昇格組のウエスカに余裕ある試合展開で勝利。
CLではなかなか勝ち点に繋がらないものの、リーガはバルセロナ戦後に緩むことなく勝ち点3を得た。
今回のメニューはこちら。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:ルーカス・バスケス、ミリタン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
52分:ルーカス・バスケス→メンディ、60分:アセンシオ→ロドリゴ、アザール→ビニシウス、バルベルデ→イスコ、69分:カゼミロ→クロース
ミリタンとマルセロが先発。クロース、ビニシウスがベンチスタートで、アザールが先発に入った。
CLからのローテーションを意識した構成。
■ウエスカの先発メンバー
GK:アンドレス・フェルナンデス
DF:マフェオ、プリード、シオバス、ルイジーニョ
MF:モスケラ、エンワカリ;オンティベロス、セルヒオ・ゴメス
FW:ボルハ・ガルシア、ラファ・ミル
46分:オンティベロス→ハビ・ガラン、セルヒオ・ゴメス→フェレイロ、57分:ボルハ・ガルシア→バルデラマ、エンワカリ→サンドロ、83分:ルイジーニョ→ガストン・シルバ
アトレティコと引き分けもあるが、ここまで勝ちがないウエスカ。7試合で5得点では苦しい。
ビニシウスとアザールの差異
ビニシウスとアザールの大きな違いの一つは、ビニシウスが一番外に張りたいのに対し、アザールが中に入っていきたいタイプであるという点だ。
今節のようなゴラッソも、アザールだからこそのものである。
外をビニシウスが担当し、その内側をマルセロが使うという組み合わせは、本来かみ合わせが良いと思われる。
ところが、マルセロの守備強度が低いために、彼が自由に動くと左サイドには大きな穴が空いてしまう。ビニシウスがそれを一人で埋めるのは難しいし、できたとしても、守備に労力を割いては良さが生きなくなる。
全盛期のマルセロならとも思うが、ともあれ現状ではデメリットを上回るメリットを生み出すことができないのだ。
こうしたことからメンディが使われることになり、今度は一番外でポジションが被るという課題が出てくることに。
ビニシウスをどう当てはめるべきかは、悩ましい問題になっていると考えられる。
そこでアザール。
彼なら、このような問題は発生しない。
狭いスペースでもプレーできるので、マルセロやベンゼマとのコンビネーションで崩せる。また、サイドバックがメンディであっても、アザールが中でメンディが外とすみ分けることができる。
ブロックを作られて詰まりがちな攻撃において、彼のサイドは有効な攻撃手段となっていくはずだ。
昨シーズンもピッチに立ちさえすれば良いところはあった。
問題はそれ以前のところにあったわけで、その点においては信頼を大きく損ねている状態での再スタートだ。
怪我なくシーズンを過ごせるかどうかに、アザールの評価はかかっている。
不安は守備
ピッチ上での不安は守備の強度。
特に今節はマルセロとのコンビで、左サイドがぽっかり空くことも考えられた。
ウエスカも当然、このサイドを使う形は考えていただろう。
オンティベロス、ラファ・ミルがサイドで生きれば、マドリーの守備がずれていく可能性はあった。
そこを使うべく、ライン間で受けて落とす形は整備されているようで、ここまでの精度は高かった印象。モスケラは攻撃をスピードアップさせるパスをよく通していた。
サイドに正確なボールを届けられていたら、左サイドの問題が大きくなっていたはずだが、そこからの精度がイマイチ。
この展開の場面でウエスカにミスが多かったので、マドリーは助かった。
ウエスカの得点の少なさも、このあたりの精度に起因するのかと思われる。
マドリー程度のプレスは回避できており、楔のパスまでは良かったので、改善すると次の対戦は面倒な相手になりそう。
逆に言えば、今のウエスカでもここまでやれたということでもある。
マルセロとアザールの組み合わせは、リーガ中位以上だと怖い。今はメンディをファーストチョイスにするべきだろう。
中盤の変化
カゼミロが底にいて、相手の攻撃の芽を摘むおなじみの形の中盤も、少し変化があるようだ。
ボールを持った時はモドリッチが低い位置で攻撃を作り、その前にバルベルデとカゼミロがいる形が見られた。
これは、カゼミロが組み立てに参加してぎくしゃくするくらいなら、機動力ある2枚をインテリオールに置いて動いてもらおうという意図ではなかろうか。
バルベルデはこれまで通り攻撃に参加して厚みをつくってくれればいいし、カゼミロも推進力や高さをもたらしてくれる。
バルベルデはこの試合の3点目を決め、しっかりと長所をアピール。カゼミロも目立たないながら味方を助けるポジションを取って攻撃をサポートしていた。
これまでは、カゼミロが底にいないと中盤のフィルターが薄くなる守備の問題があった。
バルベルデの台頭により、カゼミロに偏っていた守備負担の割合が変われば、こうした配置ももっと試せるようになるだろう。
現状では、ボールを失ったらバルベルデかモドリッチが前線に参加してボールを追い、その間にカゼミロが下がってピボーテの位置で待ち構えることになる。
これはこれで良いのだが、奪うほどの強度にはならないのはもったいない。理想を言えば、カゼミロやバルベルデが進出した状態では、ハイプレスからのショートカウンターまでやってしまいたいところだ。
そうした方向に進んでいけば、昨シーズンとは違った守備の形が作れるようになりそうで、期待が持てる。
久しぶりに余裕あり
60分までに3点リードしたので、ロドリゴ、ビニシウス、イスコを出してアザール、アセンシオ、バルベルデを休ませる余裕の交代。
もう少し前に出てくるクラブであれば、この交代でカウンターが機能したはずだが、ウエスカがあまり出てこず、一方的にセカンドボールを拾えていたので、チームとしては楽だが、ビニシウスやロドリゴにとってはやりづらかっただろう。
アザールとアセンシオがポジションを変えながら、2列目をふらふらしてチャンスを作っていたのと比べ、エストレーモがサイドに張る形が基本となって硬直化した印象は否めない。
どうしても彼らが入ると、サイドにボールを入れて「では仕掛けます」という形になってしまう。
チームとしてそうやって使ってきた経過はあるにせよ、今後アザールとアセンシオが本格的にフィットしてきたら、ビニシウスとロドリゴは攻撃への関与のしかたを変えていかないとポジション争いができなくなりそう。
最後に
ウエスカの1点は、ようやく彼らの狙いが成功した形。マドリーが緩んだ時間帯に、サイドに良い形でボールが入って、ゴール前に供給することができていた。
既にカゼミロも下げていたが、さすがに残り15分で2点差は問題なし。
ロドリゴが頭で折り返し、ベンゼマも頭で押し込む4点目を挙げて勝負あった。数少ないプレー機会でロドリゴは数字に残る結果を残した。
先発をローテーションし、3点リードで主力を休ませることができた。この時期としては理想的な試合展開。
アザールが良く、アセンシオもまずまずで、ビニシウスやロドリゴにおんぶにだっこだったエストレーモ事情が変わってくるきっかけの試合となるかもしれない。
ここまで色々試しながらやってきたジダンに、新たな選択肢が生まれたともいえる。
アザールに無理をさせず、しっかりコンディションが整うまで待ってきたことが、ついに花開くか。
彼に本格的に期待して良いか、マドリディスタは何度も問うたが応答はないままだった。この昨シーズンからの問いに、ようやく答えが返ってくるかもしれない。
ミッドウィークは勝つしかないCL。インテルをホームに迎える。
週末はバレンシアとアウェイで対戦。