この試合に引き分け、いよいよ勝ち点差は4。一時は一気にリードしたが、そう簡単にリーガは終わらない。ここからが正念場。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
MF:シャビ・アロンソ、ケディラ;イグアイン、エジル、ロナウド
FW:ベンゼマ
46分:イグアイン→ディマリア、71分:ケディラ→カカ、83分:エジル→カジェホン
セルヒオ・ラモスが出場停止のためアルビオルが出番を得ている。イグアインとベンゼマの併用は継続中。
■バレンシアの先発メンバー
GK:グアイタ
DF:リカルド・コスタ、ラミ、ビクトル・ルイス、アルバ
MF:トパル、チノ・コスタ、;フェグーリ、パレホ、ピアッティ
FW:アドゥリス
63分:ピアッティ→マティウ、フェグーリ→パブロ・エルナンデス、77分:アドゥリス→ソルダード
3位を守っているバレンシア。マドリーのカンテラーノであるパレホは先発。ソルダードはベンチスタートとなった。
■バレンシアの思う壺
バレンシアの攻撃はカウンターがメイン。しっかりブロックを作って跳ね返して、両サイドを中心に速い攻めを狙う。
そのバレンシアのブロックに対して、マドリーはボールを保持して攻める形をとらざるを得なかった。そこで、いつもの”持たされる”状態に。
マドリーは前線の3人とエジルで攻めたい。が、プレスの場面で葉ファールを取られることもしばしばあり、自分たちが奪ってスペースがある状態で彼らがボールを持てたシーンは多くなかった。
では、遅い攻めになった時に彼らに加わって厚みをもたらすのは誰か。それは、ボール運びでは両センターバックの持ち上がり、アタッキングサードではマルセロ、ケディラの絡み。
だが、ペペがボールを持ち上がっても、バレンシアがマークを下手にずらすことはなく、あまり効果的でなく、マルセロとケディラの攻撃参加もあまり合っていなかった。
バレンシアのカウンターの鋭さは試合中何度も見せられることになったが、そのせいで、マドリーは点が取れないにも拘らず、攻撃に傾くのを自重しなければならなかった。
点は取れそうなのに取れないという状況で、しかもボールを持たされ、ブロックを前に難しい攻めを強いられる。マドリーが苦手とするパターンであり、バレンシアはこの状況に持ち込むことに成功した。(序盤のミドルが入っていれば、様相が大きく変わっていたことは明らかで、その点で悔やまれるところではある)
マドリーは後半開始のタイミングでイグアインに替えてディマリア。サイドで仕掛けられる選手を入れて、マークのずれを起こしたい意図。余計な演技は鼻に付くが、こういった試合でもさすがにサイドでの突破は計算できていた。
それでも点が取れず、攻撃に力を入れるマドリー。それに対してバレンシアはマティウとパブロ・エルナンデスを投入。
あたりにも強くサイドで仕事ができるマティウと、ドリブルで崩せるパブロ・エルナンデスが入ったことで、マドリーはカウンターの脅威を常に感じながらプレーを続けることになった。
ここから速い攻めのやり合いが続くことになるわけだが、この展開を望んだのはバレンシアの方といって良い。
もちろん、マドリーにとっても攻めあいは望むところ。
しかしながら、バレンシアはある程度人数を残し、マドリーの好きなようにやらせないように、注意深くカウンターで攻めていた。そして、早い時間に得点できなかったことによる焦りは、マドリーの選手たちの精神を確実に侵していた。
だから、マドリーは速い攻めは速い攻めでも、バタバタしてしまい、最後の所でも落ち着きを欠いてしまっていた。
決定機という点でも、バレンシアのカウンターの方が多かった印象で、マドリーはバレンシアを崩せなかったのは明らか。もらったチャンスをも逸したことで前が仮にならざるを得ず、結果カシージャスが救ったものの、交代も含めてバレンシアの思い通りに試合が展開したと考えていいだろう。
■産みの苦しみ
マドリーは今、首位に立って追われる立場に久しぶりに立っている。
若い選手が多く、才能があるとはいえ、優勝したことのある選手ばかりではない。その点で、試合への精神的な対応が、今後さらに難しくなる恐れはある。
今朝見せたような「早く決めてしまいたい」という無用な焦燥は、試合に勝つことを難しくするし、ひいては優勝を難しいものにしてしまう。その意味で、今朝の試合は、今のマドリーの精神状態の象徴とも言えるだろう。
なかなか落ち着いて臨むのは難しいだろうが、そこは優勝請負人たるモウリーニョの手腕の見せ所。
早々に点を取れないことでジリジリしてしまうような精神状態をうまく改善してくれることを期待しよう。
さて、今週はミッドウィークにリーガ。ビセンテ・カルデロンに乗り込んでのダービーである。ずっと負けていないとはいえ、難しい相手であることに変わりはない。だが、引き分けでも厳しくなることを考えると、勝ちがほしい相手だ。
逆にここで勝てれば建て直しの大きなきっかけになる。
落ち着いて試合に臨んで、焦らずにゴールを目指してもらいたい。