追い込まれていたCL、リーガもバルセロナ戦があり、厳しい試合が続いていた。CLがないタイミングで少し落ち着いて、うまくコンディションを作りながら試合をしていきたい。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、バラン、ペペ、マルセロ
MF:クロース;イスコ、ハメス・ロドリゲス
52分:カルバハル→ナチョ57分:ベイル→ルーカス・バスケス、67分:ベンゼマ→ヘセ
カゼミロ、モドリッチを休ませた中盤は、クロースが底、イスコとハメスのインテリオールと守備で不安が大きい。どこまでやれるか。
■ヘタフェの先発メンバー
GK:グアイタ
DF:ダミアン、ビガライ、ベルギーニ、ペレイラ
MF:ペドロ・レオン、ラセン、フアン・ロドリゲス、サラビア
FW:シュチェポビッチ、アルバロ
9分:ペレイラ→ヨダ、52分:ラセン→エミ、62分:アルバロ→モイ
降格圏に沈むヘタフェ。アウェイ16試合で9得点44失点勝ち点5という成績が痛い。一方でホームでは16試合で勝ち点23とそこそこの数字。
■攻めあいの展開と、改めてクロース
最初に書いた通り、マドリーにとっては久しぶりに緊張感がそれほど高くない試合。バルセロナの失速によりリーガの可能性も出てきて、全くの消化試合という雰囲気ではないものの、一発勝負のCLから比べると数段落ちる。
CLでは守備にもかなり運動量を割いていた前線も、こういう試合だと羽を伸ばす。守備参加は気まぐれで計算が立たなくなり、前に残ることがしばしばとなった。
もちろん、いつでもきっちり攻守に動いてくれるのが理想で、バルセロナ戦やCLのような戦い方ができれば勝ち点の取りこぼしは少なくなるし、そうできず不安定な戦い方になってしまうのがマドリーの長年の課題ではある。
だが、いつもピリピリと試合を戦うのも難しい。がけっぷちだったCLの後では尚更で、1つの試合の中でも力を入れるところと、落ち着かせるところがあるように、シーズンの中で一休みする試合があるのは当然。
逆に言えば、少なくとも大きな試合では必死に戦うことはできているということで、そう考えると、ここまでの一連の試合で力を出させることができたジダンの統率の仕方は評価に値する。
この試合に限っては、プレーのレベルが落ちるのも納得という状況だったといえる。
こうしたチームの状況とともに、ローテーションにより中盤に守備的なプレーヤーがいなかったことから、ヘタフェと互いに攻め合う試合となった。
カゼミロを起用して以降、中盤は彼とクロース、モドリッチが基本。カゼミロは人に強く、いざとなればファール覚悟で相手の攻撃の芽を潰せるプレーヤー。モドリッチもよく人に寄せていくし、パスコースを読むのがうまいので、彼らがいることで中盤の守備はバランスを保てるようになった。
それまで底にいたクロースは、もともとパスの能力を買われてのポジション変更。対人の守備が軽く、守備に対する意識もさほど高くないので、彼の両脇はいつも不安だった。カゼミロの起用を経て、守備のバランスが整った形をベンチから見ていたはずのクロースが底に入ったこの試合で、プレーに変化は見られるかに注目。
対人のプレーが劇的に改善することは望めないので、いきなりガツガツ当たれるようになるわけではないが、スペースを埋めたり、カバーに入るプレーは、考え方によるところが大きく、やりようによっては短期間で改善が期待できる部分。守備の参加人数が少なく、攻め合いとなったこの試合で、どういう風に振舞うかというところだった。
結論から言えば、この点についてもこれまでと大きな変化は見られなかった。
例えば、サイドに人が足りず、バランやペペがカバーに出て行くことが何度もあったのだが、そのカバーはされないまま。このままではサイドから少し戻して、空いたセンターバックのスペースに中盤から飛び込みパスが出ればエリア内で大きなピンチとなってしまう。最終ラインの前にクロースが、一時的にラインに入って埋めて欲しいところだったが、彼はそのままの場所を維持していた。
カゼミロであればこのスペースを放置することはなかっただろう。最終ラインの穴を埋めてから、ボールと人の動きに応じて中盤に戻ることを繰り返せていたと思われる。
こうした後ろへ向かってのスペースの意識は、もう少し高めてもらえればと思う。対人のプレーはうまくなくとも、それがあるだけでチームとしてバランスは取れるようになるし、周囲も安心してプレーできるようになる。
ちょっとした気の持ちようで変えていける部分は、少しでも改善していってもらいたい。逆に、そうした点もいつまでも変化がないということになると、カゼミロの価値にチームも、マドリディスタも気づいてしまったこの先、彼が底で存在感を出すことはかなり難しくなってしまうだろう。
■大量得点でお休み
守備に問題を抱えつつも、攻め合いとなればチャンスも多く、マドリーは不安なところを隠せるだけの攻撃の迫力を見せていた。
29分に右サイドのハメスから左足で精度の高いクロス。抜け出したベンゼマが合わせて先制。40分にはイスコがベンゼマのパスに抜け出して追加点。控えに甘んじることの多くなっている2人が攻撃面で結果を出した。彼らが攻撃で貢献できることは重要。点が欲しい時の交代策として期待が持てる。
50分にベイルが裏に抜けて冷静に左足でゴールを決め、3-0とすると、主力を下げて温存することに。カルバハル、ベイル、ベンゼマが休みをもらった。
途中出場のプレーヤーの運動量はまずまずだったものの、チームとしては省エネモードに。前半よりもスペースが空くようになり、守備がおざなりとなって出入りの激しい試合となった。
ヘタフェは84分にサラビアがゴール。ペペの足に当たってはいたが素晴らしいミドルが決まった。残留に向けて1点でも欲しい状況のヘタフェ。試合の行方は決まっていても少しでも結果をというところで、雰囲気を盛り上げるゴールとなった。
マドリーのカンテラで至宝といわれたサラビアももう23歳。ヘタフェでポジションを得て頑張っているが、万が一降格となった時はどうなるだろうか。
ヘタフェの頑張りもむなしく、マドリーはその後2得点。88分にハメスが決めると、最後は抜け出したヘセがロナウドにプレゼントパス。問題なく決めて5-1とした。攻撃に出ており覚悟の上だっただろうが、マドリーも容赦なく得点。
ハメスは久々のフル出場で1ゴール1アシストと結果を出した。サイドでのプレーはやはりバリエーションに乏しく、ベイル、ルーカス・バスケスがいる状況で継続的な出場機会を得ることはなかなか困難といわざるを得ないが、少なくとも良いオプションとなりうることは示してくれた。シーズンの最後に向けて、イスコとともに攻撃面で違いを見せて欲しい。
モドリッチ、カゼミロを休ませた上、代え難いカルバハルをはじめベイル、ベンゼマも下げつつ大勝という理想的な試合に。ミッドウィークにもリーガの試合があるので、このように試合を消化できて良かった。
■まさかの展開
バルセロナがまさかの3連敗。バルセロナとアトレティコは勝ち点で並び、3位マドリーも勝ち点差1で追うこととなった。2か月ほど前にこんな展開を誰が予想し得ただろうか。
マドリーは上位2クラブともに直接対決成績で負けており、勝ち点で上回るしか逆転の可能性はない。全勝して望みをかけるしかないと考えた方がいいだろう。
ただ、ミッドウィークにビジャレアル、その後もホームながらバレンシア、そして最終節にリアソールでのデポルティーボ戦と、残り試合はかなり過酷。可能性は出てきたものの、数字以上に苦しい印象だ。
他力本願な状況に変わりはないが、幸運を掴めるよう最後の試練を乗り越えてほしい。急にCLと二兎を追うこととなって、日程は苦しいのは事実。
うまいマネージメントともに勢いをもって、うまくシーズンの最後まで走りきってほしい。