レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

ラ・リーガ第21節 vアスレティック

10分までに3点入る慌ただしい立ち上がり。

そこからはアスレティックの試合となったもののエリア内ではやらせず。難しいスタジアムで勝ち点3を得て2021年を終えた。

 

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■マドリーの先発メンバー

GK:クルトワ

DF:ルーカス・バスケス、ミリタン、ナチョ、メンディ

MF:カマビンガ;バルベルデ、クロース

FW:アザールベンゼマ、ビニシウス

 

85分:ビニシウス→マリアーノ、86分:アザール→ピーテル、89分:ベンゼマ→ヨビッチ

 

新型コロナウイルス感染症のため欠場者が増えている。

カディス戦に続いてバスケスバルベルデアザールという右サイドのユニットとなった。

 

アスレティックの先発メンバー

GK:アギーレサバラ

DF:デマルコス、イェライ、ヌニェス、バレンシア

MF:ムニアイン、ダニ・ガルシア、ベンセドール、サラーガ

FW:サンセット、イニャキ・ウィリアムス

 

57分:サラーガ→ニコ・ウィリアムス、63分:サンセット→ラウール・ガルシアバレンシアガ→レクエ、84分:ムニアイン→セラーノ

 

ウナイ・シモンが不在。

ホームは12得点10失点。アウェイでは9試合4得点4失点という渋い内容。

 

カディス戦における右サイドの問題

誰も生きない組み合わせ

週末のカディスは、早々に下がって守る姿勢を明確にしていた。

マドリーとしては、ビニシウスがいる左でできるだけスペースがある状態を作るのが最終目的。よって、右で回してディフェンスを偏らせることから始めたい。

この「右で作って左で刺す」形は、ロナウドがいた頃によく見られたもの。久しぶりにそういうバランスが見られる試合となった。

 

その右サイドは、メンバーの項で触れた通りバスケスバルベルデアザールのユニット。これがなかなかうまくかみ合わなかった。

アザールはディフェンスを引き付けてパスでいなしたり、崩しのアイデアを出したりできるのだが、バルベルデバスケスは走力で勝負するタイプ。アザールのイメージが共有できていないか、狭いところを通す精度に自信がないように見受けられた。

 

例えば、セントラルとサイドバックの間に入っていくプレーが何度か見られたが、ここにボールが入ればスピードアップできそうというところでも、安全なパスを選択していることがほとんど。

一旦やり直して中に持ち込んで外を空けさせる、というプレーが繰り返されることになった。

確かに悪いプレーではない。だが、それ以上でもない。

引いた相手に対して、エリアの幅より広くゴールから遠いサイドの位置でぐるぐる回っても、守備に与える圧迫感は少ないままだからだ。

 

そして問題を大きくしたのは、空いた大外のスペースで受ける役割を担っていたバスケスのクロスがことごとくプレゼントになってしまったこと。

彼が危険なボールを供給できなかったことでカディスは取捨選択をしやすくなり、エリアの幅で仕掛けたいアザールや、飛び込みたいバルベルデにはやりづらい状態が生まれることとなった。

 

この3人は、押し込んだ時に誰も生きない組み合わせになっていたのである。

 

カルバハル離脱の影響

カルバハルの離脱をバスケスでカバーできていること自体は素晴らしい。

だがボールを持ってのプレーにおける落差は大きく、こうした試合で生きないのはやりくりを考える上で大きな問題となる。

 

今の序列のままであればカルバハルを重要な試合で使うことになる。

ところが彼は最近負傷がちであるため、コンディション調整やローテーションが必須と考えられる。それができるのは主に格下との試合においてだ。

 

そうした相手の場合、「リトリートした相手をどう崩すか」が焦点となることが多くなることが想定される。

であるのに、大外でスペースを得やすいプレーヤーがアタッキングサードで脅威になれないのは厳しい。

逆に同等以上の相手であれば、攻守に走力を求めたいからバスケスが生きる展開となることもあるだろう。

単純な能力で言えばカルバハルの序列が上なのは論を俟たないのに、使い方としてはバスケスの方が重要な試合で使いやすいかもしれないというジレンマに陥ってしまっているのだ。

 

バスケスの活躍ではなく、カルバハルのコンディションが整わないことによって序列に疑念が生まれてしまっているのは良い状況ではない。

カディス戦ではバスケスも(得意でない役回りによって)損をしている。

2人とも評価が下がり、ここから作り直しとなると事は大きくなってしまう。

そうなる前に、カルバハルのコンディションが戻ってくれることを願うしかない。

 

アスレティック戦の改善

アスレティック戦では、この右サイドでの旋回はほぼ見られなかった。

早々にリードしたという試合展開の違いは考慮する必要があるが、それにしても普段通りベンゼマ、ビニシウス、メンディで回していた左サイドとの差ははっきりしていた。

ビニシウスにスペースを与えたいという狙いは変わらないものの、右サイドもシンプルにプレーすることで、バルベルデバスケスの走力が生きる形を作れていたのだ。

 

カウンターの形が多かった中で、アザールも縦に運べていたのも大きなポイント。

カディス戦では狭いところでアイデアを出す役割、アスレティック戦ではスペースを生かしてボールを運ぶ役割と、どちらにも対応できるのは彼らしい長所である。

アセンシオやロドリゴとは違い、体を当てて進んだり角度をつけたりできるのも彼の良さで、こうしたプレーにおいては「アザールが帰ってきた」と言っていいかと思う。

 

彼については、あとはシュートの場面の問題だけ。自分でやり切るという意識が見えない。

思い切れないのは、彼自身にとってまだ自信を持てる状態ではないからだろう。そこまで上がってくれば、アタッキングサードでより怖い存在に戻ることができるのではなかろうか。

 

中盤の組み合わせの狙い

カマビンガをピボーテに置く中盤は、今節のサプライズの一つであった。

カゼミロがいない場合のピボーテは、実績でクロース、適性でブランコかというところなのだが、アンチェロッティはここまでインテリオールでやってきたカマビンガを据えた。

 

プレーを見てみると、カマビンガは基本的には相手にチャレンジしたいのだなという印象。背後にピボーテが控えている時のチャレンジとカバーの分担がそのまま表れていた。

ただ、自分が底にいる時はそうもいかない。

ましてマドリーでは1枚で低い位置の広い範囲を守備しなければならないから、出ていったらカバーはない。自分でボールを奪わなくてはならないのだ。

 

その齟齬をアンチェロッティがわかっていないはずはない。

それでもこの組み合わせにしたのは、カマビンガの不安定さよりもクロースに前目でプレーしてほしい意図があったのではないかと考えている。

 

クロースが2列目に近いポジションを取って、エリア付近でミドルを狙うのは最近よく見られる形だ。

ここに出てきて厚みを作るプレーをクロースに任せるためには、ピボーテの位置から出てくるのは遠すぎるしリスクも高い。

クロースをインテリオールに置くことを先に決め、ピボーテはトップ登録のカマビンガで行くことにしたというのが実情ではないかと想像する。

早々にリードを得たことによって、これまでやカディス戦のようにクロースが前に出る必要性は失われたために、この中盤の意図が見えづらくなったということのように思う。

 

守備組織の強さ

リードしてからの時間帯のうち、特に後半はアスレティックのペースとなった。

4-4-2のアスレティックは両サイドともにバランスが良く、どちらが悪いという印象は受けなかった。

元々体のぶつけ合いを厭わないクラブであることもあり、競り合いは望むところ。ファールなしでボールキープできるとチャンスが生まれやすい。

スピードに長けたフォワードであるウィリアムス、おなじみラウール・ガルシアといった面々だけでなく、技術があるムニアインがいることで、ただゴリゴリやるチームとは一線を画している。

ファールをもらってセットプレーでチャンスを得ることも多くできていた。

 

マドリーは最後の最後、エリア内での守備を頑張って耐えた。

ナチョ、ミリタンの2人はひたすら体を当てて自由を奪おうとしていたし、(変なパスは何度もあったが)バスケス、メンディも守備面では問題なし。

アザールとビニシウスも入った中盤がそこに加わることでぎりぎり凌ぎきった。

 

ミリタンに目立つパスは今節なかったものの安全に繋いでいたし、守備面での信頼感は高まる一方。

アラバを欠いてナチョとなっても何の不安も感じさせなかった。

この二人と最後尾に控えるクルトワのおかげで、少しのピンチであれば何とかなると思えてしまう。

離脱が多くてもこの頑張りであったから、リーガにおいて大崩れはしないかなと思われた。

 

アスレティックは、カマビンガを引っ張り出して空いたスペースを使うか、カマビンガを剥がせたらチャンス。

カマビンガが彼らの狙い通りの動きをしていたのは前述の通りで、イエローをもらっていたこともあって怖いところではあった。

逆に、それをなかったことにし続けた、最終ラインを中心とした守備の安定感と強さが際立つことになったのだった。

 

最後に

マドリーは序盤のベンゼマの2ゴールを結局最後まで守り切った。

負傷者が多い中、先制点を取り逃げ切るしたたかな試合ができたのはチームが進歩している証。

カディス戦からの修正も見えて良かった。

 

カディス戦ではアタッキングサードで変化をつけるプレー、アスレティック戦では守備参加とボールを運ぶプレーと、アザールは普通レベルには戻ってきているようで何より。

アンチェロッティが言うように、これでようやく帰ってきたと言えるのかもしれない。

 

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カディス戦、アスレティック戦と振れ幅の多い2試合であったが、どちらでもそこそこやれた。

1億ユーロの男でさえなかったら、この2試合の出来は高く評価されていたはずで、ちょっとかわいそうな気がしなくもない。

 

幸い、ビニシウス、ロドリゴ、アセンシオと駒はいる。

アザールが彼らと競るか本来なら上回っているという実績の話は一旦抜きにして、長期離脱から帰ってきたベテランと捉え、戦力になればラッキーというくらいの気持ちでいれば、落ち着いて考えられるように思う。

 

2021年の試合はこれにて終了。

来年は1月2日にヘタフェと対戦する。