CL圏入りを目指すソシエダにとっては、戦意があまりないマドリーを叩いて勝ち点を得たい試合だったが、蓋を開けてみれば3-3の撃ち合いとなった。
■マドリーの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
FW:イグアイン
67分:ディマリア→カカ、70分:エジル→カジェホン、83分:マルセロ→ナチョ
マルセロがカピタン。エジルが右サイドに入った。
■ソシエダの先発メンバー
GK:ブラーボ
DF:カルロス・マルティネス、ミケル・ゴンサレス、イニゴ・マルティネス、デラベージャ
MF:ホセ・アンヘル、スルトゥサ:カストロ、シャビ・プリエト、グリースマン
FW:アギレチェ
59分:スルトゥサ→イジャラメンディ、81分:ホセ・アンヘル→ベルガラ
バレンシアとCL争いをしているソシエダ。最後まで消化試合はない。2列目のシャビ・プリエトとグリースマンは厄介。
■ケディラに見る問題点
既に現体制が終わることがはっきりしているので、今回試合内容全体については触れないことにしたい。気になったところを1つだけ取り上げる。ケディラの攻撃参加についてだ。
この試合では得点もあげたケディラだが、こうした攻撃参加は今シーズンでは珍しいものではない。
もともと運動量は豊富で、前線に顔を出したりサイドに流れたりと、高い位置に出て行くことが以前に比べると非常に多くなった。
マドリー加入当初は、ボールを奪ってシャビ・アロンソに時間を与えることに仕事が絞られており、ポジションを離れてあれこれやる印象はほとんどなかった。
そんな彼が、昨シーズンの終わり頃から攻撃参加しだした裏には、モウリーニョの指示か許可があったものと考えるのが自然だ。独断でバランスを崩しかねないプレーをすることをモウリーニョも、そして多くの監督も許さないだろう。
こうしたプレースタイルを許容することにした要因は、チーム内のマンネリ感の打破、攻撃の厚みを出すこと、遅攻の際の動きを出して行くことなどいくつか考えられる。
シャビ・アロンソを基点とする速い展開の攻めでマドリーはリーガを制したが、もちろんそれだけで90分戦えるわけではなく、様々なバリエーションを持っておきたいというのは当然の考え方。
そもそも、ケディラはマドリーでこそ守備的な役割がほとんどだったものの、代表ではゴールに絡む仕事をそこそこする選手との評もあって、攻撃に参加したいタイプの選手と言える。だから、マドリーでケディラの攻撃参加を認めたということは、もともとのスタイルに近い役割を与えたというように言うことができる。
ケディラは高い位置にいることが増えた。だが、チーム全体として、それを受け止める形を作るには至らなかったというところに問題がある。
守備に力を多く割いていたケディラが攻撃参加をし始めたら、バランスをとってそのスペースを埋めるべく、守備の陣形を整えなおす必要があるのだが、その点は変わらなかった。
単純に言って、ケディラが出て行った場面ではその分1枚守備が減るだけとなってしまい、奪われ方によっては非常に危険な場面を向かえることになりうる。
また、攻撃面においても、彼の参加を有効に活用できていたとは言いがたい。上手く使って打開するような形は整わないままだった。
結局、ケディラの自由度を高めたものの、それによって大きなメリットを得たとは言えない状態になってしまった。
ピボーテの攻撃参加についての問題は、近年のマドリーが抱え続けている問題のひとつと言える。
最近で言えば、ラスはボールを奪う能力の高さから、守備で大きな貢献をし、加入当初は新しいマケレレと呼ばれるほどの賞賛を受けたものだが、次第にマドリーに慣れ、ボールを持って何か仕掛けようというプレーが増えていくと、力不足を指摘する声が大きくなっていった。
もちろん、彼ら自身の能力の問題はある。彼らはマドリーの中で技術の高い部類の選手ではなく、出来ることと出来ないことをはっきりさせる必要はあるだろう。
だが、退いて守られた時、前線の4人だけで崩せるわけではないということも、今シーズン何度も学んだことだ。
少人数でも相手を崩せるだけの圧倒的な個人能力のある選手を揃えることも1つの解決策だが、今の時代にそれほどの選手を並べるのはそう簡単ではない。チームとしての攻撃の整備も並行して行わなければ、守備をこじ開けることに新しいシーズンも苦労することになる。
ケディラのような選手を上手くチームの攻守に絡めていくことは、マドリーが少し前進するための1つのポイントになるだろう。