主力に負傷者続出、コンディションが上がらないメンバーもいる中、難しい試合を勝ちきった。ソラーリはメンバー、システムを変更する賭けに勝った形。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、バラン、ナチョ、セルヒオ・ラモス、レギロン
FW:ベンゼマ、ビニシウス
46分:ベンゼマ→クリスト、74分:レギロン→セバージョス、82分:バルベルデ→ブラヒム
予想だにしなかった3-5-2を選択。レギロン、バルベルデが先発に入った。
■ベティスの先発メンバー
GK:パウ・ロペス
DF:バラガン、マンディ、バルトラ、フランシス
MF:カルバーリョ;ロ・チェルソ、カナレス
67分:フランシス→テージョ、85分:グアルダード→ブデブス、88分:サナブリア→ロレン
上位に食い込んでいるベティス。このままならELも十分狙える位置につけている。
■ミッドウィークおさらい
ミッドウィークのレガネス戦について書けなかったので、ここで簡単におさらいを。
レガネス戦もこの試合同様、レギロン、バルベルデが先発、右サイドバックもオドリオソラという陣容。
ボールを失った後の切り替えの速さが良く、普段より強度の高い内容だったのが印象的で、主力とはいえコンディション不良等で試合を続けてきたことを実感させられた。
これまで通り立ち上がりは不安で、ナバスのセーブに助けられた部分は間違いなくある。
だが、そこで失点するかしないかの差はとてつもなく大きい。結果として凌ぎきったことで、その後の時間に自信を持っていくことができた。こういう結果の積み重ねが今はとにかく大事だ。
若いメンバーのモチベーションが高く、個々のレベルの差を補って余りある組織としてのプレー。この強度があれば、さすがにここまで取りこぼすことはなかっただろう。
コパで久しぶりに良い内容と結果を得ることが出来た。
■質の差が見えるも・・・
さて、その試合を経てのベティス戦。
レガネス戦では攻守の切り替えの速さを維持して良いプレーをしてくれた若手達だが、ポゼッションを重視するベティスが相手で、マドリーも5バックで臨んだこともあって、そうした「活きの良さ」は鳴りを潜めた。
逆に、レガネス戦ではさほど目立たなかった個々の技術の差がはっきり見えることに。
レギロンはプレーの判断の速度に問題があり、速攻に出るか出ないかといったところや、繋ぎのところでうまくいかない場面が散見された。
一方でバルベルデは不慣れなシステムの中で奮闘。奪って自分で持ち上がれる能力、捌くパスの精度の高さで、何とか中盤を支える力になっていた。
7割以上の支配率をベティスに与えていたため、5-3での守備はさすがにスペースを狭くする意識が徹底されていて、怖い位置ではスペースを与えていなかった。守る時は守る割りきりができていたのは、ソラーリがまずまずチームを掌握していることを感じさせる。
その分攻撃の機会は普段から比べて少なくなるし、狙い目がロングカウンターということもあって、奪った後どう攻撃に結びつけるかの選択の良し悪しが目立つことになったということ。
そこで失敗が多いと、前に出て行けず延々と守っているようなイメージになってプレーが厳しくなる。守りながらも、少ないマイボールでどれだけチャンスを作るかの準備ができているかどうかの差が良く見える試合になった。
その点、バルセロナに対抗してきたベンゼマやモドリッチ、カルバハルの判断のミスの少なさ、その選択を実行する技術の高さはさすが。
ベンゼマがポストプレーでどれだけ攻撃を支えていたかは、前後半の内容の差で容易に見て取れるだろう。
マドリーは13分にモドリッチのボレーで先制。
良い形で人数をかけて出て行って、最後はモドリッチ。左足ながら振らずにミートしてコースを狙う精度は素晴らしい。この試合最初のチャンスらしいチャンスをものにした。
前半のベティスは、ボールを持ちながらも、仕掛けるパスが非常に少なく、マドリーとしてはラインの間を消していればよかった。
ドリブルで仕掛けるというよりは、ロ・チェルソやカナレスを中心とした縦のパスでスイッチを入れたいチームのようだが、そのチャレンジの回数が少なければ守備としては持たせている印象になって守りやすい。
マドリーもシーズン序盤に直面した課題だが、ボールを持つところまでは良いとして、そこからアタッキングサードでどれだけ仕掛けられるかという点だ。
難しいことをせず、サイドで少しズレを作ってクロスの数を増やすというのも解決策で、ロナウドがいたマドリーはそのような形。ただ、ベティスはその道をとらず、ペナルティエリアの幅で頑張る選択をしていて、かつ仕掛けることができていなかった。
マドリーは、ベティスの攻撃の仕上げのまずさもあって、1-0とリードして前半を終えることに成功した。
後半の変化は二つ。
まずはベティスが縦のチャレンジを増やすようになった。
マドリーの守備組織の周囲を回すパスばかりだった前半を受けて、きちんと意識を修正してきた。
67分の同点ゴールはまさにそうした形。カナレスの動き出しに合わせ、寄せてきたマーカーを外してロ・チェルソが縦に入れた。
フランシスに代えてテージョを入れたことで、サイドでの仕掛けも意識させるように。
パス、ドリブルともに危険なものが増え、前半のためにするポゼッションから大きく改善した。
同点となってからはスタジアムの後押しも更に強くなり、完全にベティスのムードとなった。
変化の二つ目は、マドリーが負傷によりベンゼマを失ってカウンターの機会を作れなくなったこと。
前述の通り、ベンゼマのポストプレーにより前半は数少ない攻撃機会でも出て行ける回数をある程度確保できていたが、クリストになったことで、単独でタメを作れなくなり、2列目以降のプレーヤーが押し上げられなくなった。
こうした内容とレベルの試合に対してクリストの準備不足は明らか。彼が前を向くというより、スピードのあるビニシウスに勝負させる、その他のプレーヤーに時間を与えるといったことが求められていたが、あっさりボールを失っていた。
これならブラヒムを先に入れてカウンターの速さを見せた方が良かったかもしれない。その点、ソラーリは選択を誤ったと言える。
いずれにせよ、マドリーが全く押し上げられなくなり、ベティスが良い位置でチャレンジすることを思い出したことで、ただただ耐えるのみの後半となってしまった。
それでも、2点目を失なわなかったという結果は事実。うまくいかないなりに、最後のところで耐え切ったという見方もできる。
そこから、カゼミロのボール奪取からフリーキック、セバージョスのゴールで勝ち越しとなったのだから、ギリギリのところでツキを引き寄せるだけのプレーは保ったということになる。
試合展開は勝ち点1でもやむなしというものだったが、耐えて耐えて勝ち点3を持ち変えることが出来た。
■最後に
この布陣、内容を続けていけば良いと考えるほど楽観的に考えることはできないが、とにかく結果を繋いでいくしかない状況で、勝ちを拾ったという点は評価したい。
チームとしてもこれで十分と捉えることはないだろうが、こうして泥にまみれて掴んだ結果が雰囲気を変え、プレーヤーを変えることもある。
良い流れに乗るきっかけとなることを期待したい。
ミッドウィークはコパ第2戦でレガネスと対戦。
週末はベルナベウにセビージャを迎える。