コパデルレイに続き、エルチェと連戦。
ベルナベウで、久しぶりにドラマチックな終盤の展開を見た。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:ルーカス・バスケス、ミリタン、アラバ、メンディ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
58分:ベンゼマ→ヨビッチ、63分:クロース→ロドリゴ、79分:アザール→イスコ、ルーカス・バスケス→バルベルデ
お馴染みの10人とアザールの先発。コパでは決勝点を挙げている。
■エルチェの先発メンバー
GK:バディア
MF:ラウール・グティ、ガンバウ;モレンテ、ミジャ
FW:ルーカス・ペレス、ボジェ
24分:モレンテ→フィデル、88分:ルーカス・ペレス→ホサン
残留争いに加わりそうなエルチェ。アウェイでここまで11試合を戦い、勝ち点8。
ボールがゴールに入らない
エルチェとの第12節での対戦では、パストーレらを擁する攻撃に特徴があった印象がある。
そのパストーレをはじめ、多くのメンバーを新型コロナウイルス感染症のため欠いており、今節は何とか凌いで速攻に賭けようという形だった。
マドリーはおなじみの面々の中で右エストレーモがアザールという構成。
これまでの経過でいうと、リトリートした相手に対して、狭いスペースをくぐり抜けられるアザールは一定の効果を発揮していた。ただ、相手もエリア内に人をかけてより狭くしてきて、ぐちゃぐちゃした結果得点に繋がるまでには至っていない。
これまで勝ち点を落としてきたヘタフェやカディスに比べると、エルチェはそれほど局面で激しくなく、スムーズにアタッキングサードまでボールを運べている。
序盤からチャンスになりかけの場面があって、アザールが先発した意義があったかと思われた。
また、ビニシウスが気を使ったのか、普段ほとんど見られないサイドを入れ替えてのプレーもあって、押し込んだ後に詰まらないよう工夫しようという意欲も見られた。
そこまでは良かったのだが、最終的にゴールにならず。
ペナルティでさえ枠に飛ばない有様で、ジダンがかつて述べていたような「ボールがゴールに入りたがらなかった」という表現がぴったり。
せっかくの良い流れを結果に変えることができなかった。
先制できていれば、試合の展開はもちろん変わっていただろうし、少なくともこの試合でのアザールの評価も前向きになっていただろう。
良い流れだったにもかかわらず無得点だったことで、彼個人としては「やっぱりだめか」という印象になってしまったし、チームとしても下位相手に苦しむ呪縛を解くこともできないままになってしまった。
アザールの「持ってなさ」
失点はエルチェのカウンターから。
マドリー右サイドをパス一本で侵入され、素晴らしい精度のクロスをボジェに合わせられた。
エルチェのプレーが正確だったとはいえ、押し込んでいる中でいかにもというやられ方は良くない。
この場面にアザールは直接関係なかったとはいえ、元々カウンター用に前に残るビニシウス、ベンゼマとともに彼が入った形でサイドを切り裂かれた現実は重い。
4-3で守るのは難しいため4-4で守るのが基本となっている中、アザールをどうにか組み込めるだろうかという試みは、やはりバランスが悪くなるという結論に至ってしまうということだ。
だとすれば、ビニシウス、ベンゼマが盤石である限り、アザールは彼らに控える立場を超えられない。
アザールのポジショニングには工夫が見られたし、押し込んだ時は彼らしいプレーが見られるのは確か。
それでも得点、ひいてはチームの勝利に繋がらず、厳しい試合展開になった。
とにかく「持ってない」というしかない。
久しぶりのドラマ
追いつけないままずるずる試合を進められ、76分にも速い展開で失点。
ハムストリングスの負傷でベンゼマも下げざるを得なくなり、ここまではエルチェの理想通りの試合となったが、マドリーは82分にペナルティを獲得。
直前でボールのコースが変わっていたが、広がっていた手に当たってしまった。エルチェにとっては不運な出来事であった。
これをモドリッチが冷静に決めて1-2に。
マドリーはロドリゴ、イスコ、バルベルデを投入し、ごり押しの形。
ただ、スコアレスにせよビハインドにせよ、こういう状況でドラマチックな展開は起こらないのが今シーズンのマドリーだった。
勝つべくして勝つのだが、落としそうな試合の勝ち点を拾ったということもない。
これまでのマドリーにはつきものだったドラマ性をどこかに置いてきた、堅実なチームになっていたのである。
もちろん、マドリディスモが失われているといったような精神的なことが原因ではない。
確たるターゲットがおらずクロスを多用したギャンブルをしても可能性は高くないことから、地上戦で何とかやりきる方がまだましという考え方により、狭いところをこじ開けようとしている点が大きい。
マドリーの戦力から見れば考え方に間違いはないが、守る側も人数をかけて準備しやすいからで、これまで落としてきた試合は、相手にリトリートされた後、狭いスペースで最後までやろうとして更にスペースを狭められてしまい、計算通りにやられてきたのである。
そう考えると、エルチェの守備はやはり少し軽かったということになるのだろう。
これまでの相手と同じように人海戦術で凌ごうとしていたが、1点差となって勢いを増したマドリーを押し留めるには及ばなかった。
マドリーから見ると、同点であれば失点のリスクはあるが、ビハインドで失点は考えなくて良く、セントラルのミリタンやアラバも上げて攻撃に全振りできたことが最後の得点に繋がったと言える。
この場面で、最後のところでもうひと手間かけるのではなくクロスを選択したビニシウスの判断も、これまでの経過からすれば裏をかいた格好となった。
ヘタフェ戦の際に少し失われてきたように思うと述べた、かつてのマドリーでは良く見られた荒々しさが垣間見られた終盤であった。
最後に
ベンゼマの負傷について重傷との報道はないが、復帰時期はわからない。
コパデルレイのアスレティック戦があり連戦が続くが、CL前に無理させる必要はないので、しっかり治して帰ってきてほしい。
セビージャが引き分けていたので、2位との勝ち点差に変化はなし。アザール先発で勝ち点3とまではいかなかったが、何とか帳尻は合わせたように思う。
次節はビニシウスが累積警告で出場停止となるため、もしかすると前線の2枚が揃って欠場するかもししれない。
チームとしては正念場。控えの面々にはチャンスである。