楽勝のはずが、最終的には薄氷の勝利に。油断大敵である。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ、クロース;ルーカス・バスケス、ハメス・ロドリゲス、ビニシウス
FW:ベンゼマ
60分:カゼミロ→アザール、セルヒオ・ラモス→ミリタン、83分:ベンゼマ→ヨビッチ
アザールが招集されたが、大事を取った形でバスケスが先発。モドリッチ不在、バルベルデもコンディション不良で招集されなかったため、4-2-3-1の形。
■レバンテの先発メンバー
GK:アイトール・フェルナンデス
DF:ミラモン、ベソ、ドゥアルテ、ポスティゴ、クレルク
MF:カンパーニャ、ブクセビッチ;ロキーナ、モラレス
FW:マジョラル
56分:ブクセビッチ→バルディ、68分:ドゥアルテ→メレーロ、ロキーナ→マルティ
順調なスタートを切っているレバンテ。さしあたっての目標は残留だろうが、勢いはある。
■難しい予想も、個々の質で打開
マドリーの布陣は、ベンゼマが決めることを目指す形。
ビニシウスとバスケスの両サイドは、サイドバックのサポートを得てクロスを上げつつ、機を見て勝負する役割。ただ、出場停止のベイル、ベンチのアザールに比べると迫力不足は明らかで、ディフェンスが受けるプレッシャーには差があっただろうと思われる。
その分、中央のハメスの存在がこれまでとの違い。
モチベーションが高いように見受けられ、低い位置の組み立てへの参加、ベンゼマ周辺でのサポートと、色々な場面に登場していた。守備参加も問題ないレベルで、サイド偏重だったこれまでの路線を変えられる可能性のある存在に。
レバンテは5バック。
とはいえ5-4-1の数字から想像されるような守備的な形ではなかった。中盤でのプレッシャーも放棄しておらず、攻撃面でも放り込みで少ないチャンスにかけるようなスタイルでなく繋ぐことを意図した内容を整えていた。
5人の最終ラインを揺さぶるのは難しく、中央はベンゼマ1人に対して3枚のセンターバック。クロスを多用する攻撃では苦労することが予想された。
が、マドリーはそれをプレーの質でねじ伏せた。
25分、バスケスの内側のスペースでボールを持ったカルバハルが左足でクロス。これをベンゼマがディフェンダーの背後に入って頭で合わせ、先制に成功。
バスケスが外側を走り、カルバハルが中に入るのは、このコンビではよく見られるプレー。縦に行くのではなく、マーカーから離れる方向に動いて左足でクロスをあげたカルバハルの判断とボールの質が秀逸だった。
ベンゼマもストライカーらしい背後を取る動き。ボールは見づらかっただろうが、よく合わせて枠に飛ばした。
先制してからは無理なくカウンターに移行。
攻撃時は両サイドが出てきて全体で押し上げてくるレバンテを相手に、カウンターは有効な手段となった。
こういう変化を自分たちから起こせるのが先制した側の強み。ハメスがいるとはいえ、ボールを持たされる時間が長くなると閉塞感が出てくる恐れが強い現状にあっては、リードすることは特に重要だ。
31分にはベンゼマへのロングボールから追加点。
競り合いからこぼれたボールをハメスが拾い、シュートエリアでベンゼマに返すパス。これを丁寧に蹴り込んで、アイトール・フェルナンデスは先制の場面同様チャンスなし。
ベンゼマのポストプレーと、落ちたボールを拾うハメスの距離感の良さで、一気に相手を崩した。
40分も速攻。右サイドでスペースを得たビニシウスがドリブルで持ち込んで、ゴール前に走り込んでいたカゼミロが決めて3-0。
こういう場面でゴール前に出てくるのがカゼミロらしい。守備を考えると、彼以外にこういう攻撃参加ができるプレーヤーが欲しいところだが、この場面ではきっちり決め切って、問題とはならずに済んだ。
先制して以降は速い攻めでレバンテの守備が整わないところをつくことができ、理想的な展開で前半を終えた。
■リードを捨てた後半
3点差がある後半は、アザールのデビューはもちろん、ヨビッチ、ロドリゴなどの新戦力も長い時間を試すいい機会になるはずだった。
ところが、49分にマジョラルに決められたところから流れが変わる。
前半は失点せず、落ち着いて試合に入って大きなリードを得たのに、後半の最初に緩む悪癖が出てしまった。
得点によって、これまでのプランを頑張ろうとレバンテはモチベーションが上がり、3点差で終わらせていたはずの試合が生き返ることに。
75分にはメレーロに決められ、楽勝ムードはどこへやら。1点を争う試合となって、余裕を持った後半とはならなくなった。
3点差となったところで、相手の継戦意思を折れなかったのは、昨シーズンからの多くの失態によるものだろう。こういう試合を早めに閉じられるかどうかは、コンディションの維持にもかかわってくる点で、もったいない。
後半はマドリーにもチャンスがなかったわけではなく、5-2くらいのスコアにすることもできた内容だった。ダメ押しがあればまた違った試合にすることもできただろうに、攻守とも前半とは全く違う質になってしまった。
60分のセルヒオ・ラモスの交代は予定外。その後の報道によれば違和感を訴えて大事を取ってのもので、期せずしてミリタンを出すことになったことも、状況の悪化につながった。最終ラインはこういうタイミングで変更したくはないもの。その後余計に神経を使うことになった。
アザールの登場も60分から。
もう少し早く見たかったが、スペースができ始めた時間帯の投入で、かえって良かったかもしれない。ボールを持ってのプレーのレベルの高さを見せてくれた。
左サイドからカットインしてのプレーはさすが。プレシーズンでのゴールのようにシュートもできるし、この試合のようにパスに切り替えることもできる。フィジカルコンディションはまだまだとも言われているが、それでこれだけできるのだから、今後への期待は高まる。
ビニシウスは彼から多くのことを学べそうだ。
終盤はさらに攻め合う展開になって、何とか同点にならずに済んだというところ。
モラレスがボールを持った時のレバンテのプレーヤーの信頼感は高く、ボールが来ると信じて動いていた。こういうプレーヤーがいるチームの攻撃は強い。
極端に守備的でもなく、バランスを保った組織があるので、継続できれば良いところまで行くのではないか。
後半だけ見れば、クルトワによって勝ち点3が守られたというような内容。
前半のリードを詰められて危ない試合になった。何とか引き分けを回避し、CLへ向かうことができた。
■最後に
アザール、ベイルがいなかった試合で3点取れた点は評価したい。
ハメスは放出対象だったが、この試合では出色の内容。守備参加しつつ攻撃の中心で存在感を示した。このレベルが維持できれば、中盤の「新戦力」として十分計算できる。ベイル同様、継続していけるかに注目したい。
苦しむビニシウスは1アシストしたものの、終盤のチャンスは逸してしまい、やはりと思ってしまう。現状ではアザールのリードはかなり大きい。
この試合とは逆に、途中からビニシウスを出して、スペースがある状況で彼の長所を生かしてあげるべきだろう。今のままでは、突破口がなかなか見えてこない。
CLの初戦はPSGとアウェイで対戦。互いに主力を多く欠くが、我慢のやりくりでしのげるか。
週末のリーガはセビージャで、これもアウェイ。厳しい連戦だ。