序盤は完璧。 前半でフィエスタとなって試合を終わらせられる可能性があった。
ここで2点どまりとなったことで、エイバルの流れに。
それでも致命的なダメージにはならないのが、最近の強さということだろう。
今回のメニューはこちら。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
中盤は結局いつものトリオに。普段からの違いは左エストレーモがロドリゴとなったくらい。
■エイバルの先発メンバー
GK:ドミトロビッチ
DF:ポソ、アルビージャ、ビガス、ケビン・ロドリゲス
FW:キケ・ガルシア、武藤
72分:乾→ペドロ・レオン、82分:パペ・ジョップーセルヒオ・アルバレス、キケ・ガルシア→ウナイ・アリエタ
今シーズン、ホームでまだ勝ちがない。とはいえ、狭いスタジアムで、独特のやりづらさがある。
中央は比類なきレベル
15分までに2得点を挙げた序盤は圧巻だった。
狭いピッチを生かしたエイバルのプレスをことごとくパスワークで回避してアタッキングサードへボールを運び、ベンゼマの裏抜けで先制。
右サイドへ展開してえぐったところを奪われるも、バスケスとベンゼマで奪い返し、マイナスのクロスをモドリッチが決めて追加点を挙げた。
自分で相手を剥がしつつ味方に時間を与えてくれるモドリッチと、プレスを引き付けてから大きな展開でスペースを生かすクロースの素晴らしさは、もはや説明不要だろう。よほどのことがなければ、彼らの序列は不動だ。
モドリッチは負傷により年内はお休みになりそうだが、それで変化が訪れるとは思えない。
両サイドのユニットの良さ
中央の彼らの価値はこれまで多くの機会で触れてきたし、多くの媒体でも語られているので、今回はそれ以外を。
両サイド2人ずつのユニットについて述べたい。
右サイド
右サイドは、守備の計算ができて、組み立ても問題なく、クロスも精度が高い万能なサイドバックであるカルバハルが中心であった。
逆に言えば、彼の前に位置するエストレーモの質が高くなく、固定できていなかったことで、カルバハルが目立っていたということでもある。ビニシウス、ロドリゴ、アセンシオといった面々は、右サイドで有効な手段になり得ることをなかなか示せていなかった。
そこに現れたのが、ルーカス・バスケスであった。
もともとハードワークが売りの彼だが、それ以外の部分での不安定さが仇となって、それ以上の存在とはなっていなかった。
ところが、カルバハルの負傷によりサイドバック起用が増えたことにより、運動量は維持しつつも周囲を生かせるプレーヤーに変貌したのである。
今節では、カルバハルがセントラルからの縦パスを受けるために中央に入ることが多くあったが、バスケスが空いた場所をケアできるから、カルバハルは自信をもってこうした動きができているようだった。
カルバハルがそのまま前に出ていったら、バスケスは後方でサイドバックになることもでき、破綻が少ない。
一見リスクを負って繋いでいるようでいて、どちらかが前ならもう一方は下がり、中央に入れば外のコースを作るといったように、人数とバランスは確保できていた。
アタッキングサードでも、カルバハルが中も外も走るし、バスケスも同じことができるので、重ならずに循環する。
守備側にとって守りづらいフリーランも多く、サイドをえぐる可能性を高められる効果がある。
左サイド
左サイドはメンディとロドリゴである。
彼らのコンビの良さは、普段マドリーを見ている方がより際立つかもしれない。
一番外で待つのが好きなビニシウスではなく、一つ内側や中央でも受けられるロドリゴだったことで、メンディのスピードが生きる一番外が使えるようになったのだ。
本来は、ロドリゴより出場時間を多く得ているビニシウスが、大外以外でもボールを受けられるスタイルを身につけなければならなかった。
ところが、苦しい時に彼に運んでもらうことが多かったチーム事情も影響しているかもしれないが、ビニシウスは大外から出られないでいる。これでは、既にファーストチョイスとなって久しいメンディと被ってしまうし、ゴールから遠い位置でプレーするので、ゴールに直結するプレーとなりづらい。
皮肉にも、最近ではメンディの方が内側を使うのがうまくなりつつあるという、期待とは違う発展をしているような状況だ。
そうした進歩をしているメンディと、プレーエリアが広いロドリゴはうまくかみ合った。
ロドリゴが中央を窺えばメンディは外を使おうと走るし、そうした姿勢があるメンディにスペースがあるからこそ、ロドリゴのプレーも生きることになったのだった。
ロドリゴの守備強度は高くないので、右サイドのようにどちらが前でも後ろでも大丈夫というものではないが、その分メンディのプレスバックは速く、彼個人の能力で何とかしてしまえている。
彼らもまた良い補完関係で、左サイドを使えていたと言えるだろう。
まとめると・・・
彼ら両サイドのユニットの良さは、どちらも外と中に入れることにある。
彼らのヒートマップを見ると、サイドを基本としつつ、中央にも進出して広いエリアをカバーしている様子が見て取れる。
これが片方ではなく両サイドにいるのだから素晴らしい。
どちらかのサイドがメインになることが多いもの。これほどバランスの取れた両サイドが見られるのは、かなり久しぶりのことではないだろうか。
右サイドの2人はそれに加えて前と後ろも自由自在となっていて、融通が利く。状況に合わせてポジションを変えても、ピッチ内で調整できるようになっているから、プレスがかかるのに、普通ならいるはずのない位置に顔を出して繋いでいってしまう。
これは守備側にとって、大きな負担だ。
エイバルは前から守ることを貫いていたので、プレーは変わることはなかったものの、そうでなければメンタル的にプレス継続が難しくなるかもしれない。
それくらいの状態の良さが見られた。
問題はペースダウンではなく・・・
もちろん、こうしたプレーを90分続けようというのは無理な話だ。
いかに主体的にボールを動かす立場になっても、どこかでペースダウンしなければならない。
この試合では20分過ぎから、落ち着いて試合を進めようという姿勢に変わっていったように見える。
問題は、ここでペースが落ちることではない。
そうではなく、ペースを上げているうちに完全に相手を折れなかったことと、終盤にペースアップするのが遅くなったことによって、エイバルに最後まで諦めないプレーをさせることになってしまったのだった。
キケ・ガルシアのゴラッソがあったように、前後半に1回ずつ「事故」が起きたら2点は入るのだ。
この試合のベンゼマを責めるのは酷だが、もう2点ほどは取れるチャンスがあった。
試合が活性化することはほとんどなくなる点差にしておければ、もっと余裕を持ってやれたし、交代による出場時間の調整も図れただろう。
最高の出来だけに、もったいない。もう一段レベルアップしてほしいし、今の彼にはそうして試合を終わらせることができるはず、と期待しておきたい。
また、以前から書いているように、途中交代のプレーヤーがロールプレーヤー以上にならないことで、後半にエンジン再点火ができない。
バルベルデは負傷明けではあるが、モドリッチとクロースを脅かしてほしいし、アセンシオもロドリゴの後塵を拝してそのままでいいプレーヤーではない。
彼らのような立場のプレーヤーが、個人の序列アップを目指して積極的にプレーすることが、ピッチにいる他のプレーヤーの動きも変えるし、チームの雰囲気も変えていくもの。
バルベルデはまだ立場を築いている方だが、アセンシオはそろそろ結果を出さないとまずいのである。
途中出場で行儀の良いプレーを続けていても、今の序列は覆らない。先発組が好調となればなおのことだ。
彼のような存在ではなく、最初から走り回ったバスケスがとどめを刺す3点目を後半アディショナルタイムに決めたことが、現状を如実に表しているように思う。
最後に
年内はあと2試合。
ミッドウィークにグラナダとのホームゲーム。来週のミッドウィークにエルチェとアウェイゲームが予定されている。
順位を考えれば、どちらも勝ち点3がほしい試合だ。
週末はクリスマス休暇で久しぶりの1週間のオフ。
最後まで試合が続くが、少しでも英気を養っていい年越しを迎えてほしい。