レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

波に乗れないマドリー、不調の原因はフォワードにあらず

先週ミッドウィークのコパ、フエンラブラーダ戦はベルナベウで2-2、週末のアウェイでのアスレティック戦はスコアレスのドローとなった。

コパは勝ち抜けているし、控え中心、カスティージャのプレーヤーも先発させての結果なので、許容すべき範囲とも言えるが、2部Bのクラブを相手にベルナベウでまともな試合をしてしまうのは残念だった。

アスレティック戦もアウェイでの結果と考えれば悪くはないが、バルセロナが勝ち点を落としたタイミングでもあり、できれば勝っておきたかった試合。

 

時間が取れず、間が空いてしまったので、それぞれの試合のレビューはお休みさせていただき、どうにもうまくいかない原因について、少しまとめる形で書きたいと思う。

サイドバックは帰ってきたのに

マラガ戦の記事で触れたように、今のマドリーの攻撃は両サイドバックでその質を保っているといって良い。

復調しつつあるマルセロ、心膜炎から無事復帰してきたカルバハルが揃って以降、両サイドからの攻撃に迫力が戻りつつあるのは確かだ。マラガ戦は3-2と苦戦したが、両サイドが活性化しつつあることは見て取れたし、その前のアポエル戦は大勝して、雰囲気は良かった。

サイドバックがその威力を発揮すれば、その後ろや横につく形で中盤のプレーヤーも自由を得やすくなる。彼らのカムバックにより、攻撃面で良い流れを取り戻すきっかけを掴むかに思われた。

 

にもかかわらず、アスレティック戦はスコアレス。アスレティックのディフェンスがいつものように厳しかったことを差し引いても、攻撃の機能不全は明らかだった。

マルセロとカルバハルがいながらのこの内容は、危機的と言う他ない。

得点に繋がらない攻撃に逆戻りしてしまったのはなぜなのだろうか。

 

■前線の衰えは主たる原因ではない

よく報じられているのは、ロナウドベンゼマの衰えという点だ。

負傷続きで招集もできないベイルはおくとして、前線のファーストチョイスである彼らがリーガで2点ずつしか取れていないのだから分かりやすいし、ここまでチームを支えてきた2人の凋落とセンセーショナルな取り扱いをするのは、部数を売りたいメディアらしい論調ではある。

 

しかし、私は彼らの衰えを主要因とする説には与しない。それは、次の2つの点による。

 

1つは、CLにおいてはロナウドが5試合出場で8点、ベンゼマは3試合出場で2点と悪くないペースで得点を重ねていること。

加齢による衰えが著しいならば、CLにおける得点ペースもリーガ同様降下しているはずで、ここまでの成績に説明がつかない。

年齢による衰えがないわけではないだろうが、徐々にプレーレベルが落ちていくと考えるのが自然だろう。

ロナウドについて言えば、昨シーズンまでシーズンあたり40点取っていたようなプレーヤーが、シーズンが明けた途端急激に衰えて何も出来なくなるということ自体にあまり現実味がない。

 

2つ目は、もともとベンゼマに得点を期待するチーム構成ではないこと。

ベンゼマが典型的な9番ではないのは、ずっと以前から指摘されてきたことで、彼の役割はいわば「最前線にいるトップ下」だ。ポストプレーやパスワークによってロナウドやベイルが気分良くシュートできるようにするのが彼の役割であり、得点の量産は求められていない。

だから、得点のペースが良くないことが即ち衰えを意味するわけではないし、そうした役割である彼について、チーム不調時には得点を指標として批判するという姿勢はフェアでもない。

 

これらのことから、今シーズンの不調の主たる原因を彼らに求めることは不当だと考えている。

 

■決定的な仕事が出来ないトップ下、役割の不透明化

では、どこに問題があるのか。私は中盤にこそ問題があると考える。

 

契約更新がされたこともあって、今シーズンはイスコが本格的に先発組に組み込まれた。以前からクラブではなかなか立場を確立できないながらも、代表では評価されるプレーをしていたイスコは、ようやくマドリーで確固たる地位を築いた。

 

しかし、これまでの試合の記事で何度か触れてきたように、4-3-1-2の1にイスコが入り、彼が攻撃の多くの部分に関与していく「イスコシステム」ともいうべき形は一向に機能していない。

それは、そうした使われ方をする以上、彼に求められるのはゴールに結びつく仕事で、その中でも最も大きなものはロナウドベンゼマにボールを届けることだが、彼がそうした決定的な仕事をできていないからだ。

 

ベストメンバーで言えばモドリッチ、クロース、カゼミロが下支えして、イスコがより高い位置、相手のラインの間でボールを受けて仕事をするべきところ、低い位置に下りてきてしまうことが多い。

相手のプレスをかわす技術は高いし、狭いところで相手をいなすプレーにスタジアムは沸くものの、それは彼に求めているものではない。

かつてエルゲラが、「ダブルタッチをするだけでスタジアムが拍手をするが、ゴールを決めないし、ボールを奪えない」とイスコを評したが、これはまさに今の彼にあてはまる言葉だ。

 

アセンシオも同様に悩んでいる。彼も良い時のようなライン間で受けて仕掛けていくプレーが減っているのが現状だ。

アセンシオはウイングや2トップの一角で起用されることが多く、イスコ以上にゴールに絡むことが期待されている。もちろんある程度の守備や中盤より後方の組み立てへの参加を完全に免除して良いわけではないが、中途半端にオールマイティになってほしいプレーヤーではないのだ。

相手にとって危険な位置で仕掛けられる存在になってほしいのに、彼もまた自らそういうことができるポジションから離れてしまっている。

 

であれば、攻撃の主力たる両サイドバックと絡むことでサイド攻撃を作る役割に徹すれば良いのに、そういう役割の限定がなされないのことで、かえって問題を増やしている。

アスレティック戦でも、イスコが左サイドから離れてあれもこれもやるようになって、攻撃の形がはっきりしなくなった。

昨シーズンのように、サイドからバリエーションの多いクロスでゴール前のシュートチャンスを作るようにすれば、単調ではあっても計算は立つ。にもかかわらず、自ら手数をかけた結果崩しきれもせず、ゴール前の場面を演出できなくなっているのが現状だ。

 

4-4-2でも4-1-2-3でも良いが、サイドバックの能力を生かしつつ攻撃的なプレーヤーもサイドで自由を得られる形にするべきだ。攻撃を完結させられないプレーヤーに全てを任せていてもシュートチャンスは増えないし、前線は宝の持ち腐れとなってしまう。

モドリッチ、クロース、カゼミロが支える中盤があるのだから、もう一枚は彼らに任せるべきは任せて、決定的な仕事をしなければならない。それができないなら、サイドバックを生かす役割に淡々と徹する形を取って、サイド攻撃を計算できるものにすべきだ。

 

■約束事が見えない中盤

 イスコやアセンシオだけでなく、その他の中盤のプレーヤーにも問題がある。

 

攻撃が停滞することもあって、高い位置に進出することが増えているが、ではアタッキングサードで誰がどういう形で絡んでくるのかというと、毎回よくわからない。

クロースが飛び出すこともあるし、モドリッチも顔を出し、カゼミロも出てきてくることがあるが、その連携がしっかりしているかというとそうではない。大雑把に言うとクロースが良く出てくる傾向があるようではあるが、毎試合様子が違う。

流動的ではなく、秩序がないと言った方が良い状態だ。

 

サイドを崩して、マイナスのクロスにモドリッチやクロースが合わせるとか、少し開いた位置から前線にボールを当ててワンツーで入っていくとか、得意のパターンがはっきりせず、毎回誰が何をするのかわからないし、攻撃が詰まってからの参加なのでディフェンスも人数をかけて応対をしやすい。

相手がケアしやすく、味方は都度都度動きを判断してカバーするということでは、メリットがなくなってしまう。

 

今のままでは、約束事がないので、出たところ勝負にならざるを得ない。

ポジションを固定するというよりも、彼らについても役割を明確化して、チームとして強みを生かせる攻撃を作ることに注力した方が良い。

 

■補強するなら・・・

こう考えると、前線に典型的な9番を置けば攻撃の停滞が解消されるということが的外れだということが理解できる。

現状では、いかに特別な得点能力を持つプレーヤーがいても、得点を劇的に増やすことは難しい。なぜなら彼らがその仕事をする機会がとても少ないからだ。

 

前線にいる個人の問題とすることは、補強によって解決するという判断に繋がるので、受け入れてしまいがちな結論である一方、中盤のプレーヤーの役割の整理や組み合わせといった問題となると、解決に時間がかかるし、現有戦力でやり繰りして解決策を見出して行くことになるので、シーズン中にそちらを考えるのはなかなか酷である。

クラブとしても、得点が少ないという現状の課題を解決するために手を打ったという「対応の実績」は必要なので、冬の市場に参入することで解決を図っていくことになるのだろう。

 

補強で得点が伸びるとしたら、契約したプレーヤーの得点能力によるというよりも、新たな組み合わせによって、現状停滞している攻撃が組織として活性化したことによってだと考えている。

だから、補強するのであれば、個人の得点能力の良し悪しというよりも、今のチームにない形を提供してくれるプレーヤーを選ぶべきだ。

 

例えば、4-3-1-2の1のところでイスコやアセンシオを超えてゴールを生み出せるプレーヤーといったことが考えられる。

また、噂のあるイカルディを想定するならば、彼を2トップにし、ベンゼマを9番の位置から解放して本格的にトップ下でプレーさせるといったこともあるだろう。

 

現在の攻撃の不調は単純な個人の能力不足、衰えに起因するものではない。だから、補強するのであれば、こうした大胆な並び替えによって、それを打破していかなければならない。