そろそろ2011年も終わり。マドリーの今シーズンのこれまでを良い出来事と悪い出来事に分けて簡単に振り返る。
■良い出来事
①首位で2011年を終えたこと
バルセロナとの直接対決には敗れたが、とにかく首位に立っていることは、特に精神面で重要だ。
ここ数年、後塵を拝してきたために、負け癖がついたようにも思え、直接対決の際にはそれが特に目立つマドリーだが、こうした区切りで少しずつ自信を取り戻すことができればと思う。
②カジェホンの好調
エスパニョールからマドリーへ戻ってきたカジェホンが、ここまでチームにもたらすものが大きかったことは、良い意味での驚きだった。
これまでに何度も触れているように、カジェホンのオフザボールはチームに動きを与えている。序盤の出場機会ではまだまだチームに馴染めず、空回りしていたが、最近は動くところへボールが出るようになった。また、ゴール前では落ち着いてプレーできており、しっかりとゴールを決めるという場面が何度も見られた。
オフザボールでチームに貢献できる選手は、最近のマドリーにいなかったタイプであり、もっと出番が増えれば、シャビ・アロンソからのサイドへのボールを待ってスタートする攻撃に違った形をプラスできるようになる。
あとは、CLを中心としたビッグクラブとの対戦で使われるかどうか、そして結果を残せるかどうか。
ラインを破る動きが洗練されれば、2012年にさらなる活躍が望めるだろう。
③ベンゼマの復活
サイドでボールを受けてくれるプレーは、今シーズンよくチームを助けている。足下の技術はすばらしく、ボールを持ってからのプレーに余裕も見られるようになった。
そのため、ゴール前でのプレーに幅が生まれ、シュートもパスもあるベンゼマがようやく見られるようになった。
やれることの多さではイグアインに勝っており、重要な試合で先発を任せられる選手になった。
精神的にも安定しているように見え、2012年も期待できるだろう。
もともとはカルバーリョの負傷によるコンバートだったが、ペペと非常に強力なユニットを形成している。
身体能力が高く、ボールを跳ね返し、奪うことに関してはヨーロッパでもトップクラス。
また、攻撃の起点としても良いプレーを随所で見せている。
きちんと繋ぐことができ、フィードの精度も期待できるセンターバックがいることは、今後シャビ・アロンソの助けになるし、またシャビ・アロンソ不在時にも攻撃面で力を発揮できる可能性を秘めているとも言える。
問題は、空いた右サイドバックのポジション。バルセロナ戦ではコエントランを使うなど、とにかく当てはめているという状況だ。
アルベロアがきちんと仕事をできれば問題はなく、ラスもある程度のレベルでプレーできる、アルティントップもいる、という現状なので、冬に必ずしも誰かを獲得する必要はないが、マリオ・フェルナンデスについて、クラブ同士の会談の席はあったようだ。
■悪かった出来事
①モウリーニョ主導の選手獲得
コエントランは、とにかく3000万ユーロが有益だったことを示すため、彼の売りとされるところのユーティリティー性を示すため、序盤ピボーテとして起用された。
その後、ピボーテとしての起用は減り、本職の左サイドバック、もしくは右サイドバックでの実験という起用が続いているが、期待されたものは何も見せられていない。
こうした無理を強いる起用が続く限り、モウリーニョ主導の選手獲得や代理人ジョルジュ・メンデスとの関係が問題視され続けることだろう。
②シャビ・アロンソの相棒未だ見つからず
攻撃がシャビ・アロンソに依存していることはこれまで何度か見てきた。その相棒となるピボーテがなかなか定まらないことは、チームに小さくない陰を落としている。
序盤はケディラが起用されたが、身体能力は良いものの、繋げない、ゴール前での攻撃参加がぱっとしない、というところは次第に明らかになっていった。そうこうしているうちにミスも増え、信頼できなくなってきたためにラスに先発を譲る機会が最近は増えている。
ラスはボールホルダーに絡むところにその真価がある。とにかくボールを奪える。ただ、その先がない。
よって、シャヒンのフィットが待たれるところだが、移籍してから負傷が連続したことは非常に不運だった。
彼が、シャビ・アロンソの代役ではなく、相棒としてプレーしチームにフィットできれば、ポゼッションした時の精度はずっと良くなると期待される。結局はカウンターが狙い目であったとしても、ポゼッションで怖くなければ相手はとてもやりやすい。
そうした状況に追い込まれることを避けるためにも、シャビ・アロンソの代役問題の解決は2012年の大きな課題の一つとして残っている。
③グラネロの不遇
グラネロは冬の移籍市場でマドリーを離れても何らおかしくない状況にある。とにかくプレー機会が少ない。
ピボーテで試すこともできたはずだが、モウリーニョはほとんどの場面で違う選手を招集する。
彼もまたピボーテ問題を解決する策のひとつと思うが、現状はペドロ・レオンの時と重なって見えるほどだ。
違うことといえば、グラネロがカンテラーノであることで、そのことにより彼をペドロ・レオンのようなひどさで扱わないのかもしれないが、かえってそれが状況を悪くしている。
ペレスはカンテラを大事にするポーズを少なくとも取っておきたいだろう。グラネロを下手に扱うとファンの大きな反発を受けることになる。
だからモウリーニョはあっさりとは放出しない。このあたりはこの2人はしっかり話し合っていることだろう。
だが、カンテラーノスが実質的な余剰戦力のままでチームに残っていることに満足するファンはいない。
前線の3での起用は厳しいとしても、ピボーテでの可能性は彼の技術があれば十分にあると思うだけに、不可解な締め出しが続いているというほかない。
④徹底されない守備
結局のところ、特別扱いの選手は存在し続けるのだろうか。
守備をさぼるロナウド、がんばっても途中交代が必要なエジルといったメンバーはそれでも重宝されている。
あのロナウドとジダンがいた時も、彼らの守備免除はチームに少なからぬ負担を強いた。
彼らはそれを補う技術と、相手への心理的な効果があったが、現状はどうか。
ビッグクラブ同士の対戦で今のメンバーが当時ほどの威圧感を与えられるかと言われれば疑問だし、戦術的にも守備を免除される選手がいることを次第に許さなくなっていることは明らかだ。
モウリーニョはインテルで守備を整備して栄冠を手にした。歴史的に守備がもろくなりがちのマドリーで、チーム守備の整備に手をつけてくれるはずだったのだが、期待通りとはなっていない。
ちょっとよく走るようになったかという程度だ。これが解決しない限り、大きな試合で勝つ確率はなかなか上がっていかないだろう。
■2012年へ
来年も4日から試合があり、クリスマス休暇もあっという間という感じ。
短いとはいえ、せっかくの区切り。
良いことも悪いことも、ちょっと振り返ってリセットすべきはリセットして、
新しい年が良い結果が出る年となることを期待したい。