カーディフでのスペイン勢同士の対決。観客の入りはどうなのだろうと思っていたが、さすがにと言うべきか、スタジアムは盛り上がっていた。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、コエントラン
MF:クロース;モドリッチ、ハメス・ロドリゲス
72分:ハメス・ロドリゲス→イスコ、コエントラン→マルセロ、86分:モドリッチ→イジャラメンディ
クロースとハメス・ロドリゲスが揃って先発。左サイドバックはコエントランとなった。
■セビージャの先発メンバー
GK:ベト
DF:コケ、パレハ、ファシオ、フェルナンド・ナバーロ
FW:バッカ
66分:ビダル→イアゴ・アスパス、78分:デニス・スアレス→レジェス、84分:コケ→フィゲイラス
ラキティッチがバルセロナに移籍したセビージャ。中盤は再構成が必要かもしれない。
■対照的な新加入2人
マドリーは守備時には中盤が右からベイル、モドリッチ、クロース、ハメスとなり、ロナウドがトップに残る4-4-2。攻撃時にはクロースが低い位置を取り、その右前でモドリッチ、左はさらに高めの位置にハメスが入る4-3-3となっていた。これは昨シーズンと同じ形で、シャビ・アロンソをクロースに、ディマリアをハメスに置き換えた格好。
ハメスとの契約で4-2-3-1に戻す(昨シーズン序盤は4-2-3-1だった)という考え方もあったが、アンチェロッティはひとまず昨シーズン成功した形を維持して今シーズンに入っていく選択をしたようだ。
そうなると、置き換えた2人のプレーヤーの出来が、シャビ・アロンソとディマリアのプレーと比較するとどうかが気になってしまう。
まず、クロースにはほとんど何の問題もなかった。
特に守備面では、モドリッチとともに中盤を支え、セビージャのボールに対し早い段階で寄せて奪えていた。彼らが安定してボールを奪えていたので、マドリーには危ない場面が少なく、憂いなくラインを上げて押し上げて攻撃することができていた。
この守備ができていれば、チームとしての安定感は非常に高くなる。シャビ・アロンソが加齢により身体的能力が落ちてきている中で、こうしたプレーが90分通してできるプレーヤーを確保できたことは大きい。
彼の特長であるサイドへの長いパスは、それほど数が多かったわけではないが何度かあり、精度の高さを見せてくれていた。左から右へのボールで攻撃のスピードを上げることができるだろう。この点においてはシャビ・アロンソと同様のプレーができると考えられる。
彼個人のプレーのレベルの高さはもちろん、昨シーズンからいたかのような周囲との関係の違和感のなさも特筆すべき。
アロンソがやっているボール捌きをそのままでき、守備面ではより動けるとあって、非常にスムーズに今のマドリーのやり方にあてはまっている。
これが今シーズンの初戦なのだから、今後に向けてはもっと高いレベルに到達できそう。
一方のハメスは攻撃に効果的に関与できなかった。
ディマリアのように左サイドに深く進入して崩すようなことはなく、より中央でプレーしたいプレーヤーであることははっきり見えた。ところが、クロースとモドリッチが2人で攻撃を作ってベンゼマにボールを当てることもできていたので、彼の中央での仕事が減り、トップ下が本職らしいアイデアを出せずに終わってしまった。この試合では淡々とボールを動かしていただけの印象で、彼の良さはほとんどでていない。
また、4-4-2になった際のサイドの守備も慣れていないことから不安定。
時間を経ればアタッキングサードの中央でベンゼマともっと絡んでいけるだろうが、現時点では彼を使う面白み、変化が見られない。序盤はディマリアを中心に起用した方が攻撃は形になるだろう。
■うまくいかなくても
昨シーズンからのプレーヤーで印象深かったのはベンゼマ。
彼がいなかったこれまでのプレシーズンマッチとはトップのボールの収まりが全く違う。彼が受けられることで2列目が生かせることがよくわかる対比だった。
ただ、序盤からボールを持てていたわりには彼が関与する回数はそれほど多くなかった。
その点は、ハメスがまだまだであることとも関係があるだろうし、チームとしての問題だ。サイドへの展開でスピードを上げられるのはクロースのプレーではっきりしたが、中央で何をできるのか、というのは今後の課題。
そうした状況だったので、マドリーの攻撃はサイドが中心。
えぐるところまでは崩せず、全員が自陣に戻るセビージャを相手に、ボールを失う危うさはないものの効果的な攻め手もなかった。クロスはあがっていたが、相手に当たることも多く、コーナーもチャンスにならなかったのは残念。どれほど能力が高くとも、やはりサイドだけでは難しい。
先制は速い攻めから。
右で受けたロナウドが自分でつっかけず左へ展開し、ゴール前へ。中央にベンゼマもうたが、ベイルが一番外にフリーで走りこんできたロナウドを確認し素晴らしい精度のクロスを上げ、ロナウドは合わせるだけだった。
こういう速攻もある、ということを再確認。遅い攻めではなかなか打開できなかったが、そういう流れと関係なくゴールに結び付けられるのがマドリーの速攻の強みだ。
先述の通り、中盤より後ろの守備は非常に安定していたので、1-0でも試合運びに危なっかしさはなかった。
カルバハルが低い位置で何度かミスを繰り返していたのが気になるが、チームとしてカバーできており、最後はカシージャスが処理できていた。カルバハル個人としては出来が良くなかったが、もうちょっと様子見が必要だろう。
2トップとなるベンゼマとロナウドと中盤の間のスペースではセビージャのプレーヤーが楽にボールを持つことができていたので、この間はもう少し距離を詰めたほうが良さそう。出て行く時とブロックを作る時の判断は高めていってもらいたい。
後半にベンゼマがパサーらしいアシストで左サイドのでフリーのロナウドにお膳立てをし、左足でベトを破り2点目を挙げた時点で、雰囲気としてはほぼ勝負あり。70分過ぎからは疲れが見え始め、互いに攻め合う様相になってきたのでセビージャにも何度かチャンスがあったが、致命的というほどの場面はなかった。
マドリーはイスコ、マルセロ、イジャラメンディを投入し、バランスをいじることなく安定した試合運び。そのまま2-0で勝利し、今シーズン最初のタイトルを獲得した。
■いよいよ本格的にシーズンスタート
クロースが加わった中盤の安定感は非常に高いレベルになりそうだ。これを継続していければ、今シーズンも大崩れはないだろう。期待が持てることが確認できたことがこの試合の一番の収穫。
また、アメリカでのプレシーズンマッチでは結果もついてこず、チームのメンタリティに悪影響がないか不安だったのだが、公式戦でこの程度の内容のプレーができ、結果も手にできたことで、そうした心配は杞憂に終わりそう。
リーガ優勝、CL連覇に向け、良い立ち上がりとなった。
今週末にフィオレンティーナとのプレシーズンマッチをはさみ、その後はアトレティコとのスーペルコパ2試合。そしてリーが第1節とカップ戦があることでシーズン序盤から過密日程。
とはいえ、アンチェロッティならば、チームのメンバーをうまく使ってやりくりしてくれるだろう。