オサスナの堅守に阻まれた前節。
今節はしっかり手数をかけて攻めてくるエルチェと対戦。ベンゼマがいない分はビニシウスが頑張った。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:ルーカス・バスケス、ミリタン、アラバ、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:ロドリゴ、マリアーノ、ビニシウス
18分:ロドリゴ→アセンシオ、65分:ルーカス・バスケス→カルバハル、マルセロ→メンディ、84分:モドリッチ→カマビンガ、ビニシウス→アザール
マルセロ、マリアーノが先発。ベンゼマは久しぶりのお休みとなった。
■エルチェの先発メンバー
GK:カシージャ
DF:パラシオス、ロコ、ビガス、モヒカ
MF:ラウール・グティ、オマル・マスカレル;ルーカス・ペレス、パストーレ、チャベス
FW:ボイェ
71分:ルーカス・ペレス→ベネデット、パストーレ→グンバウ、81分:ボイェ→テテ、マスカレル→マルコーネ、チャベス→ペレ・ミージャ
カシージャ、マスカレルは元マドリーのプレーヤー。特徴ある攻撃陣だが、ここまで8得点と苦しんでいる印象。
攻めやすかったが・・・
エルチェはライン設定が高め。
繋いで攻めようという姿勢が見て取れた。前線にボールが収まれば、パストーレ、ルーカス・ペレスと実力者が揃っているから、戦力とマッチしたやり方という印象だった。
マドリーの中盤3枚とビニシウス、ロドリゴの両翼はお馴染みだったが、9番がマリアーノ。
ファーストディフェンスでどの程度行くのかが浸透していなかったことで、守備の入り方がちぐはぐ。
エルチェは余裕をもって組み立てられていた。
エルチェが引きこもらずにプレーしていたので、マドリーの狙いはその裏。
ビニシウスとロドリゴが両サイドを破れれば、ターゲットとなれるマリアーノが中央にいる。
ベンゼマではないので楔を受けるプレーは少ないが、エルチェの守備強度はさほど高くなく、組み立てへの関与の必要性が少なくて済んでことは幸いであった。
中央に人がいない問題がなくなるので、サイドを突いて中央を狙いつつ自分も生きるシンプルな形を指向することができていた。
ところが、ロドリゴがハムストリングを痛めて15分で交代。
アセンシオが入って、右サイドは縦への脅威を見せられなくなった。
外のレーンを任せるところまではいいのだが、中央に入っても彼がスイッチを入れる怖さがないのは相変わらず。
エルチェにとってはバランスを崩してケアしに行く必要性が高くならないから、彼がいることによるメリットが生まれない。
セットしてからの攻撃において個性が出せないのは負傷以降ずっと抱えている問題で、これなら誰でもいいよね、売却できる先があるならそうしようかという風潮になるのも仕方ないかと感じてしまう。
彼の場合は得点になるかどうかの前に、こういう試合で勝負しようという姿勢を出すことが最初のハードルとなっている。
こうしたことから、マドリーの攻めるルートは左に。
ビニシウス久々の先発となったマルセロもいるし、スペースがあればアラバも顔を出すしで、左サイドは多士済々であった。
先日のバルセロナもびっくりの偏り方で、遅攻となる場合はエルチェの対応の裏をかかないとクロスにならざるを得ないかという状況となっていた。
先制点とマリアーノ
25分、エルチェのパスミスから先制。
組み立て時に中に戻すパスがずれたところをカゼミロが拾って、マリアーノがヒールで落とし、最後はビニシウス。左足で逆サイドに精度の高いシュートを決めた。
少し高い位置で追ったところでパスミスを誘発したのは幸運。その後のワンタッチプレーにはアイデアがあった。
アシストを記録したマリアーノについて、ここで少し触れておく。
この場面の狙い、プレーの正確さはともに良かった。
中央でのプレーに徹すると、ベンゼマとは違う流れになるから勇気がいることだっただろうが、その中であまり期待されていない技術の高いプレーで結果を出したのはいいことだ。
しかし、その後が良くなかった。
リードしている状況で守備の役割を多く担ってくれるわけではなかったし、最終盤にアザールにパスせずシュートした場面に象徴されるように、ボールを持った時に個人の結果を優先しているように見えた。
走って体を張れる長所を生かさず、足元の技術に乏しい短所が出て、単に仕事量が少ないプレーになってしまったのは非常に残念だ。
話を戻す。
先制点後、流れが変わったかというとそれほどでもなかった。
マドリーの守備が改善せず、エルチェがやりたい攻撃がやれていたからで、それに応じてマドリーも攻める攻め合いの様相。
アタッキングサードでのパストーレの存在感はさすが。体が強い長所を押し出してくるプレーヤーが多かったエルチェ攻撃陣の中で変化をつけるアイデアを出していた。
幸運
途中までは、どちらかといえばマドリーよりエルチェの方がアタッキングサードで良い形を作れていた印象。どこかで同点になっていてもおかしくなかった。
しかし、63分にラウール・グティがドブレアマリージャで退場となったことで状況は変わった。
マドリーは押し込んで安全にボールを動かす形を徹底。無理せず試合を締めにかかった。
右が停滞しており、追加点の雰囲気がさほどなかったこともあるし、連戦の真っただ中で無理したくないという事情もあったのではないか。
こうなると、寄せられたらクロースを中心にサイドチェンジで展開できる構成は強い。
ボールを動かし、のらりくらりと守備を回避する形はお手の物である。
カルバハル、メンディを入れてサイドバックの守備を盤石とし、1-0で十分な構えとなった。
ビニシウスが決めるも
終わらせにかかって静まっていた試合展開にもかかわらず、73分にビニシウスがゴラッソ。
モドリッチのスルーパスに合わせて抜け出し、角度がないところからカシージャをよく見てファーに決めた。
当初からエルチェのラインが高めだったとはいえ、試合が落ち着いていた時間帯のことである。裏を取れるチャンスは多くなかった。
そんな状況で行けるタイミングを掴み、得意な動き出しでラインを破ったのは見事というしかない。
そして、より重要なのはシュートを決めきったことだ。
出てきたカシージャが届かない位置を見定めて蹴りこんだシュートは、レバンテ戦でのものとよく似ている。
一回なら偶然、幸運かもしれないが、二回決めたとなるとそれで片づけることはできない。
角度がないポジションではあるが、スピードを生かしつつシュートが決められる、彼にとっては良い場所なのだろう。
実際、縦に行ってゴールライン際まで持ち込む場面はこれまでもしばしばあった。
これまではその後の解決策がなく終わってしまっていたのだが、少しでも角度があればシュートを狙ってくるというイメージができてくれば、それも変わってくる可能性がある。
縦に行かれる怖さが得点に直結するものになってきたゴールといえるのではなかろうか。
これで終わるはずだったのに、最後にカゼミロが低い位置で相手の頭を越そうとして失敗するパスミスをやってしまう。
安易な失点を喫し1点差となって、最終盤はドタバタ。
結果的に2点目が決勝点となり、何とかしのいで勝ち点3を得た。
最後に
相手が一人退場し2点リードした途中までは、ベンゼマを休ませた割に余裕をもって心穏やかに90分を終えられるかと思っていた。
アンチェロッティ体制となって得点力が伸びたのは確かだが、安定性という点ではBBCを擁した第1期にはまだ遠く及ばない。
相手も過度にリスペクトすることがないから楽な試合がなかなかないリーガで、僅かな時間とはいえ自業自得の失点で損耗したのはもったいなかった。
ロドリゴの負傷は軽いようで良かったけれども、こういう試合で休めなかったことがコンディションをじわじわ低下させるのは怖い。
掌握した試合はしっかり終わらせてほしいところだ。
ミッドウィークはCLシャフタール戦。
週末はラージョとベルナベウで対戦。