2022年の初戦は、最近珍しくなっていたミスからの失点でスタート。
その後の長い時間を5バックで守り切られた。
このような相手に先制されてから2点取るのは難しいと改めて実感。攻めきれなかった要因を見ていきたい。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:ルーカス・バスケス、ミリタン、アラバ、メンディ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
46分:メンディ→マルセロ、アセンシオ→アザール、67分:ロドリゴ→マリアーノ、85分:クロース→イスコ、ルーカス・バスケス→ピーター
ビニシウスを欠いているエストレーモは右アセンシオ、左ロドリゴとなった。
■ヘタフェの先発メンバー
GK:ソリア
DF:ダミアン、カバコ、クエンカ、ミトロビッチ、マティアス・オリベイラ
MF:マクシモビッチ、アランバーリ、アレニャ
FW:サンドロ、ウナル
64分:サンドロ→ハイメ・マタ、74分:アレニャ→フロレンティーノ、83分:カバコ→ニョム、ウナル→ヤンクト
ホームではここまで9試合9得点9失点。3得点11失点とアウェイで苦しんでいる分、ホームで堅実に勝ち点を積み重ねているようである。
5バックとの相性が悪すぎる
ヘタフェは5-3-2。
ボールを持つ時はリスク回避が第一。奪われたらファールもありで時間をかけさせ、早めに帰陣するよう徹底されていた。
だから、マドリーが攻める時に最終ラインが揃っていないことはまれ。
このヘタフェと今節のマドリーの組み合わせは非常に悪かった。ポイントを分けてみよう。
サイドの問題
最終ライン5枚だとスライドに余裕がある。
ボールを下げてクロースからサイドチェンジしてもヘタフェの守備がついてくるので、メリットが得られなかった。
さらに、エストレーモはどちらも利き足とは反対サイド。
縦にいけないことはないだろうが、カットインの怖さを見せたい配置であり、内側のスペースを担当。
サイドチェンジから早く仕掛けるというよりも、もう一度落ち着いてから人が密な中央へというプレーが多く見られ、躍動しているとは言い難かった。
大外のスペースを担っていたのはバスケスとメンディ。
前者はクロスの精度に問題があり、後者は技術よりも身体能力で勝負したいタイプで、下がって守る相手の一番外側で脅威を与え、ディフェンスを動かすには合っていない。
時折クロスのチャンスがあっても、中央の枚数は基本的にベンゼマがいるかどうかというレベルなので、その意味でも確率が高い攻撃にはなりづらい状況であった。
ラインを下げられない
ドリブルできるスペースがない中での攻撃が続いたので、押し込んだ状態ではビニシウスの不在はさほど影響しなかったように思える。
しかし、最終ラインとの駆け引きがなかったために、ヘタフェのライン間にスペースが生まれなかった点、たまに出てきてくれた時の速攻の選択肢が失われていた点は指摘しておきたい。
ボールが出るか出ないかはともかく、裏狙いを見せておくことは重要である。
最終ラインが動けば、5-3の間に入り込めるスペースが生まれる可能性は高まるからだ。
先述の通りカットインを目指す配置だからやむを得ない部分はあるのだが、アセンシオとロドリゴはディフェンスを目の前に置いてのプレーがほとんどで、ディフェンスにこうしたストレスをかけられてはいなかった。
だからヘタフェは5-3の間を締めることに専念できたのである。
また、少人数でも出てきてくれた時にカウンターの選択肢がなかった。
ヘタフェは変なボールロストを避けていて、最終的にクロスで終わる攻撃が何度かあった。
クルトワがキャッチした後、今シーズン見られているようにビニシウスを一発で狙うとか、クリアしたボールを中盤が拾ってベンゼマに当て、落としてからビニシウスを走らせるとかといったことができれば、カウンターができたかもしれない。
守備が整う時間的余裕と、スピードアップしないという精神的な余裕は、ヘタフェ最終ラインへの大きなプレゼントとなった。
ミドルもなし
最近見られているミドルシュートは、サイドで仕掛けてマイナスのボールから狙うような形。
何もないところから個人ではがして狙うというようなものではなく、2、3人での崩しからの終着点としてミドルもある、という状態でやれていたから、少し遠くても良い形で蹴れている場面が見られていたのだった。
サイドが詰まっていて、ヘタフェの5-3がきっちり中央を締めていた状況では、こうした効果的なミドルシュートは望めない。
どちらかでも打開できていればミドルの可能性も出てきて、守備を迷わせることに繋がっていっただろうが、両方ダメではどうしようもなかった。
前半のモドリッチのシュートチャンスのような形が多く見られなくなってしまったのは残念だったが、両チームの状態を考えると納得。
交代は妥当
こうなったら狭いところで密になっても何か変化をつけられるプレーヤーを増やして、エリアの幅で何とかするしかない、ということでマルセロとアザールを入れたのは妥当な判断だった。
アタッキングサードで味方と関わりながら仕掛けていく場面は増え、特長が出てもいたように思う。
更に、ベンゼマが自由に動いても中央にターゲットが残るようにとマリアーノを入れたのも理解できる。
それでもゴールが決まらなかったのだから、ヘタフェの守備を褒めるしかない。
ただ、ここまで割り切った交代をしたのだから、リスクを負って長所を出すプレーを増やしてほしかったとは思う。
例えばアザールが一番外のポジションから中に向かってドリブルしても、あまりメリットはない。
狭くてもエリアの幅の中でプレーして、ベンゼマやマルセロと近い位置を取って前を向いた時の方が可能性が感じられた。
しゃにむに攻めるしかないような状況になってしまったのだから、左のエストレーモの位置に戻ってプレーするよりも、1点取ることを目指すのがマドリーらしい。
彼に限らず、ぐちゃぐちゃでも1点を目指さざるを得ない状況に反して、律儀すぎたのではなかろうか。
劇場型からかっちり勝つチームへ
セルヒオ・ラモスは上がってくる、マルセロは当然のように中央にいる、カルバハルも自由に動く。
少し前のマドリーがビハインドになって終盤になれば、そうした光景が当たり前のように繰り広げられていた。
もちろんその分リスクもあったのだけれど、最後まで諦めないという精神ははっきり見えていたし、ぐちゃぐちゃにやって最後には押し込んで勝ち点を拾うというドタバタ劇場は見ていて楽しいものでもあった。
さらに言えば、こうした試合ができることは、一発勝負の試合で不思議なほど強くなるCLでの神通力にも繋がるもののようでもあった。
そこから、なかなか点が取れなかった第2次ジダン期を経て、マドリーは不安定要素が少ないチームになってきている。
今の第2次アンチェロッティ期は、劇場の座長たるセルヒオ・ラモスもいなくなって、よりかっちりしたチームに成長している最中だ。
それ自体は良いことだ。
リーガのタイトルをなかなか勝ち取れない大きな原因の一つだったものが解決しようとしているのだから。
ただ、それと引き換えに、このような試合の最終盤で勝ち点をもぎ取るような荒々しさは、少し手放したのかもしれない。
最後に
ミッドウィークはコパ。アルコジャーノとアウェイで対戦。
割と苦労しがちなところなので、メンバーは調整しつつも油断せずにいきたいところだ。
週末はバレンシアと対戦し、その後はスーペルコパのためサウジアラビアへ移動となる。
コンディションは気になるが、ここで緩むとガタガタと問題が出かねない。
アンチェロッティが以前の教訓を生かして1月を乗り越えてくれることに期待しておこう。