは、当初から想定していたものだろう。
マドリーの課題はそうなってからの守備。
厚くなったバルセロナの中盤への対応は特になく、主導権を失ったままになってしまった。
また、リードを生かして最終ラインを下げてしまうこともせず。ベルナベウであることも考えれば、そうした選択肢を取ることは避けてもらいたいが、とにかく必要な対応策を取るモウリーニョ、というところを見せてもらいたかったと思う。
また、ロナウドとエジルが守備に参加しない問題は相変わらず存在している。正確に言えば以前よりは参加している。ロナウドはプレス時にサイドバックをケアしているし、エジルも時折下がって守備をする。が、悪く言えばそれだけ。
良くなったとは言え守備が得意ではないマルセロがいる左サイドは、ロナウドの不参加とあいまって、依然として弱点であり続けている。
モウリーニョへの期待の一つは、きちんと守備を出来るチームとすることにあったことを考えれば、この試合で見せたような守備はこれまでの成果としては非常に残念なものだった。
結果として得点機を外しまくったロナウドのプレーは後で触れたいが、ロナウドとエジルを攻撃のために取っておく方法はありきたりのもの。先制してもその形を取らざるを得ないことに、今のチームの限界がある。
カウンターを主体とすることを選択するとしても、いい形でボールを奪わなければいけないという大前提に立ち返れば、この状況は非常にまずい。
ベンゼマとディマリアの守備は献身的だが、彼らが4人分動くことはできないし、逆サイドまでカバーできるわけではないのだ。
ディマリアのポジションについても書いておきたい。
この試合に限ったことではないが、左利きの彼は、右サイドで必ず切り返す。それにしても、カットインもロッベンのような成功の確率を期待できないし、左足からあげるクロスは中の状況に構わないことが多く、リズムを悪くすることが多々ある。
そうであれば、左サイドで使ったほうがいいのではないか。切り返さずにクロスを上げられるし、マルセロの前で守備を頑張ってくれるメリットもあるだろう。
そうしない理由は、ロナウドの左サイド起用を優先しているからだと考えているが、ロナウドばかりに期待しないやり方を目指すのであれば、問題はないはず。
また、遅攻時の改善を目指す場合、中へ中へといきがちな逆足のサイドでプレーするより、サイドを使うプレーも意識できるだろう。
とにかく、全員での守備がまず前提として必要だということははっきりしている。その土台作れれば、やれることはもっともっと増える。
■メンタル面で
決定機をものにできなかったロナウドをはじめ、メンタル面で後手に回った感は否めなかった。
リードしても、自信をもってプレーすることはできないままで、バルセロナとの対戦に非常に神経質になっていることをうかがわせた。
若い選手が多いことも要因としてあるだろう。
また、外部から見られるよりも彼らは繊細であり、期待の大きな試合でそれを跳ね除けることが難しいこともあるだろうと思う。大きな試合で急に力みだすゴール前でのプレーは、技術よりもメンタルの問題だ。
これは一歩一歩解決していくしかない。
当然ながら、成功体験を積み重ねることでリラックスしていくものだ。その意味でも、モウリーニョの言う運をものにし、勝ちきることができなければならなかった。
■前を向こう
とにかく、切り替えが必要。リーガは続く。落ち着いて次の試合へ向かってもらいたい。
とはいえ、そういう他ないというのが実際のところだが。
チーム作りは、一定のところまでは来たといっていいだろう。
あとは、古くて新しい問題である、全員でのプレーが出来ないことをモウリーニョがどう打開するか。
上で書いたとおり、特に守備面でそれができる監督と期待されているだけに、これを解決してもらいたいものだ。
次節はセビージャとアウェイで対戦する。