今節も1失点。なかなかクリーンシートは達成できないものの、お馴染みとなっている後半の盛り返しで無傷の5連勝とした。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:ルーカス・バスケス、リュディガー、アラバ、メンディ
MF:クロース;バルベルデ、セバージョス
59分:アザール→モドリッチ、メンディ→ナチョ、69分:セバージョス→カマビンガ、71分:ルーカス・バスケス→カルバハル
ミリタンは負傷。リュディガーとアラバのセントラルコンビとなった。
チュアメニが休み。クロースがピボーテとなって、インテリオールはバルベルデとセバージョスに。
バルベルデがインテリオールとなったことにより、ロドリゴが右エストレーモで先発のチャンスを得た。
■マジョルカの先発メンバー
GK:ライコビッチ
DF:マフェオ、ナスタシッチ、ライージョ、バリエント、ジャウメ・コスタ
MF:バタグリア、ガラレタ;イ、ダニ・ロドリゲス
FW:ムリキ
53分:バタグリア→イドリス・ババ、59分:ガラレタ→アントニオ・サンチェス、ダニ・ロドリゲス→グルニエ、78分:ムリキ→プラッツ、イ→ラゴ・ジュニオール
ここまで4節で3失点。5バックでしぶとく戦っているようである。
うまいだけでは…
セルティック戦でベンゼマが負傷交代したことにより、シーズン当初からアンチェロッティのアイデアとして示されていたアザールの偽9番が実戦投入されることになった。
狭いエリアで受けて捌く技術は確か。引いた相手の中央を崩す形で存在感を出すことができていた。
サイドチェンジを多用して両サイドに相手の守備を振りながら仕掛けるタイミングを計るマドリーの攻撃の中で、中央に刺さっていく基点になれるプレーヤーは、現有戦力では貴重。
こういうことができるのが分かっていたからこその、アンチェロッティの選択であったのだろう。
とはいえ、こうしたプレーができることはこれまでのプレー機会でも見られていて、分かっていた。
それにプラスしてセルティック戦でアザールが良かったのは、ゴール前でフィニッシュに関与し、得点を挙げることができた点にある。
うまくて気が利くだけならアザールに優位性はない。実際、より若いロドリゴでも良いだろうという論調になりがちである。
ではどこで差がつくかというと、得点に直接絡めるかどうか。
ビニシウス覚醒前、得点がベンゼマに偏っていてその次がカゼミロだった頃は、ベンゼマの囮が求められた。ベンゼマを負傷で欠いた今は、ビニシウスの囮が必要となっている、ということだ。
ダメ押しの場面ではあったものの、良いところに入り込んでゴールを決めたことにより、これまでの評価から脱却するチャンスを得たはずであった。
今節のマジョルカ戦では、ピボーテに入ったクロースがサイドチェンジよりも中央で楔のパスを志向していた。
そのため、アザールにはポストプレーの機会がしばしばあり、セルティック戦同様「うまさ」は見られていた。
ところが、アタッキングサードにおける彼のプレーは、以前と変わらない「うまさ」だけのものに。数度あったシュートチャンスで、ことごとく手数をかけるプレーを選択していた。
足元の技術があり、味方が見えているのはわかる。
それでも、彼が浮上するきっかけになるとすれば、それは小粋なパスの数十本ではなく、1回のゴールであるはずだ。
経験豊かなアザールがそうした序列の機微をわかっていないはずはない。
にもかかわらず、下がり続けていたマジョルカに対してパスの選択となってしまったことは、ベンゼマ不在を生かしてアピールする意欲があるのだろうかという根本的な疑念を見ている者に抱かせるに十分であった。
ビニシウスとの関係で1アシスト、その後独力の突破で1得点を挙げたロドリゴに期待感が強まるのは当然である。
幸い、ロドリゴが中央に移っても、バルベルデやセバージョスの存在により右エストレーモとインテリオールのやり繰りは計算が立つ。
ベンゼマの不在で序列を上げていくのはロドリゴになるのではないだろうか。
クロースのピボーテ
セットプレーでリードしたことで5-4で下がったマジョルカの姿勢によって、クロースのピボーテ起用は、あまり問題にはならなかった。
インテリオールでは長いボールで展開する役割の彼が、ピボーテでは縦パスを差し込む役割に徹していたのは印象的で、リーガ下位との試合においてのローテーションであれば運用できるかな、という雰囲気であった。
ただ、広いスペースをカバーできない点と、チュアメニになって以降強みとなっていたハイボールへの対応力が下がる点の2点には目を瞑る必要がある。
それができないと想定される相手にローテーションする場合は、カマビンガを一列下げる選択をした方が良いかもしれない。
先発の選択で失敗し、結局主力組を投入することになってしまってはローテーションの意味がない。
どうせやるなら腹を括って、カマビンガ、セバージョス、バルベルデのような組み合わせで長い時間プレーできるようにしていった方が、損耗は少なく済むだろう。
セバージョスがここまで使えるとはシーズン前には思っておらず、嬉しい誤算。積極的に組み込んでいってほしいところだ。
選択肢の多さ
前半のうちにバルベルデのゴラッソで追いついたことで、後半はマドリーのペースに。
59分にモドリッチを入れたことで、中盤の配球に信頼感が増し、中央に移ったロドリゴもライン間で受けるプレーを多用することで、相手を背負っていたアザールからの変化をつけた。
左ラテラルもアラバに替えて攻撃力をアップできるし、パサーが増えた中盤のバランスを取りつつ運動量を高めるカマビンガを使えるというのは、なんとも贅沢。
先述の通り、多くの主力組を使うのでローテーションという点では疑問もあるが、1試合の中でこれだけ変化をつけられる選択肢がある点は大きい。
72分、ロドリゴのパスを受けたビニシウスがディフェンスを外し、GKの足の少し上を通すストライカーらしい精度の高いシュートで勝ち越し。
持ち出すタッチがやや大きいかと思ったが、ビニシウスには問題なかった。
引いた相手に対し、ドリブルでは良い形を作れていなかったが、結局決めてしまうのが今の彼だ。
89分にはロドリゴが単独で持ち込み、ダブルタッチ、シュートフェイントでディフェンスを剥がしてゴール。
中央でロドリゴが前を向けていたことで、2点が生まれた。
アザールが下がって、ポジションが中央になってから良いプレーが結果に結びついたため、ロドリゴの待望論はますます高まっていくだろう。
最後に
最後にはセットプレーでリュディガーも決めて、4-1。
個人の力が光ったわけだが、それは個人能力を生かせる状態を作れる配置や交代策があってこそ。
アンチェロッティの用兵術は、今のところうまく当たっていると言っていいだろう。
ミッドウィークはベルナベウでCLライプツィヒ戦。週末はアウェイのアトレティコ戦で、最初の関門となる1週間だ。
ベンゼマなしでどこまでやれるか、怖さ半分期待半分である。