■マドリーの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
MF:ケディラ、シャビ・アロンソ;ディマリア、エジル、ロナウド
FW:ベンゼマ
60分:ベンゼマ→イグアイン、75分:ディマリア→モドリッチ、84分:シャビ・アロンソ→ペペ
マルセロはやはり先発せず。ペペもベンチスタートとなったが、中盤より前はいつもの組み合わせ。
■マンチェスターU.の先発メンバー
GK:デヘア
MF:フィル・ジョーンズ、キャリック;ルーニー、香川、ウェルベック
FW:ファン・ペルシー
64分:香川→ギグス、74分:ウェルベック→バレンシア、84分:ルーニー→アンデルソン
ルーニーがサイド、香川が中央。フィル・ジョーンズが中盤で先発と、こちらは少し様子が違うよう。
■やりたいことができていた序盤
ベルナベウでの第1戦。マドリーは当然失点は避けたい。だが、だらだらとスコアレスで終わるわけにもいかない。そのバランスをどう取るのか、ホームで考えなければならないのが2位通過の辛さ。
マドリーは、序盤から高い位置でプレーし、ボールを奪うか、少なくとも簡単に前線に届けさせないことを目標に、かなり運動量を割いていった。
攻守の切り替えがとても速く、香川、ファン・ペルシーのあたりには次々にプレスにいってボールを狙いにいっていた。2列目、そしてケディラやシャビ・アロンソの3列目と、息をつく間を与えないプレッシャーがかけられたのは、コンパクトに保っていたからこそ。
マドリーは当初想定された、強力な前線にボールを与えないという目標を高いレベルで実現できていた。
ボールを持った時の第一の狙いは左サイド。
ロナウド対ラファエウだから、マドリーの最大の強みとユナイテッドの守備の弱点がぶつかっており、当然のことだろう。
ユナイテッドの対抗策はフィル・ジョーンズ。彼とラファエウとの2人でロナウドを見ようという形。セントラルからは経験豊富なファーディナンドも見ており、ケアはされていた。
対するマドリーは、この試合に限ったことではないが、エジルが流れたり、コエントランがオーバーラップしたりと、入れ替わりたち替わり左サイドに侵入。マークのずれを起こすために、このポイントをどんどんついていった。
フィル・ジョーンズやキャリックがサイドに目を向けすぎるとケディラがスペースに飛び込むことも可能。今のケディラにはその動き出しができるので、左サイドからユナイテッドを難しい立場に追い込んだ。
単純に個人の能力で、エジルやロナウドがラファエウを抜き、サイドをえぐるシーンも、早い時間帯から何度かあり、これを続けていければと思われた。
しかし、マドリー苦手のセットプレーで状況は一変する。
■相変わらずのセットプレー
ユナイテッドの先制はコーナーから。ウェルベックがうまくセルヒオ・ラモスをブロックし、ルーニーのボールをゴール右へ決めた。
確かにルーニーのボールは素晴らしかった。ディエゴ・ロペスが出づらい位置にボールを落としてきたのはさすが。
しかし、今シーズン散々やられてきたセットプレー、しかも最初のものであっさりやられてしまうマドリーの成長のなさに、まずがっかり。ディエゴ・ロペスとの連携不足の面はあるだろうが、それにしてもあっさりやられてしまった。
攻撃面でもセットプレーに不満は残る。
この試合、コーナーは12回あったが、まともに合ったことはほとんどなかった。それでも競ってシュートに近い形になったこともあったので、いつもよりマシとも言えるかもしれない。
マドリーは、ニアからゴール正面にかけて3、4人の選手を配置することが多いが、その位置にボールが運ばれることはあまりなく、どうもファーへ行ってしまう印象が強い。しかも、速いボールではないので、ディフェンダーと競ってあわせるのは非常に難しい。
成功しない原因はどうもボールの精度にあるように思われるが、守備と同じく、攻撃でも一向に改善の兆しがないので、どうしようもない。
マドリーにとって、セットプレーは問題となってもチャンスにならないものでしかない。
■失点後
さて、アウェイゴールを与えてしまったので、ユナイテッドは精神的に余裕を持ってプレーできることになった。
そもそも、ボールを持つ気がない攻撃を続けていたユナイテッド。スイッチが入るのはファン・ペルシーの足元に収まった時で、2人くらい相手ならキープして前を向ける彼が、狭い中盤から抜け出たら人数をかけようという感じ。
マドリーはそうなる回数をかなり減らすことに成功していたし、ユナイテッドも無理はしていなかった。
だから、プレスが早い時はあっさりロングボールを蹴っていたし、それもファン・ペルシーの頭を狙うというよりは、外に出ても構わないというようなボールが多かった印象。
そういう時にボールを運ぶのは、普段ならルーニーだっただろうが、今日はサイド。あまり存在感がなく、香川も効果的にボールを受けることは出来ていなかった。流れの中でユナイテッドの2列目が怖いのは、追い越していく動きで最終ラインと駆け引きする時で、それ以外の位置では問題はなかった。
そうしたユナイテッドがアウェーゴールを奪ったのだから、これは楽になる。攻撃は上手くいっていないが、それでもワンチャンスにかければよくなったし、守備に意識を集中できるようになる。
マドリーの左からの攻めにもコンパクトな守備陣で対応できるようになり、徐々に崩すところまでいけなくなっていってしまった。
引かれだしたマドリーは、前線の流動性を高めてずれを狙う。
同点ゴールは左右が入れ替わっていたディマリアのクロスからロナウドの高いヘディング。
序盤に大きなチャンスを逃し続けていたが、ここは一発でしとめた。
■割り切った交代策でも打開できず
後半のマドリーは、一気にペースダウン。前半にかなり頑張ったと見えて、前線での工夫、好手の切り替えといった面で質が悪くなっていった。
大きな問題は、今シーズン何度も書いているように、引かれた相手に対する引き出しの少なさ。とにかく崩せるイメージがない。
まして走れなくなっていっており、普段にも増して守備ブロックの周りを撫でるだけのボールの動きが多くなった。
流れを変えるべく、ベンゼマをイグアインに交代したが、本来はモドリッチの投入を先にすべきだろう。確かにベンゼマはゴールに迫る仕事はできていなかったが、ボールを受ける形はイグアインよりずっと良い。スペースがあって生きるイグアインでは、展開とちょっとかみ合わない。
カウンターで良いユナイテッドは、前半何もできなかったルーニーをファン・ペルシーの側において2トップとし、2人での打開に期待。
厳しい中盤で苦労した香川をギグスに、走り回っていたウェルベックをバレンシアに替えて、守備と速攻の形を着々と整え、最後はルーニーも下げてアウェイゴールのリードを守りにかかった。
マドリーは残り15分でモドリッチをディマリアに替えて投入。
運動量の面で非常に厳しくなってきていたエジルをあえて残し、走り回れるディマリアを下げたのは、アタッキングサードでの出しどころを増やすため。ディマリアは左で良いドリブルを見せていたものの、押し込んでの中央突破と割り切った。
普通ならば、サイドを広く使って守備の網を広げることを考えるべきだろうが、良いクロスがなかなか入らないマドリーでは、半ば諦めてこのエジルとモドリッチの共存に賭けるしかない。延々とあわないクロスを放り込み続けるよりは、今のマドリーにはあった選択だったと思われる。
シャビ・アロンソに替えてのペペも、同じ意味合い。
シャビ・アロンソのパスが生きる早い展開は、時間が経つにつれ望めなくなっていったので、カウンターへの警戒と合わせて、中央突破に集中。
マドリーで終盤唯一駆け回っていたのはケディラ。
今シーズンのケディラの良さである前線への飛び出しは、この試合の終盤、マドリーが唯一変化を期待できるものだった。
他の選手が足が止まっている中、上下動を繰り返すケディラがマークのずれを生めばチャンスになったのだが、ユナイテッドはうまく受け渡して対応していたように思う。
ボールを持たされる状態になってからは、可能性はほとんど感じられなかった。
カウンターの撃ち合いになった時間帯もあり、そこで得点をあげられていればと思うが、シャビ・アロンソがファン・ペルシーのシュートをクリアしたこともあるし、それはお互い様だろう。
デヘアはマドリーのミドルを安定してセーブしつづけ、ユナイテッドの半歩リードに貢献した。
■今後に向けて
ユナイテッドは1-1でOK。
マドリーは今シーズンここまで見られた課題を全部露呈しつつ、何とか追いついてアウェイに向かうことが出来る。
引かれてからの何も起こせない感じを打破できないと、頂点ははるか彼方のものになってしまうし、そもそもオールド・トラフォードで得点できるかも怪しいものになってしまう。
マドリーを相手にボールを手放すことは、リーガでも常套手段になってきており、いい加減打開策を見出したいところだ。
リーガのラージョ戦とデポルティーボ戦、コパデルレイとリーガのバルセロナ戦を挟んで第2戦を迎える。
バルセロナとの連戦は、消耗はもちろんのこと、ユナイテッド戦とはまったく違うやり方を取らなければならない事も難しいポイント。リーガは半ば消化試合と捉えるとしても、直前のコパはタイトルがかかった試合であるため、勝ちに行く必要がある。