雪もちらほら舞うモスクワでの決勝トーナメント初戦。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
MF:ケディラ、シャビ・アロンソ;カジェホン、エジル、ロナウド
FW:ベンゼマ
16分:ベンゼマ→イグアイン、74分:カジェホン→カカ、82分:エジル→アルビオル
コエントランが先発。ディマリアが再び負傷した右サイドにはカジェホンが入った。
■CSKAモスクワの先発メンバー
GK:チェプチュゴフ
DF:アレクセイ・ベレズスキ、ワシリー・ベレズツキ、イグナシェビッチ、シェンニコフ
FW:ドゥンビア、ムサ
65分:ムサ→オリセー、68分:オルドニン→本田、80分:トシッチ→ネチド
ファイタータイプが多い守備陣と、身体能力を生かした攻撃陣といった印象。
ムサは左サイドに下りて4-2-3-1になって守備をすることも。
■曖昧さが目立ったマドリー
10分くらいまでは、できるだけボールを持って、全員がボールを触って、寒さとピッチに慣れようとしたマドリー。だが、体が普段より動いていないことは明らかだった。オフザボールの動きが少なく、パスコースをなかなか作れない。
また、コエントラン、ケディラ、カジェホンを使った先発メンバーからして、ボールを多く持つつもりはなかったと推測できる。アウェイでもボールを持ちたいなら、マルセロ、グラネロ、カカを使えば良いが、そうはしなかった。つまり、低い支配率にして、速めに攻めることを選択したと言える。
これらのことから、ボールを持たない方が良いだろうと思われたが、支配率は6割前後というところ。状況を考えると、ちょっと不釣合い。
また、動きが悪い中で、プレスをどれだけかけるか、というところはなかなか難しい選択だったと思われる。
序盤から前線は頑張っていたし、それは普段のリーガに近いやり方だったのだが、少し遅れる場面もあるし、なかなかチーム全体の動きにならない。よって、プレスをかわされ、ドゥンビア、ムサに裏を取られることが前半何度かあった。
セルヒオ・ラモスとペペの個人能力で抑えていたが、身体能力での勝負は互角といっても良い雰囲気で、技術の点で上回ったという感じ。
アウェイで、ピッチも悪い、しかも15分ほどでボールの収めどころであるベンゼマを負傷で失ったという状況から考えれば、もう少し相手を呼び込んでボールを奪ってカウンターという、割り切った狙いを持っても良かった。
先制はマドリー。イグアインが曖昧なディフェンスのボール処理を奪ってからの流れ。
クロスのこぼれたところをロナウドがしっかり抑えたボレーで合わせた。とにかく状況が良くなかっただけに救われる先制だった。
ただ、スコアが動いた後もあまり流れは変えず。
CLで曖昧なやり方を続けたことは驚くべきこと。押し込まれても失点する雰囲気はなく、むしろスペースを与えた方が危なかったCSKA攻撃陣に対して、変わらない守備対応を取っていた。
■一旦は良くなったが
後半に入って、裏を狙う動きが少しずつ出てきた。
よく考えると、前半は裏狙いが得意なカジェホンが、らしい動きを出来ていなかっただけに、ボールでも裏をという形は、CSKAをおびきだす点でも有効に思われた。
カジェホンは、どちらかというと攻守の切り替えの規律をしっかり守っていて、ディマリアのような印象だった。
守備面では、ジャゴエフへのパス供給をカット。他のアタッカーは、ジャゴエフとの絡みで何か起こそうという動きをしており、彼に当てたり預けたりするパスが多かった。
そこを狙ったことで、CSKAの繋がりある攻撃を寸断することに成功。前で奪って速く、という場面が増えてきた。
そこでCSKAの交代策。
オリセーは、ムサよりさらに遮二無二突っかけてくる。マドリーの攻撃に出たタイミングでのパスの精度は高いとは言えず、これを取られて、コエントランの裏でオリセーに頑張られる場面がしばしば。厄介なプレーをされた。
そして本田の投入。
中盤にボールを落ち着けることの出来る選手を置いたCSKAは、自分たちのペースでボールを持てるようになってきた。前半思っていた雰囲気とは違う、CSKAがイニシアチブを持ったポゼッション。
それでも前述の通り、狭いところでいろいろやれるだけのものはなく、マドリーの守備陣が最終的には上回っていた。
それでは、この90分をどう終わらせればいいだろうか、というところで、マドリーは中途半端になり、結果失点を喫した。
ネチドの登場に対応する形でエジルをアルビオルに替えているが、通常のバランスを崩してまで守るのであれば、前線のカカ、ロナウド、イグアインに無理をさせるべきではなく、ボールキープ第一でよかった。
一方で、2点目でCSKAの息の根を止めるのであれば、エジルを残して、バランスを保ったままで終盤を迎えるべきだっただろう。
采配は逃げ切りだったが、ピッチ上ではそこまで意思統一が図れていなかった。そのことが悔やまれる。
後半になってボールを手放していく方向になっていたが、踏ん切りがつかないままだった。
■第2戦へ向けて
失点の仕方は残念だが、アウェイゴールを得ての1-1は上々の結果。
ベルナベウで運動量が戻れば、もっとボールを自由に動かせるはずだし、中盤より前のの守備も機能するだろう。そうすれば、CSKAのフォワード陣が仕事をする機会はずっと減るはず。
焦れればカウンターで攻められるし、同じようなスタンスで来るなら、無理をする必要はない。じわじわとボールを持ちながら攻めれば、チャンスは出来ると考えられる。
ベンゼマは3週間ほどの離脱ということで、3枚のイエローカードとともに大きな代償を払うことになったが、次は意思統一のあるマドリーらしさを見せて勝ち抜けを決めてもらいたい。