マドリーにとって狙える唯一のタイトルであるCLが再開。ジダンの今後、ひいては今のチームの今後もこの先の試合で決まってくる。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:ナチョ、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース;イスコ
68分:ベンゼマ→ベイル、79分:カゼミロ→ルーカス・バスケス、イスコ→アセンシオ
出場停止のカルバハルの代役は順当にナチョ。イスコが入って今シーズン前半戦の形に。
■PSGの先発メンバー
GK:アレオラ
DF:アウベス、マルキーニョス、キンペンベ、ユーリ
MF:ロセルソ;ベラッティ、ラビオ
66分:カバーニ→ムニエ、84分:ロセルソ→ドラクスラー
監督の去就がCLにかかっていそうなのはPSGも同様。
■粘るマドリー、PSGは1点止まり
10分くらいまではマドリーが猛烈なプレス。
ここで点を取れればそれに越したことはないが、そこまでうまくいかなくとも、ホームゲームで勢いをつけることができれば御の字。
組織だったプレスからのショートカウンターが得意なチームではないので、PSGが慌ててくれるだけでも十分といったところ。
15分くらいから試合が落ち着きだして、そこから互いのやりたいことが見えてきた。
マドリーはイスコが入った4-3-1-2。
ジダンは、一向に機能しないこの構成をこの大一番で採用した。発言によれば、イスコの存在によって中盤でコントロールする力を増すためとのことであった。
第1戦で無理に攻めに出るリスクを負うのは得策ではないから、ポゼッションさせられることもある程度受け入れつつ、無理しない展開にしていくなら、この選択は理解できる。
実際、この構成ではリーガでもボールを持たされて崩せない試合が続いていた。リーガでは得点を挙げる必要があるが、第2戦も見据えたCLなら、初戦のホームで得点は遠くともバタついた試合展開を避ける意味はあった。
対するPSGはトリデンテを生かして速い展開を志向。
カルバハルを欠くマドリー右サイドはネイマールとナチョのマッチアップだし、普通にしていればマルセロの裏も狙える。
モッタ、チアゴ・シウバがピッチにいないこともあり、アウェイでどっしり構えるよりは攻撃力を生かして得点してしまおうという意識もあったかもしれない。
マドリーのプレスが落ち着いた後、試合展開もずっと遅いペースになっていればマドリーの狙い通りだったが、プレス終了後の時間帯に自分たちがペースを握ることが出来ず、序盤のままのような速い展開が続いた。
その意味では、前半やりたい内容ができていたのはPSGの方だった。
33分にPSGが先制。マドリー左サイドをエムバペが突破し、中央へボールを供給。中央ではシュートに至れなかったものの、ネイマールがそらしたボールが走りこんだラビオのもとへこぼれ、冷静にコースを突くシュートを決めた。
速い崩しで左サイドを破られ、中央は凌いだが戻りが間に合わず、ラビオを完全にフリーでエリアに進入させるという、PSGにとっては狙い通りのシーンだった。
ここから更に、という雰囲気もあったPSGだが、マドリーは1点で凌いだ。
アタッキングサードでのネイマールのドリブルも、何人もカバーに入り体を投げ出してコースを切っていた。
リーガでは高い位置に出て行ってしまい効果的なポジションにいないカゼミロが、この試合では底に残って献身的に守備のプレーを続け、チームを支えた。彼の「本職」はやはりこの守り。最後のところをやらせず、ボールに絡んでいくプレーが素晴らしかった。
もちろん最終ラインも逼塞させられつつ奮闘。厳しい時間帯を1失点で乗り切った。
44分、ベンゼマの惜しいシュートで得たコーナーをショートではじめ、クロースがエリアに進入。ロセルソが後ろから手をかけ、ペナルティを得た。
ショートコーナーで混乱を誘発させ、仕掛けたところでペナルティをもらうというのは、リーガでもなかなかできなかったプレー。ここぞという試合で、変化が見事にはまった。
ロナウドが得意のコースに蹴り込み同点。
PSGとしてみれば、なぜこの内容で同点なのか、と思いたくなるような前半。
マドリーは必ずしも思い通りとはならなかったが、リーガとはさすがに違う。中盤より前の守備意識が高く、辛い時間帯に2点目を許さず、流れを引き戻した。
■交代策で優勢に
後半の交代策については、多く言及されているところだが、改めてその点についておさらい。
PSGは66分にカバーニに代えてムニエをいれ、ネイマールとエムバペのトップとし、マドリーが掴まえられていなかったアウベスを中盤に、ムニエをサイドバックに置いた。
対するマドリーは68分、ベンゼマに代えてベイル。
足の速い2トップとして、PSGが出てきたら裏を狙える用意を整えた。
この時に、PSGがマドリーの2トップを気にせず高い位置を取ってサイドを突き続けていたら、この後の展開はなかったかもしれない。
エムバペとアウベスから、アウベスとムニエに代わり、前半のように2人の関係で変化を付けられなくなっていたこともあるし、ベイルの投入によって、それ以前と同じように無頓着に上がることができなくなったこともあるだろう。
いずれにせよ、この交代によって、PSGがサイドを素早く攻略しようとし、実際ある程度成功を収めていたところから、守勢に回る傾向が強くなった。
それは79分の交代で決定的になった。
バスケスとアセンシオを投入し、4-4-2としたマドリーは、フレッシュな2人が両サイドで動き回る。
リーガでの変化と同様、サイドに2人ずつの配置となって、特に左サイドのマルセロが息を吹き返し、完全にPSGを押し込んでサイドから崩しにかかれるようになった。
カゼミロを使い、守備で我慢し続けた60分までとはまるで違う形に変更したマドリーに対し、PSGの対応は遅れた。
83分、ベイルからのスルーパスでアセンシオが抜け出し、中央のロナウドへ。一度は防がれたが、モドリッチがフォローアップしてボールを奪い返し、再度左のアセンシオへ展開。
彼からのクロスがディフェンスに当たり、再度はロナウドが膝で押し込んで勝ち越しに成功した。
今度はマドリーがサイドからの決定機をものに。前半PSGが先制した場面をやり返したようなサイドからの速攻、中盤の押し上げだった。
PSGは84分にロセルソをドラクスラーに代えるが、時既に遅し。また、サイドの支配権がマドリーに移ってやられていながら、中央に手当てをした判断にも疑問。
構成が最近上手く行っている4-4-2となり、サイドは運動量でも上回っていたので、マドリーは得意の形を作り続けることが出来た。
86分、左サイドのパス交換から、中央に入っていったマルセロにアセンシオがクロス。難しい高さのボールをダイレクトで合わせ、3点目。
足が止まった守備に対し、ボールを動かしながらマルセロがするする上がっていってしとめる形はバレンシア戦でも見られたお馴染みのものだ。こういうプレーができるくらいまで、最後はマドリーがサイドを抑えたということ。
アウェイゴールは与えたものの、3-1で初戦に勝利した。
■最後に
ジダンの後半の交代が見事にはまった。
先発の選択に不満がないではないが、何とか同点で前半を乗り切ったことで、後半の変形に望みが見えた形となった。
PSGの最初の交代は、消極的だったとまでは言わないが、その後のマドリーの変化に対応できるものではなかったし、その後の手も打てず、後手に回った。
カゼミロが無謀なプレーをしないことや、守備の最後のところの頑張りが違うことは、CLならでは。
リーガが終わってしまっているので、ほど良い緊張感の持続が出来ないのが難点だが、こういう内容がトーナメントで続けられれば、今シーズンももうしばらく楽しめそうだ。
第2戦は3月6日に開催される。リードを意識せず、アウェイゴールを取り返すくらいの狙いで臨んでもらいたい。