寒い寒い日の試合。日中のキックオフだったのが幸い。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:クロース;イスコ、ハメス・ロドリゲス
78分:イスコ→ケディラ、82分:クロース→イジャラメンディ、マルセロ→ナチョ
ペペの代役でバランが入ったほかは不動のメンバー。
■ヘタフェの先発メンバー
GK:コディナ
DF:アレクシス、ナウド、ベラスケス、ラゴ
MF:フアン・ロドリゲス、ディエゴ・カストロ;ペドロ・レオン、サミール、サラビア
FW:アルバロ・バスケス
56分:サラビア→イネストロサ、73分:ペドロ・レオン→ヨダ、82分:サミール→アレックス・フェリプ
ペドロ・レオン、サラビアなど、マドリーに縁のあるプレーヤーが多い。
チームは下位。残留争いに参加してしまいそうな位置にいる。
■サイドは終着点ではない
最近目に見えて不調だったベンゼマは、この試合では降りてきてボールに触ることが多かった。楔を受けるというよりも中盤に参加する形で、イスコ、ハメスと近い距離でプレーしていた。更にマルセロがかなり自由な位置取りをしていて、左サイドにはおらずしばしば中央に進出してボールに絡んでいた。
ベンゼマが動いたところはロナウドやベイル、マルセロの部分はハメスが埋めて、中盤が厚い形に。
ヘタフェはあまり高い位置で守備をせず、早めに退いてマドリーの攻撃に対応。このヘタフェの守りは半分は成功していた。
退いて守るのがマドリー対策として定石であることはもちろん、寒さもあってか固くデコボコになっていたピッチの影響も大きかった。ちょっとしたパスが微妙にずれることがしばしばあり、狭いスペースでボールをコントロールするのは至難の業。さすがにベンゼマ、イスコ、ハメスといった面々はうまく対応していたが、完璧というわけにはいかない。ずれたりタッチが大きくなったところをヘタフェに狙われて、なかなか形を作れなかった。
それでも、ベンゼマの動きと、中央をつこうという意思が見られたことは良かった。これらがないと単調な攻めが続くことになってしまう。
とはいえ、前半はこのところの試合と同様、サイドからの形が多く、アイデアに欠けていた。
昨シーズンのディマリアとモドリッチの例もあるように、サイドを使ってボールを運んでいくことには問題はない。問題はその先、高い位置でサイドからどうゴールを決めるかという点にある。
この試合でも見られたように、2,3人がサイドでボールを動かした結果、普通にクロスをあげるというだけではなかなか点には繋がらない。中央では準備されるし、クロスがブロックされることも多いからだ。
まして、マドリーにはクロスを多くあげてどれかに合わせる、という考え方がないので、中央でクロスを待ち受ける形も整っているとは言いがたい。
結局、サイドでボールを運んでもその終着が工夫のないクロス、ということではチャンスの数を増やすことはできないし、マドリーらしさもなくなってしまう。
えぐってグラウンダーでゴール前にボールを入れるまで崩せるよう、走りこんでボールを引き出すような手数を増やしたり、サイドでクロスをあげるくらいなら下げて攻撃を作り直したりした方が今のマドリーには合っている。中央でクロスを待ち続ける前線の面々が想像できるだろうか。
前半終了間際にクロースの惜しいミドルがあったもののバーに弾かれゴールとはならず。
前述の通り細かなところも微妙にずれることがしばしばで、全体としてうまくいかない、という印象が強くなる前半。ヘタフェの攻撃に転じられる機会は少なく、ペドロ・レオン、サラビアの元マドリーの両サイドが登場する場面は少なかった。サミールがキープできた時は信頼して人数をかけようとする意図は感じられたが、シュートまでは持ち込ませず。
■前半より改善、そしてゴール
後半先に動いたのはヘタフェ。サラビアをイネストロサに替えた。
守備陣をいじるのではなく2列目のサラビアを下げたのは、守備から攻撃に繋げるところの改善と中盤の運動量維持が目的と思われる。ヘタフェはマドリーより先にペースが落ちてきていた。
後半のマドリーはサイドからの単純なクロスが減り、サイドと中央の使い分けが良くなった。サイドを使ったぶん広くなった中央にイスコかハメス、入れ替わりでクロースも上がってきたりマルセロが進入してきたり。前半よりもずっと良い形を作れるようになって来た。
気になったのは後方での不用意なボールロスト。
バランのプレーは怪しげで、何の問題もなくマイボールにして欲しいところを奪われていた。ピンチにはならなかったものの、こうしたプレーはリズムを一気に悪くしてしまう。マドリーの場合、良くも悪くも最後のところをセンターバックの能力を信頼して考えるところがあるので、そこが信頼できなくなると再調整が必要になって厳しい。
バランは今のところ3番手だが、近い将来先発に食い込むべきプレーヤー。本来であれば年齢に似合わず落ち着いてプレーできる。ペペ離脱で得た出場機会を生かして欲しいところ。
先制は63分。
右サイドでボールを持ち上がったロナウドからのマイナスのクロスはイスコへ。ハメスへ繋ぎ、動きなおしていたベンゼマへ短いスルーパス。ベンゼマはゴールライン際まで持ち込み、ダブルタッチで中央へ。右サイドから中へ入ってきていたロナウドへ合わせた。
なんといってもベンゼマのダブルタッチ。動き直しも良くこのアシストで価値を示した。
67分にはヘタフェのセットプレーを跳ね返したところからカウンター。ロナウドからハメスへと縦へ運び、ハメスは右サイドを走っていたベイルへクロス。精度の高いボールにベイルがうまく合わせて2-0。
久しぶりに自陣からの高速カウンターが決まった。
ヘタフェとしてはセットプレーのボールが簡単に跳ね返されたところから失敗。
だが、1点目、2点目とも、ここぞというところでマドリーの技術の高さが光ったゴールで、守っていた方としてはやり切れない。前半からうまく積み上げてきたヘタフェの守りを一瞬のプレーで無効にした。久々にマドリディスタをすっきりさせる美しいゴールだった。
ヘタフェは2列目のプレーヤーを全て入れ替えた。マドリーも徐々に運動量が落ち、元気なヘタフェと攻め合うように。
アンチェロッティは78分まで引っ張ってイスコをケディラに替えた。
その後早速高い位置に絡んでいたとはいえ、この場面でケディラを使う意図は明らか。
79分にハメスのきれいなクロスにロナウドが合わせ3点差とすると、イジャラメンディ、ナチョも投入して少しずつながら主力を休ませた。もう5分ずつ交代が早くても良かったと感じるが、今後週1試合が続くと考えれば主力組も体力的には問題なくなってくるかもしれない。
あるとすれば控え組のモチベーションの低下だろう。
残り5分で3点差がついていては、1人が頑張ろうとしてもアピールは難しい。彼らがこうした仕事をおざなりにするとは思っていないが、これが続くと出場機会を求めて、という話は当然のように出てくる可能性がある。
疲労はなくとも、負傷や出場停止は想定できないもの。いつもの11人のほかに、もう何人かは先発組に食い込める位置にいて、先発を選ぶアンチェロッティを悩ませて欲しいところ。
■最後に
ヘタフェに終盤チャンスを作られたものの、ポストに当たる運もあって、3-0で勝利。
得点の仕方といい、ゴールをあげたのがロナウドとベイルであることといい、最終的には気分良く終えられた試合となった。
前半のもたつきは気になるけれど、今はこうして勝てたことをプラスに捉え、リーガとCLに向けて精神的にもリスタートしたいタイミング。まずはアウェイで勝ち点3を取れたことを評価したい。
アトレティコ、バルセロナも勝って上位3クラブの差は変わらず。アトレティコとの直接対決まではこのままの差を維持していきたい。
次節はアウェイでコルドバと対戦する。