ベルナベウでのベティス戦。初戦を引き分けたため、周辺では早くも雑音が聞こえ始めた。勝利とともに相応の内容が求められる。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
MF:モドリッチ、クロース;ハメス・ロドリゲス、ベイル、ロナウド
FW:ベンゼマ
52分:ベンゼマ→イスコ、63分:クロース→カゼミロ、74分:モドリッチ→コバチッチ
ベンゼマは先発で復帰。前節はベンチスタートだったハメスも先発した。
■ベティスの先発メンバー
GK:アダン
DF:ピッチーニ、ペッセーラ、ブルーノ・ゴンサレス、モリネロ
MF:シャビ・トーレス、エンディアイエ;セフード、バルガス
FW:セバージョス、ルベン・カストロ
46分:モリネロ→モリーナ、52分:セバージョス→ディガール、81分:エンディアイエ→ペチロス
アダン、ファン・デル・ファールトとマドリーに縁のあるプレーヤーがいるベティス。ファン・デル・ファールトの帰還は感慨深いものがあるが、今節は招集外となっていた。
■先制するも停滞、ベンゼマの効果は見えた
マドリーは2分に先制。
ハメスの右サイドからのアーリークロスが素晴らしい質で、中央のベイルの動きとぴたり。フリーのベイルは合わせるだけ。さすがにきちんと決めた。
開始早々の先制点で重苦しい前節の空気は多少なりともなくなった。ベティスのカウンターにあまり迫力がなかったこともあり、マドリーは60%以上のポゼッションを安定した形で維持し、攻撃を続けた。ベルナベウも楽観的な様子で、すぐにでも追加点が取れるような雰囲気さえあった。
しかしながら、退いたベティスを崩せないのは前節と変わりなし。プレッシャーのない後方ではボールを持てても、アタッキングサードへ効果的に進めない攻撃に、徐々にブーイングも聞こえ始める。
中央が停滞した時のサイド攻撃は単調。特に右サイドからは先制点同様の早いタイミングのクロスを多く入れてチャンスを伺うが、淡白で跳ね返されるばかり。いかに技量の差があっても、中央とサイド、どちらかだけでは待ち構えている守備組織を崩すのは難しい。中央に絞ったところでサイドを使い、サイドをケアするために広がったり片方に偏ったりした時に中央を使うという関係でなければ、そう簡単には揺さぶれないのだ。
ただ、前節と違ったのはベンゼマがいたこと。
彼がいると、パス回しの質が非常に高まる。ラインの間で受け、味方が前を向けるように配球するポストプレーは柔らかく、別格。ロナウド、ベイルをはじめ、彼の周辺に顔を出すプレーヤーがやりやすくなる。
ベンゼマは中央でそうしたプレーをできる点で、今のマドリーにおいて特別の立場を得ている。前節見られたようにヘセではサイドに行き過ぎるきらいがあり、中央の基点となるには居場所を留守にしすぎる。ベンゼマは、狭くプレッシャーを受けやすい中央でポストプレーを繰り返してくれるので、生かされるプレーヤーが並ぶことの多い2列目の強みを引き出せることになる。
コンディションを考慮し、恐らく予定通り52分までプレーして交代することとなったが、状態が上がり、彼が常時出られるようになれば、マドリーの攻撃は改善されるだろう。
ベンゼマのチャンスメイクで、良い場面を多く作るマドリー。それが決まらないのは流れというべきか。リードしているとはいえ、ゴールを求めるベルナベウを焦らすことになるのはまずいので、良い時間帯のうちに決めたかった。追加点を取るまでに前半のほとんどを要してしまったのは、いかにもベニテスのチームらしく、残念な思いで見ていた。
38分のハメスのフリーキックがそうした重い空気を吹き飛ばした。
右サイドの角度のないところから、速いクロスかのようなボールがファーのポストに当たりゴールの中へ。アダンはノーチャンス。継続して良いプレーをしていたハメスが先制点のアシストに続き素晴らしいボールを蹴りこみ、スタジアムを沸かせた。
前半のうちに2点差としたことももちろん、フリーキックでのゴラッソでそれまでの焦れる展開をなかったことにした意義は大きい。先制以降の経過で、「やっぱり点が取れないチームになるのではないか」という悪い予感を持つマドリディスタは少なからずいただろうが、少なくとも試合中はそうした思いを忘れさせたゴールだった。
■ゴールラッシュ
後半開始早々の46分にはベンゼマのゴール。
ぱっとしないことが多い右サイドでのベイルだが、この場面ではハメス、ダニーロとの崩しで良い仕事。右足でのクロスにベンゼマが合わせて3-0とした。
ベンゼマのゴールで試合の行方は決定付けたが、49分にまたもハメス。マルセロのクロスは跳ね返されるが、クロースが拾い再び中央へ。待っていたハメスはゴールに背中を向けた状態でボールを浮かせるトラップ。オーバーヘッドでのシュートにアダンは及ばず、またもゴラッソ。
前半の雰囲気はどこへやら、この2ゴールで一気に盛り上がった。
残念ながらロナウドはこの流れに乗れず。ベニテスの就任でベイルが生きる形を模索しているのは確かであり、そのためにロナウドが窮屈になっているとの指摘はある。確かにそうした部分もあるだろう。トップ下に入るベイルと噛み合わない場面もしばしば見られるし、シュートを狙える位置にいないことが多いようにも見える。
だが、この試合では少なくとも2度はゴールチャンスがあり、いつもの彼であれば1つは決めているべきだった。それを決めきれないのは、チームの影響というより、まずは彼自身の問題のように思える。プレシーズンからいまひとつ改善していないように見受けられるコンディションが上がってくれば、システムの変更など心配する必要のないほどにゴールを決めてくれるだろう。
4点のリードを得て、マドリーは余裕の展開。
先述の通り速めにベンゼマを下げイスコを入れると、63分にはカードを貰っていたクロースをカゼミロに、74分にはモドリッチをコバチッチに替えて休ませた。アンチェロッティ期にはほとんど下げられることのなかったクロースをきっちり休ませるあたりにベニテスの色が見えるように思う。
88分にはベイルのロングシュートがポストに当たって決まり、5得点。ハメスのゴールを皮切りにフィエスタとなり、4点差となって以降は緩い展開となったが、最後はベイルが締め、ホームのマドリディスタに良い印象を与えてベルナベウでの初戦を終えた。
■ケイラー・ナバスのアピール
デヘア問題を移籍市場の開いている最終日まで持ち越しているマドリー。申し訳ない言い方になるが、少なくともそれまでは先発が確定しているナバスは今節もピッチ上で能力をアピールした。
前半終了間際、かわされながらも相手のボールに手を伸ばしセーブした場面は、2-0で終えられるかというところで、1点返されていれば後半がまるで違った展開になっていたかもしれないだけに大きなプレーだった。
60分のペナルティキックを止めた場面ももちろんハイライト。ルベン・カストロのキックが甘かったのも確かだが、完璧にセーブ。この時期にペナルティを止めたということで、流れを呼び寄せているといえるかもしれない。
そのほかの時間帯も落ち着いてプレーしていたし、味方との連携も昨シーズンから見ればずっと改善されている。
ペレス会長はデヘアに執着しているが、今の1番が誰なのか、強いアピールをした試合となった。
■最後に
チームとしては勝ち点3を取ったほか、ベンゼマによる改善の兆し、ハメスとベイルのゴラッソによって好印象を得ることができた。
危惧していたよりもベルナベウの雰囲気も落ち着き、今後のシーズンに向けては良い入り方をできたと言える。上位を狙うクラブはとにもかくにも連勝しており、返す返すも初戦で勝ち点を落としたことは悔やまれるが、挽回に向けて良い材料を手にした試合となった。
今週末は代表戦のためリーガはお休みで次節は9月12日。アウェイでエスパニョールと対戦する。