レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

CL決勝トーナメント準決勝第2戦 vチェルシー

力負け。

ここまでやり繰りしながらよくやってきたが、今シーズンのCLの物語は準決勝で終わりとなった。

 

色々ポイントはあろうが、今回はこんな中身で。

 

 

■マドリーの先発メンバー

GK:クルトワ

DF:ビニシウス、ミリタン、セルヒオ・ラモス、ナチョ、メンディ

MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース

FW:ベンゼマアザール

 

63分:メンディ→バルベルデ、ビニシウス→アセンシオ、76分:カゼミロ→ロドリゴ、89分:アザール→マリアーノ

 

ビニシウスがウイングバックに入り、3-5-2の形に。アザールは前線で先発。

 

チェルシーの先発メンバー

GK:メンディ

DF:アスピリクエタ、クリステンセン、チアゴ・シウバ、リュディガー、チルウェル

MF:ジョルジーニョ、カンテ;ハフェルツ、マウント

FW:ベルナー

 

67分:ベルナー→プリシッチ、88分:アスピリクエタ→ジェームス、89分:マウント→ジイェフ、ハフェルツ→ジルー

 

第1戦との違いはプリシッチではなくハフェルツであったこと。

マドリーとは違い、固まったメンバーで臨んだ。

 

3-5-2の理由を考える

3バックの形は、第1戦でチェルシーの前からの守備によりうまくいかなかった。

にもかかわらず、同じ形で臨んだ理由を考えてみたい。

 

アザールをサイドではなく、ゴールに直結するプレーができる中央で使いたいという意図もあっただろう。

だが、それだけの理由なら、これほどいじらなくても済む4-4-2とし、ベンゼマとの2トップとすれば良いことになる。

その他に3バックにしたい積極的な理由があったと考えるのが自然だ。

 

ポイントはビニシウスのウイングバック起用にあると私は考える。

本職のオドリオソラではなくビニシウスを敢えて使ったのは、サイドには独力で何とかできるプレーヤーを置いて、攻撃面で生かしたいという意図だ。

両サイドの攻撃は復帰してきたメンディとビニシウスが一手に引き受ける、少なくとも縦に出ていくプレーはしてほしいと考えての配置ではなかろうか。

4-1-2-3でもビニシウスとメンディの起用は可能だが、これだとアザールエストレーモの配置になってしまうので、アザールを中央で使うアイデアと両立しなくなってしまう。

 

さらに、質的な優位が最も期待できる中盤の3人、カゼミロ、クロース、モドリッチは使いたいという考えもある。

週末にクロースとモドリッチを完全休養させたのだから、この試合で3人を揃えたい意図が早い段階からあったのは明らかだ。

 

これらのことをまとめると、次の3点になる。

 

  1. アザールをゴールに直結する中央で使いたい。
  2. サイドはビニシウスとメンディの推進、突破に期待する。
  3. 中盤の3人衆は全員使いたい。

 

この3点をすべて実現する形として、3-5-2を選んだと考えられる。

 

攻撃的意図も組み立てで頓挫

実際の運用としては、3バックが広がり、ナチョとミリタンがサイドバックのような位置取りとなって、ウイングバックを中盤に押し出していた。

薄くなる最終ラインには、中盤の面々が下りてきて組み立ての枚数を確保する格好であった。

 

3バックの距離が遠くなるので、守備を考えると怖い。

システム選択の理由を考えても守備面のケアのためとは考えにくく、あくまで攻撃を意図した形と言えるだろう。

 

モドリッチを右サイドに置いたことにより中盤の力が低下していたことと、チェルシーのプレスが徹底していたことから、第1戦では組み立てに苦労した。

この試合ではモドリッチをインテリオールに戻した。

クロースとモドリッチが低い位置で関われば、組み立てが改善するかと思われたが、そうはならなかった。

 

特に右サイドが苦しく、ビニシウスはもちろんミリタンも組み立てのプレーができておらず、すぐに見抜かれてチェルシーのプレスに狙われることになった。

ワンタッチで剥がすプレーができず、展開するのに必要な僅かな時間的余裕を作れなかったのである。

 

リバプール戦でバスケスらが見せていたような、寄せてきた相手をかわして時間を作りサイドチェンジするプレーはほとんどなく、サイドの狭くなったスペースでやりきるしかなかった。

これでプレスを回避してでていく確率を高めるのは難しい。

 

また、クロースとモドリッチではなく、カゼミロが低い位置に顔を出すことが多いのが気になった。

 

以下のヒートマップを比べると、この試合ではうまくいったリバプール戦に比べ、赤い円のあたりの色が濃い。

中央付近の低い位置でのカゼミロの関与が多かったことが伺える。

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カゼミロのリバプールとの第1戦でのヒートマップ

 

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カゼミロのチェルシーとの第2戦でのヒートマップ



さらに同じ試合のクロースのヒートマップも比べてみる。

 リバプール戦では、最終ラインに下りていた様子が赤い円で囲んだ付近に見て取れる。

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クロースのリバプールとの第1戦でのヒートマップ

ところが、チェルシー戦のヒートマップでは黄色の円付近での関与が見られない。

その前の位置の色は濃く、より前での関与が多かった様子がわかるだろう。

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クロースのチェルシーとの第2戦でのヒートマップ


本来は、クロースとモドリッチが組み立てを支え、カゼミロはあまり関与せずに、必要に応じて出ていき、ターゲットになってもらうべきである。

カゼミロが出ていくのは、直近のオサスナ戦でも見られた形だが、得点が欲しい試合なのだから尚更だ。

 

この試合では3バックの間にカゼミロが下りて、その前でクロースとモドリッチがプレーしていた。

カゼミロのところでスピードアップするのは難しく、サイドに預ける流れとなることが多くなってしまう。

こうしたことから、クロースとモドリッチが関与する前に、サイドに追いやられてつぶされてしまう流れがしばしば見られた。

 

モドリッチが引きつけて、クロースやセルヒオ・ラモスによるサイドチェンジで展開するおなじみの形が目立たず、同サイドでのプレーが続いたことで、チェルシーは狭い局面で寄せやすくなったのだった。

 

ビニシウスは被害者か?

こうして見てみると、アザールの出来を云々するよりずっと手前の組み立てのところで、ジダンのプランが失敗していたことがわかる。

それでも何とかしてくれるのがクラックと思わないでもないが、彼が万全であったとしても、数字に残る結果を出すことを期待するのはかなり難しい状況であったことは確かである。

この内容で彼を責めるのはかわいそうだ。

 

「マドリーでの」功績を考え、ビニシウスを2トップの一角に置くべきだったとの考えも理解はできる。

とはいえ、復帰してきたアザールを使わない理屈もないのだ。

マドリディスタの彼への期待感は地に落ちているが、それでも現チームの前線において彼より実績と経験があるのはベンゼマだけなのである。

復帰後少しずつ出場時間を増やして慣れさせてきた経過があるし、これまで何度もあった離脱の間、ビニシウスらが明確に序列を覆す数字を残していたかというと、残念ながらそうではない。

ビニシウスによるプレーの成果はあったのは確かだが、得点やアシストという目に見える数字を比べた時、アザールを落とすほどの説得力を持たせることはできなかったのだ。

 

復帰できるならまず期待する。

今のチームにおいて、アザールがそういう格のプレーヤーであることは変わらなかったということだ。

 

もちろん、ほとんど何もしてこなかったアザールに押し出されて、ビニシウスがポジションチェンジを余儀なくされたというのは一つの見方ではある。

だが逆に考えれば、ビニシウスもまた、「不慣れなポジションであっても」ピッチに置きたかったプレーヤーだということでもある。

 

順当に当てはめれば、サイドバックとしてプレーできるオドリオソラやナチョであるべきポジションだが、ジダンは上述の通り、攻撃的にプレーする形を目指したのだろう。

そのために必要なピースとして、難しいかもしれないがビニシウスの可能性に賭けて使ったのだから、当然相応の評価が与えられていると考えるのが自然ではないだろうか。

アザールに比べてないがしろにされているということだけでは、彼も起用されたことを説明できない。

 

これまで乗り切ってきたプレーヤーとシステムでやって負けた方が納得も行くという気持ちについては、私も同じように感じる。そういう思い入れは、皆あるものだろう。

だけれども、点が必要な試合で、守備が強いチェルシーに対し、攻撃的にプレーする必要があると判断してのジダンの選択もまた理解できる。

 

重要なプレーヤーを負傷で欠いた中で選択し、失敗した結果に対する責任があり、批判があるのは当然だ。

ただ、それなりの文脈に基づいて選んだ選択肢であろうことは、踏まえておくべきであろうと考える。

 

勝敗に納得できる強度の差

チェルシーの守備から攻撃への切り替えを牽引したカンテのMOMは納得。

 

カンテがボールに絡んでいく時、彼が剥がされる恐れを持たずに周囲が連携していく点に、信頼が感じられる。

単独で確実にボールを取れるという確信まではないにしても、剥がされてずれてしまう心配がないので連動していけるという良い例。

彼を中心とした守備は最後まで崩れず、マドリーは糸口を見出すことができなかった。

 

リバプール戦ではマドリーの技術の高さが光ったが、それはパスコースや時間、空間の余裕を持つために細かく動き続けるランニングがあってこそだと痛感する。

この試合では、足元のパスばかり。チェルシーのプレーヤーが前へどんどん出てくるエネルギーがあったのに対し、マドリーのプレーヤーはみな疲れ切っていたように見えた。

 

普段よりテンションを高くして臨んだはずの大きな試合であっても、このプレー内容だったという事実は重い。

交代で入ったバルベルデはさすがに馬力の良さを生かして縦にプレーしてくれていたが、他に局面での勝負に勝てる見込みのあるプレーヤーは少なく、交代で大きく改善することは期待できなかっただろう。

 

時間が経つにつれて、マドリーのプレー強度はどんどん落ちていき、後半はチャンスらしいチャンスも作れなかった。

チェルシーの出足の良さと比較すると、このレベルでのプレー強度維持は限界だったのは明白。

 

今シーズンのチーム状況で良くここまでやってきたが、最後の階段を上るまでの余力は残っていなかった。

 

最後に

この戦力、チーム状況でのCLベスト4は十分な成果だ。

負けたのは残念だが、この状況であと一歩のところまで来られるとは思っていなかったので、前向きに評価したい。

 

残すはリーガ4試合。タイトルのためにはすべて落とせない。

 

今週末はセビージャとの試合だが、体力的なコンディションの劇的な改善は厳しいだろう。精神的な部分で落ち込まず、何とか維持できるか。