カンプノウでの第2戦。バルセロナ相手ということで、2点は欲しいと思っていたが、それ以上の結果に。
内容を振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
MF:ケディラ、シャビ・アロンソ;ディマリア、エジル、ロナウド
FW:イグアイン
71分:イグアイン→カジェホン、79分:エジル→ペペ、84分:シャビ・アロンソ→エッシェン
マルセロは遠征自体に帯同しなかった。フォワードは、不調、そして精神的にもダメージを負っているとも伝えられるベンゼマではなく、イグアイン。
■バルセロナの先発メンバー
GK:ピント
DF:アウベス、プジョル、ピケ、アルバ
MF;ブスケツ;シャビ、セスク
FW:ペドロ、メッシ、イニエスタ
59分:セスク→ビジャ、71分:ペドロ→テージョ、73分:シャビ→チアゴ
ネームバリューとしてはベストメンバー。メッシは休むことなく出場し続けている。
■両サイドの状況
バルセロナはお馴染みの4-3-3。
主たる得点源であるメッシに点を取りやすい環境を与えてあげることが大事。最終的にはメッシのいる中央付近を使うにしても、守備網を広げるサイドへのボールの展開は避けて通れないもの。
ということで、まず両サイドのマッチアップを見ていく。
マドリーの右は、アルベロア、ディマリア対イニエスタ、アルバ。イニエスタはセスクとポジションチェンジすることがしばしばあった。
アルベロアは、下がってボールを受けにいくイニエスタに、基本的には最後までついていっていた。サイドにいる分には、完全にマンマークという感じ。
入れ替わって上がってくるアルバにはディマリアが対応。こちらも基本的にはマンマーク。アルベロアと入れ替わって、ディマリアが最終ラインに組み込まれる形になってでも離さずについていっていた。
中央のセスクのポジションはケディラが見ていて、3対3の格好。
マークの受け渡しによるずれは発生しないようになっている。
左はコエントラン、ロナウド対ペドロ、アウベス。
こちらもコエントランはペドロにどこまでもついていっていた。イニエスタとは逆に、ラインの裏をつこうとするペドロだが、コエントランはラインが崩れるのも気にせずマークを継続。
ペドロが動いて出来たスペースにはアウベスが上がってくるが、ロナウドがこれについてくるかどうかは、ディマリアとは違いまちまち。
■サイドを使わせず
こういった状況だったので、バルセロナはマドリー左のスペースを使いたいところ。
実際、序盤のチャンスは左からが多かったし、スペースがある状態でアタッキングサードでボールを持つのは、左が多かった。
ただ、ロナウドの存在があるため、アウベスも単純にスペースがあるから上がるわけにはいかない。
ロナウドのポジションを下げさせれば半分はアウベスの勝ちだが、ついてこなくて狙われたらたまらない。不用意なボールロストが少なくない印象の最近のバルセロナにとっては、この損得勘定は難しいところがあっただろう。
簡単にはサイドを使えないバルセロナは、中央の狭いスペースで勝負を仕掛けるしかなくなっていく。
イニエスタ、セスクという左サイドはテクニックは素晴らしいけれども、幅を広く取って攻めるには向いていない。
ペドロがコエントランを釣って、ラインが崩れたところをメッシやセスクが裏へというパターンもありえたが、そういう連動のための動きがバルセロナにはなかった。
バルセロナの素晴らしい時は、攻守に渡って非常によく走れている時だ。奪われた後の素早いプレスや、短いパス交換をしている間の3人目の動きなど、ここぞという時にきちんと走ることで、高いテクニックを有効に使っている。
だが、ミラン戦と続けて見ても、少なくともこの2試合においてはそうした運動量は目立たなかった。
だから、マドリーは後方で以前に比べれば格段にボールを持てるようになっているし、ボールにより集中した守備ができるようになっている。
■先制で落ち着き
マドリーは13分にロナウドがピケとの1対1に勝ってPKを貰い、きちんと決めて先制に成功。
これによって、マドリーは少しリード。この試合の状況でアウェイゴールを奪っての1点リードは非常に重要だった。
守ってカウンターで良くなったのはもちろんだが、バルセロナが攻めようとすればするほど中央に狭い寄ってきてくれたこともある。ボールの周りに集中できる状態では、これは守備がしやすい。
奪った後も落ち着いていけばボールを持って後方で回せるので、攻める攻めないの判断が主体的に出来るようになっていた。
これは、以前の対戦から見れば大きな進歩。支配率はおよそ7対3のままだが、一息つける時間があるのとないのとでは、守備の疲労回復に大きな差ができる。
奪ってからシャビ・アロンソ経由でとにかく前へ、という印象からは完全に脱却し、自分たちがコントロールできている時間がかなりあった。
少し話を変えてイグアインについて。
ベンゼマの後塵を拝する状況が続いているイグアインだが、この大きな試合であまり目立つ働きは出来なかった。
確かに守備面での運動量はあった。だが、挟み込む動きがあまり良くない。下がってボールを挟みにはいくのだが、コースを切りながら追い込むというより一気に距離を詰める感じで、バックパスのコースは簡単に見つけ出されてしまっていた。
ボールを持った時のプレーも良くない。
ベンゼマのような懐の深さがないのはわかってはいるが、トラップが大きく狭いスペースの中でボールを収めきれない場面が何度も。
後半にはそのままピンチになることもあって、自分でも責任を取るべく戻ってはいたものの、雑さが目立ってしまっていた。
また、ボールを持ってから考えるような遅さもあり、周囲のリズムと合っていない印象。彼にボールを預けたいと思えるようなプレーではなかった。
継続して試合に出られていないということもあるだろうが、運動量だけで勝負するのは厳しい。守備は避けられない仕事ではあるけれども、トップにはやはり攻撃面で味方を楽に出来るものが欲しい。
このままでは2番手の位置から抜け出すのはかなり難しいだろう。
■ビジャの投入も中央は変わらず
試合は、56分、バルセロナのコーナーの流れから、ケディラのクリア気味のロングボールをディマリアが受け、なかなか見られないような流麗なフェイントでプジョルをかわしシュート。ピントがセーブしたものの、セカンドボールをロナウドが落ち着いて決め、2-0に。
このゴールでマドリーは完全に楽になった。
バルセロナの手は、セスクに替えてビジャの投入。
だが、ポジションはサイドではなく中央。4トップのような格好になった。
前線の人数は増えたが、サイドを使えない状況は相変わらず。マドリーとしてみれば、ビジャがサイドに入って、中央よりだったイニエスタの位置を完全に中盤に戻した方が危なかったかもしれない。
ビジャのトップ下のような位置になったメッシは、以前よりは自由を得ていたものの、中央が混雑していることに変わりはないので、さすがのメッシといえども、簡単に突破は出来ない。キレもそれほどなく、引っ掛けられてカウンターのスタート位置になってしまうこともあった。
そんなバルセロナを尻目に、68分にコーナーをバランがヘディングで決めて3-0とし、試合を決めた。
その後テージョを入れたが、これはペドロと単純な入れ替え。
サイドを使える人数が増えたわけではなく、マドリーとしては対応は変わらない。4点取られなければ良いマドリーは守りを徹底。
運動量のあるカジェホンをいれ、ロナウドと入れ替えることでサイドの守りを強化するとともにロナウドをカウンターに専念させる。エジルとシャビ・アロンソをペペとエッシェンに替えて中央をがちがちに固めて試合を終わらせにかかった。
88分にイニエスタの浮き球のスルーパスからアルバに決められるが、大勢に影響なし。
カンプノウで上手く試合を操り、3-1の勝利を挙げて決勝に進んだ。
■CLへ
サイドを上手く使わせず、中の狭いところへ追い込んだこと、バルセロナの運動量のなさもあって密集した中央でボールをきちんと奪うことが出来たことで、マドリーはほぼ問題ない守備をした。
ロナウドも独力で先制のPKを得、そして2点目も落ち着いて決めており、苦手意識などもうないだろう。
この勝利によって、週末のリーガはかなり余裕が出てきた。
極端に言えば、控え主体で臨んでCLに備えるくらいにことができるくらい、ファンを納得させることが出来る勝利だったといえる。
CLに向けて、弾みをつけていくことができそうだ。