苦手なメスタージャでのバレンシア戦。首位を争う試合は劇的な結末となった。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、ミリタン、アラバ、ナチョ
26分:カルバハル→ルーカス・バスケス、67分:モドリッチ→カマビンガ、カゼミロ→ロドリゴ、78分:アザール→ヨビッチ、バルベルデ→イスコ
この試合はローテーションなし。アザールが先発に復帰した。
■バレンシアの先発メンバー
GK:ママダシュビリ
DF:コレイア、ガブリエウ・パウリスタ、オマール、フルキエ
MF:ソレール、バス、ギジャモン、ウーゴ・デューロ
FW:ゲデス、マクシ・ロペス
15分:ソレール→ムサー、23分:コレイア→ラト、79分:ゲデス→エウデル・コスタ、ウーゴ・デューロ→マルコス、マクシ・ロペス→ラチッチ
ここまで3勝1分で首位争いの一角となっている。4試合2失点の堅守が光る。
バラバラの守り
バレンシアの4-4-2に対し、マドリーも基本的にはアザールを前に残しての4-4-2。中盤はバルベルデ、モドリッチ、カゼミロ、ビニシウスの並びとなる。
このままなら組み合うことになるのだが、バレンシアが後方でボールを持った時、ビニシウスが前に出て追うことがしばしばあった。
その場合、左サイドの広いエリアをモドリッチがカバーすることになる。
4-3ではサイドが手薄になるのが当然で、しかも中盤は本来横並びだから右サイドに偏っている状態だ。
組織的に追うわけではないマドリーのプレスをかわしてビニシウスの裏を使う形で、バレンシアは前半を優位に進めた。
一方のマドリーは、モドリッチが左ラテラルのナチョの後ろに入る形で組み立て。
ただ、守備のバランスが悪いので思うようなポジショニングにならないことがしばしば。
カゼミロが低い位置でボールを持たざるを得ない形になると、バレンシアは積極的に出てきてボールを狙っていた。
やっぱりおかしいカゼミロ
そのカゼミロ、状態が悪いということを最近何度か書いているけれども、この試合も変わらずぱっとしなかった。
セルタ戦のような致命的なパスミスはないが、リズムが悪く、奪いどころとして狙われるのは納得。
守備でも相手に一歩先んじられる場面が目立ち、クリーンに奪えていたのはむしろバルベルデの方だった。
得意なのは一人で底に入る4-1-2-3の方かと思うが、フラットな4-4-2はジダン期にも経験しており、形が理由とは考えづらい。
代表期間後から不安定さが目立っているので、単純に考えればコンディションが理由ということになるのだろう。
マドリディスタとして彼に求めるレベルが高いのは自覚しつつ、現状のままであれば早めに休みをあげた方がいいのではないかと思う。
ビニシウス、状態が良いからこそ
前半、前線の3枚が帰ってきていないタイミングで、モドリッチが前線を向いて両手を挙げて訴えている場面があった。
想像でしかないが、前から追うプレーは想定されていなかったのではないだろうか。
チームとして想定されたプレーならある程度後ろがついていくものだが、それがなく、ビニシウスの裏のスペースが空いていたこともその傍証となるだろう。
しかも、守備のズレが攻撃のスタートにも影響を及ぼし、カゼミロが狙われていた状況である。
チームとして意思統一されていないプレーをするよりも、無理せず下がってロングカウンターを狙うことで我慢すべきだった。
ビニシウスは状態が良いので、動けるのだろうし追いかけたくなる気持ちはわかる。
それに彼は他のエストレーモに比べればきちんと戻ってくれるから、なんとなく追ってアリバイを作っているとも思わない。
だが、彼の動きに組織がついていかないのなら、疲れるばかりで意味は薄くなる。
エネルギーを使うべきところで使ってほしいところだ。
個人ではなく組織の問題
ライン間で受けるのがうまかったゲデスを起点にしての速攻狙いと、遅くなったらサイド攻撃とを使い分けたバレンシア。
ソレールが失意の負傷交代となって質はどうなるかと思ったが、代わったムサーがなかなかのもの。
速さがあったので、それを見せておいての緩急でかわしていくプレーで、ナチョと互角に戦っていた。
マドリーも前半のうちにカルバハルが負傷交代。
バスケスが入って事なきをえた、かと思ったが、バレンシアのサイド攻撃からのクロスに中途半端な対応。
当たったボールがウーゴ・デューロに渡り、素晴らしいボレーを決められてしまった。
えてしてこういう対応をしたボールは失点に繋がるもの。
競りに行ったはずが微妙にかわしたようになった「珍プレー」のような見た目になってしまったこともあり、彼のミスと集約されてしまうのも仕方ない。
しかしながら、クロスがあがった時点でファーは数的不利になっていた。
バスケスが普通に競り負けていても、同じような形になっていたと考えられる状況で、前半から続いていたアンバランスさが出た場面と捉えられる。
組織として改善する必要がある守備の問題と考えるべきだろう。
下がったバレンシアに交代がずばり
追うマドリーはモドリッチ、カゼミロを下げてカマビンガとロドリゴを投入。
その後にはヨビッチ、イスコを入れた。
中盤はカマビンガとイスコで何とかしてもらい、ロドリゴとビニシウスのクロスにベンゼマとヨビッチが合わせようという形。
バレンシアは、このギャンブルに対し徐々に下がって対応するようになってしまった。
そうして、マドリーにもチャンスが出てくることに。
守り切るのは間違いではないが、カウンターで止めを刺せる可能性を見せていたので、ゲデスまで下げてしまったのは勿体ない。
80分過ぎからのバレンシアはカウンターの糸口も作れず、マドリーはリスクなく全員で敵陣に入っていくことができたのだった。
この時間帯のアラバのパスはさすがで、縦パスを安定して供給。バレンシアに息つく暇を与えない攻撃のリズムを作っていた。
そして、ロドリゴのクロスからベンゼマの落としをビニシウスが蹴りこみ同点。交代策の狙い通りの形だった。
2分後にはビニシウスのクロスをベンゼマが肩で押し込み、一気に逆転した。
1点目は、ベンゼマがキープできる余裕があり、大外のビニシウスもフリーになっていた。人はいてもエリア内でこれだけ自由を与えられると守備はきつい。
バレンシアとしては、その後仕切り直すことができず。マドリーは勢いそのままにプレーすることができ、どちらの形もエリア内で勝負できたことが大きかった。
最後に
最近お馴染みの後半からの盛り返しで逆転勝利。
アンチェロッティの修正、プレーヤーの適応は評価すべきだが、できれば最初から主導権を握ってプレーしてほしいところだ。
このあたりをアンチェロッティは、「この精神力で守備を改善する」と的確に表現しており、課題として認識していることがよくわかる。
そろそろローテーションが考えられるタイミング。
今夜のマジョルカ戦は普段とは違うメンバーになる可能性が高い。控え組の意欲に期待してみてみよう。