レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

リーガ・エスパニョーラ第7節 vバルセロナ

無観客のカンプノウ。静かな静かな敵地で、ジダンのチームは窮地を脱した。

 

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 撃ち合いになるかと思いきや、一転ゆっくりした展開に。

互いに守りを意識した試合になったことで、メリットを得たのはどちらだったか。

今回のメニューはこちら。

 

 

 

 

■マドリーの先発メンバー

GK:クルトワ

DF:ナチョ、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ

MF:カゼミロ;バルベルデ、クロース

FW:アセンシオ、ベンゼマ、ビニシウス

 

43分:ナチョ→ルーカス・バスケス、69分:バルベルデモドリッチ、81分:アセンシオ→ロドリゴ

 

バルベルデが先発。

ナチョとアセンシオでは右サイドの活路が見いだせないので、かき回せる人材を置きたいという意図だろう。

アセンシオの位置に置く選択肢もあるにはあるが、そうなると中盤にモドリッチが入ることになり、交代策がなくなる。現状ではこれが正解だと考える。

 

バルセロナの先発メンバー

GK:ネト

DF:デスト、ピケ、ラングレ、アルバ

MF:ブスケツ、デヨング;ペドリ、メッシ、コウチーニョ

FW:ファティ

 

81分:ファティ→グリースマン、ペドリ→トリンカオ、ブスケツデンベレ、87分:アルバ→ブライスウェイト

 

サイドバックがセルジ・ロベルトではなくデスト。その前にペドリを置いた。

最前線にファティで、メッシはその後ろ。守備時はメッシが前残りする4-4-2の形。

 

サイドの2対2は死守したい

バルセロナの右サイド、デストとペドリの意図は何だろうか。

 

最も考えられるのは、スピードへの対応だ。

対面するビニシウスには昨シーズンやられている。同じように剥がされることを避けるための人選ではなかろうか。

もちろんグリースマンも守備をさぼらない方だが、攻撃面で結果を残せていない。功を焦って守備を疎かにするとクーマンが考えてもおかしくはない。

邪推すれば、若いプレーヤーの方が規律正しく走らせられるだろうという考えもあったかもしれない。

 

マドリーもサイドの考え方は同様。

守備時にアセンシオ、ビニシウスがブロックに入って4-1-4-1になる規律は最低限守らなければならない。

互いに、サイドでの2対2を維持するところからのスタート。

 

マドリーにとって面倒だったのは、ファティの裏狙いへの対応。

ラインを下げられるのでプレスは弱め。中盤より前で強く出て取りに行くのではなく、コースの限定を主眼としていた。

 

スピードある1トップがいるバルセロナとは久しぶりの対戦で、慣れるのに時間がかかったように思う。

これまでなら、近い位置にいるラモスやバランがポジションを離れて、メッシを包囲してしまうこともできた。近年はそれを避けるためにメッシが低い位置に下りることが多く、ゴールに直結するプレーエリアから遠ざけることができていたのだった。

 

ファティがトップにいることで、彼のスピードをそのまま生かすのはもちろんだが、彼がラインを押し下げることで、メッシへのプレッシャーが減る効果も生まれていた。

ラモス、バランが遠く、カゼミロとの1対1の局面にさえなれば互角以上となる。 そこからのワンツーで、前半は何度も危ない場面を作られることになった。

 

バルセロナはメッシが守備に関与しないので、4-4-1での守り。

供給役のラモス、クロースはファティとデヨングが見る。だが、1枚欠けた状態では、コース限定も万全とはいかない。

全く縦に入れられない状況ではなく、スイッチが入るパスは時折出すことができていた。

 

それぞれブレーキとなってしまったのは、カゼミロとブスケツ。パスがずれるだけでなく、危ないボールロストに繋がるプレーがあった。

カゼミロはある程度のパスミスは仕方ないものの、ブスケツは意外。彼が万全であればファティの後ろでスペースを享受していたメッシがより生きたはず。

マドリーとしては助かった。

 

警戒していたのにやられる

マドリーの先制点は、ナチョの縦パスをライン間で受けたベンゼマが前を向けた場面から。

ブスケツバルベルデを最後まで追わず、フリーで抜け出せた。ブスケツがさぼったともいうより、得意ではない後ろに走らせる守備を強いたと言うべき。

バルベルデをインテリオールに置いた効果が出たゴールだった。

 

バルセロナもすぐに同点。

メッシが低い位置からアルバの裏抜けを生かすパスを出し、最後はファティ。

こちらも防ぎたかった裏を使われるプレー。アルバの得意な形で、アセンシオは目を切らずについていかなければならなかった。

ナチョがコウチーニョを見るのでできるマッチアップにおいて、安易だった場面を的確に突かれた。

 

どちらも警戒していたところをやられ、以降はより慎重に。

積極的なプレスで穴ができたならまだ良い。しっかりスペースを埋めたいという考えがあっても緩んだところが失点につながっている。

ここから機能するか怪しいプレスに出ていくより、ブロックの形成をさぼらずにやる方に力を注いだ方が無難だという判断だ。

 

こうなるとビニシウスは生きない。メンディとの分担も相変わらずうまくなかった。

縦に行ける場面が一回でもあればバルセロナに与える影響があっただろうが、落ち着いて蓋をしたデストの勝ち。

右のアセンシオも可能性ある場面はほぼなし。サポートがない中で足元で受け続けても変化がつかない。ポジションを離れて浮遊してみる工夫は、攻撃面では良いにしても守備に大きな負担をかけることになるから、メリットとデメリットが釣り合わない。

攻撃面で良いところがなく、守備に奔走した分だけビニシウスの印象が良かったという程度の両サイドとなってしまった。

 

低い位置でのポゼッションはほぼプレッシャーなく、ゆっくり持ち上がってもリスクが少なく、スピードアップしない。失点以降サイドからの突破でスイッチを入れることも難しくなった。

よって、どちらも待ち構える相手をアタッキングサードでどう料理するか、という展開に。

 それぞれの判断は妥当とはいえ、リーガ最高峰の戦いというには面白みに欠ける試合を生み出すこととなったのだった。

 

バスケスについて

全体の話とは逸れるが、ナチョの負傷で出場することとなったバスケスの健闘は嬉しい誤算だったので、ここで触れておきたい。

 

もともと、役割を限定すればそれをこなせるキャラクターである。

味方と連携し右サイドのスペースを的確に埋めること、エストレーモの外側を走って時間を作ってあげることといった、シンプルなタスクをこなしてくれた。

個人能力は高くないが、周囲との関係性を図りながらプレー選択を間違えない特性を発揮して、危機的な陣容の右サイドを救ったと言えよう。

 

ここまでは使い方を間違えなければ期待できるバスケスのプレーなのだが、今節はその上で、良いクロスや守備がいくつかあったので、よりプラスに評価できる。

このプレーにより、右サイドバックが不在となると出番が回ってくるかもしれない。

ただ、今節のプレーを基準にすると元の木阿弥となってしまうので、無理な要求をせずにチームに組み込みたいところだ。

 

マドリーにチャンスのある試合に

攻め合いになると火力が弱いマドリーには不利だ。派手に勝つのは難しく、しぶとい試合運びで勝機をつかむ必要がある。

序盤の得点以降落ち着いた試合展開になったことが、どちらにとってより都合が良かったかというと、マドリーにとってであることは言うまでもない。

 

堅守の昨シーズンから一転、少なくとも先週の流れのままであれば、どんどんスピードを上げて仕掛けられると受け止めきれないのではないかと思われた。ビハインドになってしまうと、逆転するイメージはなかなか沸かない。

そうならず、まったりとした試合になったことで、少ないチャンスを生かしてリードし逃げ切る、「普段通り」のやり方を続けることができたのだった。

 

セットプレーからペナルティを得て勝ち越し、という得点も「普段通り」。

流れの中では難しくてもセットプレーがある、という定石通りのパターン。

困った時のラモスという意味でも、古典のようになじみ深いゴールだった。

 

リードするまでが大変な分、その後の試合の進め方と終わらせ方は熟練されている。

負傷したバルベルデモドリッチに代えることでペースを維持(バルベルデエストレーモにいたらモドリッチも先発していて、この交代で解決はできなかったところだった)し、やり方を変えずに試合を進める。

サイドでもロドリゴを使って走力を落とさずに、凌ぎきった。

 

これ以上信頼して使える戦力がいないという問題はあるにせよ、結果を得るための道筋を進むことができる形を改めて確認することができた。

 

クーマンの自滅

一方で、前線に人を多く置いたクーマンの選択は謎。

高さがあって放り込みならわかるが、そうではないならスペースを消し合うデメリットが大きい。

 

これまでも、そして今節前半にも見られたように、メッシが低い位置から味方に当てて出ていくプレーが一番怖い。

ワンツーがあればスルーパスもある、ドリブルもある、と選択肢が多い状態でメッシにプレーされると、周囲も生きてくるのだ。

 

上で述べたように、ファティの1トップは彼自身の速さも生きるし、メッシが2列目で時間と選択肢を得るという効果もあった。

メッシが常に主役ではないにせよ、前を向いて勝負する場面を作るだけですべてが変わるのだから、大きなメリットがある形だった。

 

前線に人を多く置くと、メッシがそのように出ていくスペースを消してしまう。

あれだけ人を並べて、一番危険だったのがアディショナルタイムのメッシの仕掛けだった点を見ても、この交代策のまずさはよく理解できる。

こういう交代策ではなく、2列目が生きる整理を目指し、ピャニッチやセルジ・ロベルトを使った方がマドリーにとっては怖かった。

 

最後に

最後はビニシウスの抜け出しのこぼれ球から、ロドリゴ。パスを受けたモドリッチが落ち着いてネトをかわしてゴールを決めて勝負あり。

 

最初はどんな試合になるかと思ったが、その後試合の勢いを失わせることができ、マドリーにチャンスが回ってきた。

試合の進め方という点で少しマドリーが上回り、勝機をものにできたといった印象だ。

 

リーグ戦とはいえ、普段とは違う試合。ここで勝ち切れた意義は非常に大きい。

昨シーズンはガラタサライ戦で勝ってから流れが変わった。

この試合が、そうした分岐点となることを願っている。