クラブW杯との関係で金曜開催となった第15節。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:カルバハル、ペペ、バラン、マルセロ
MF:ベイル、イジャラメンディ、クロース、イスコ
85分:ベンゼマ→コエントラン
出場停止のセルヒオ・ラモスに替わってバランが先発。その他はいつも通り。
■アルメリアの先発メンバー
GK:ルベン
DF:ミチェル、ナバーロ、トゥルイージョ、ベレス
MF:メンデス、トマス、ベルサ、ドゥバルビエール
FW:ソリアーノ、ヘメド
59分:ドゥバルビエール→ソンゴ、67分:ソリアーノ→ウェリントン・シルバ、83分:ベレス→コロナ
ここまでは残留争いに参加する順位にいるアルメリア。ホームで0勝5敗3分は厳しい。
■課題
マドリーの中盤はクロースとイジャラメンディが中央、イスコとベイルが左右という形だが、ボールを持つ際、特に組み立る時はイスコが中央に絞って、左サイドはサイドバックが高い位置を取っていることが多い。また、クロースとイジャラメンディの住み分けが徐々に出来てきたのか、クロースが比較的高い位置を取るようになってきていた。両サイドはマルセロとベイルといった形。
ルドゴレツ戦のように好き放題縦パスを入れさせてくれれば何の問題もないが、アルメリアは中盤でのやり合いを仕掛けてきて、ボールの供給がポイントに。
ベンゼマがいなくてもバイタルで楽に受けられたルドゴレツ戦に比べると、ベンゼマがいても苦労したこの試合は、アルメリアの頑張りが際立ったと言えるが、マドリーの課題も明らかに。
ベイルはイジャラメンディとの組み合わせでシンプルに使われ、ドリブルで存在感を取り戻しつつあるが、中盤が苦しい時はその限りではない。組み立てへの参加という点では、プレースタイルとしても意識としてもハメス・ロドリゲスに一日の長があり、ベイルは使われるプレーヤーとして高い位置にいることが多く、中盤を助けていない。
負傷後で、目に見える結果が欲しいという思いがあるのかもしれないが、ただサイドでボールを受けて仕掛けるかエリア周辺に進出するのみでは彼のポジションの役割を果たしているとはいえない。アタッカーとしての能力に疑いの余地はない。しかしながら、彼がそれだけに固執すると、かえって全体のリズムが悪くなりボールが来ず試合から消えてしまうことに繋がる。彼には少し幅広いプレーをすることを求めたい。
ベイルは前掛かりになっているので、4-4-2になるべき守備時も陣形を整えるのが遅れることがある。
アタッキングサードまでボールを運んだ時もそうだが、中盤でせめぎ合う際もカウンターを狙って前に居残ろうとすると、右サイドからずれていってしまう。決してボールを追っていないわけではないし、戻ってはくるのだが、いるべき時にいないことが散見される。アルメリアにはそれで得点を許すことはなかったが、チャンスは作られていた。こうした対抗策をよりレベルの高いクラブが取ってきた時、きちんと4-4で対応できるか歪な4-3となってしまうかは決定的な差となり得る。
この守備については左サイドも同様。イスコは運動量を発揮しているが、かえって追い過ぎたり、右と同様に攻撃のためのポジションから帰ってこられなかったりすることがある。
守備についてはもう1つ。これまで継続してあるクロースの課題である。
クロースはマドリーの底でのプレーに慣れてきているし、ボールへ寄せたりスペースを埋めたりすることをしないわけではないのだが、少し遅いことが多い。その瞬間に適切なところにいるかどうかは、こうした相手に対して大きな違いになる恐れがあり、ベイルと同様か、ポジションを考慮すればそれ以上に重大。
ボールを持った時のプレーは素晴らしく、彼のパスはモドリッチが負傷でいない今マドリーに欠かせないものとなっているだけに、守備面での改善が待たれるところ。
その分、底が本職のイジャラメンディの守備時のプレーは際立っていた。
彼の寄せ、低い位置でのスペースを埋める判断は速く的確。強くボールにアプローチできるし、そこで奪えなくても移動してきちんとスペースを埋めることができる。こうした守備のプレーがスムーズなので、彼が中盤にいると少し落ち着ける。彼のように守れるプレーヤーは今のマドリーには貴重で、序盤こそ出場機会は少なかったが、このタイミングで立場を確立することもありえるだろう。
アンチェロッティはクロースが想像より早く”シャビ・アロンソ大学”を卒業できたと語っていたが、守備専攻ならイジャラメンディの方が優秀な成績を収めている、といったところ。
■惜しかったアルメリア
前半はアルメリアの運動量が目立ったが、マドリーは大きくボールを動かして対応。両サイドから打開の可能性が見えてきたところ、34分、イスコがクロスを素晴らしいトラップで受け、左45度の位置からファーへ巻くゴラッソを決めマドリーが先制。流れとしては五分だったのだが、個人技で先制に成功。
39分、アルメリアはエリア外からのベルサのゴラッソで同点。流れを引き戻すような美しいゴールだったが、41分にコーナーの流れからクロースのクロスにベイルがフリーで合わせマドリーがすぐに勝ち越し。
拮抗した序盤とは打って変わって、10分以内に3ゴールが生まれるバタバタした前半の終わりごろとなった。
リードしたものの、試合展開としては後半も変わらず。
守備面でちょこちょこと粗が目立ち、アルメリアに付け入る隙を見せてしまっていた。
62分のペナルティは厳しい判定だったが、カシージャスがチームを救うセーブ。ベルサのキックが安易だったこともあるが、カシージャスは本当に落ち着いていた。
ここまで良くやってきたアルメリアに絶好のチャンスで、これが決まっていれば時間帯としてもマドリーはかなり慌てることになっていたはず。地力を試されるような展開になっていて当然だった。
そうならないところが今のマドリーの流れ、というしかない。最後は81分、89分とロナウドが決めて試合を閉めた。
■シーズン後半へ向けて
アルメリアのペナルティの場面までは2-2でおかしくない内容。それが結局4-1になってしまった。
マドリーは連勝を続けているが、しっかりリトリートする相手にも、この試合のアルメリアのように中盤で戦おうとする相手にも相応に苦労しており、決して磐石というわけではない。
最初に書いたように、特にベイルのところが特異点になっており、全体に影響を及ぼしている。彼の存在がプラスに働いているところもあるが、そうでないところもあり、このポジションがハメス、そしてヘセならどう変わるかを見てみたい。
仮にハメスやヘセが上手く収まれば、ベイルをロナウドと入れ替えてローテーションするなど、チームとしての選択肢が増えることにもなる。
同じことはクロースにも言える。
パスで替えの利かない存在になっている彼のポジションを補い得るか、という点は考えておかなければならない。モドリッチが帰ってきた時に別の組み合わせはありうるか、という点は、守備を考えれば検討に値するだろう。力が拮抗したクラブに対して守備的にシフトしたい時にどうするかはCLに向けては重要な課題だ。昨シーズンのドルトムントとの第2戦のような試合で、もっと落ち着いて90分を処理できる方策を身につけておきたい。
ここまで幸いにして勝利を続け、結果は非常に順調だが、そうした課題が隠されてしまってはシーズンの最後に良い結果を得ることはできない。連勝に浮かれず、少しずつ進歩していってもらいたい。
昨シーズンのCLを制したマドリーはクラブW杯に参加。モロッコでの開催で、距離的にはそう遠くないのは幸い。チームは既にアフリカへ移動。準決勝でメキシコのクルス・アスルと対戦する。