最近は少し薄れてきたけれど、マドリーにとって一番の鬼門とも言えるリアソールでのデポルティーボ戦を振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
FW:イグアイン
56分:エッシェン→ケディラ、モドリッチ→エジル、マルセロ→ロナウド
明らかに今後を踏まえたメンバー。
■デポルティーボの先発メンバー
GK:アランスビア
MF:アベル・アギラール、パウロ・アスンソン:ブルーノ・ガマ、バレロン、ピッツィ
FW:リキ
58分:カカ→ヘスス・バスケス、71分:シルビオ→ベルガンティニョス、75分:リキ→ネルソン・オリベイラ
リーガで苦戦が続くデポルティーボ。ここまで5連敗中だった。
■主力を休ませて
この試合のマドリーの立場、達成したかったポイントは2つ。
まずは主力の温存。ずっと試合に出て続けてきた主力のメンバーに一度休養を取らせて少しでも体力を回復させたいところだった。
次に勝つこと。コパのバルセロナ戦とCLのユナイテッド戦というタイトルがかかる試合を控えて、落ち込んだ精神状態で過ごしたくはない。
つまり、控え主体のメンバーで、リアソールの試合を制するという、実はなかなか難しい課題をクリアしたい、というのがこの試合のマドリーだった。
その意味で先発メンバーを見ると、シャビ・アロンソやベンゼマをそもそも招集外にしたこともあって、きちんと”Bチーム”で臨んでいる。フィールドプレーヤーの主力と言えば、アルベロアとディマリアくらい。
ペペとマルセロも本来はそうだが、今は彼らにとってのプレシーズン。無理のない程度に使っていく必要がある選手たちだ。
だから、このメンバーで試合に臨んだ時点で、最初の課題はある程度クリアできたことになる。
■かみ合わない
だが、そのことと勝利とが結びつかないのが難しいところ。
イグアイン、ディマリア、カジェホンといった、縦に速く裏を取りたい選手が揃った前線に、細かく繋ぎたいモドリッチという組み合わせは合わない。カカも攻撃に組み立てに降りてきてはいたが、そこからの動きがないから、デポルティーボの守備陣の周りをボールが行ったりきたり。
マルセロもまだそれほど存在感を出せず、ボールを持ち上がることができるのは右サイドのディマリアだけという状況。ディマリアの右サイドのバリエーションの少なさは散々書いてきたが、彼しかボールを持てないという状況が、この試合の攻撃の難しさを象徴している。
カジェホンとイグアインは何度も動き出してはやり直してを繰り返していたが、そういうボールを供給するタイプではないモドリッチとは合わず、ディマリアはとりあえず入れるけれども精度は決して良くなく、全く効果的ではなかった。
デポルティーボはそんなマドリーを尻目に、速い攻めでリキがディエゴ・ロペスの二アサイドを破り、先制に成功。希望を与えるゴールを決められてしまった。
■ロナウドの存在
内容もなくこのまま負けては今後にかかわる、ということで、結局56分にロナウド、ケディラ、エジルの主力組を一気に投入。
これによって、主力の温存という課題の達成度はかなり下がってしまった。一番良かったのは先発メンバーで余裕のある試合運びをすることだが、上記の通り組み合わせとして点が取れそうなものではなく、途中からの投入は想定内だったかもしれない。
プレーが全然ダメだということをチームに示すために、モウリーニョは3枚替えを何度かしたことがあるが、これもそれに近いものだろう。理想より悪い展開で、思ったよりプレー時間を作らざるを得なくなってしまったと言うのが正直なところ。
試合後にマルカが「ロナウドが全てを変えた」と書いたように、サイドでボールを持って2人を引き連れられるロナウドの存在によって、きっちりラインを保てていたデポルティーボの守備陣は徐々にずれていく。
スペースが出来てきたバイタルでカカが仕事をし、今シーズン初ゴール。素晴らしいコースのミドルだった。
逆転のゴールもカカのスルーパスから。抜け出したロナウドのクロスを、イグアインがアランスビアのいないゴールへ落ち着いて蹴り込んで2-1。
ディフェンスを複数引き付け、1人は簡単にかわしてしまうロナウドの存在が、一気に試合の様相を変えた。
チームとしての攻撃が悪くてもディフェンス組織を壊しうる、彼のもたらすものの大きさを再確認して2-1で試合終了。
課題は何とかクリアできた、というところ。
■ディマリア
89分のディマリアの退場について少し。
デポルティーボのフリーキックのボールを蹴る遅延行為と、ボールから離れなかった遅延行為の2つであっという間に退場となってしまった。
確かに、2枚目の場面ではディマリアは既にボールから離れようとしており、イエローはかなり厳しい判定ではあった。
だが、そもそも1枚目は、カードをもらう必要がない行為で、チームのことを考えていない愚かなものだったのだから、言い訳のしようはない。
いくら粘ったところで、あのフリーキックをプレーせずに試合が終わるということはあり得なかったはずで、早いリスタートを警戒するだけで良かった。それならせいぜい1枚で済んでいたはず。
結果的に勝ち点を落とすことにはならなかったが、こういうことをする限り、真に信頼されることはないといい加減知るべきだ。彼は余計な行為でカードを貰いすぎる。退場となるリスクが高いというだけで、チームには大きな負担となることを考えなければならない。
■勢いを持って
なにはともあれ、勝ったという結果は大事にしたい。難しい試合を逆転した結果を勢いに替えて、この後の3試合に臨めることはポジティブな材料だ。
まずはミッドウィークに、バルセロナとのコパ準決勝第2戦をアウェイで迎える。
ベルナベウで1-1と、アウェイゴールを与えている状況ではあるが、今のバルセロナからは点を取れるはず。2点を取れれば、勝ち抜けはぐっと近づく。