またも勝ちきれず。モウリーニョのいうように、リーガとは実質的にさよなら、バルセロナが早くもリーガのタイトルを確実にした節と言える。
シーズン全体を見渡すような話は後で別の記事にするとして、ここでは試合の内容についてだけ触れる。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
MF:ケディラ、シャビ・アロンソ;エジル、モドリッチ、ロナウド
FW:カジェホン
ディマリアとカジェホンの両サイドにはせず。これについては後述。
■エスパニョールの先発メンバー
GK:カシージャ
DF:ハビ・ロペス、コロット、モレーノ、アルバレス
MF:フォルリン、ビクトル・サンチェス;、ベルドゥ、シモン
FW:セルヒオ・ガルシア
29分:ワカソ→アルフォンソ、59分:アルバレス→カプデビラ、70分:ベルドゥ→アルビン
シモンやカプデビラといった、リーガで実績のある選手がいるエスパニョール。降格圏にいるが、上はそう遠くない。
■中盤の考え方
まずはマドリーの中盤の組み合わせについて思うところを。
戦前は、カジェホンとディマリアの両サイドに真ん中がエジルという予想もあり、これでは縦に速くなりすぎる懸念があると書いた。
連戦で疲れているからと前半で下げたモドリッチを敢えて先発させたのは、この懸念を払拭するためだったのだろうと考えている。
まして、ディマリアはコパで「プレーする気がなかった」とされる選手の1人。それをリーガですぐに先発させることへの抵抗もあったかもしれない。
いずれにせよ、カジェホン、ディマリアに前線ロナウドという組み合わせは回避された。ベンゼマのようなタメはないが、エジルとモドリッチがうまく攻撃をコントロールできるという期待はあった。入れ替わりながら最前線に入るカジェホンとロナウドが裏に抜けられるようなパスが出れば。
エスパニョールは、当然ながらしっかりリトリートして対抗。
ビクトル・サンチェスとフォルリンの中盤の底にベルドゥも入る真ん中は狭く、マドリーには攻略が難しい。
モドリッチは、今のところ一列後ろから参加した方がスムーズな印象。ベンゼマがいなかったことも、彼の状況を難しくした。短いパスを交換できる相手が少ないと、持ち味は発揮しづらい。
絶えずプレッシャーをかけられるところよりは、後ろからサポートしながら、パス交換で侵入していく方が性に合っているように思われる。
その意味で、3の真ん中はカカで行っても良かったかもしれないが、それは結果論。現状の信頼度から言って、モドリッチの起用は当然だし、考え方に異論はない。
■攻めあぐね 同点だけが救い
相変わらず攻めあぐねるマドリーは、中盤で奪われ、セルヒオ・ガルシアへのスルーパスからそのままゴール。前節に続き先制を許した。
フォワードがモラタしかいない状況はあるにせよ、攻撃が上手く行かず、ぐずぐずしているところをやられる典型的なパターンがまたも。
先週のバジャドリー戦もそうだったが、追いかけるのに労力を要する試合展開が多く、結果にかかわらず危ない内容の試合が多いのが今シーズンのマドリー。
セットプレーという弱みもあり、失点の恐れは多く、得点できそうな期待は少ない。
安易に出て行かず、きちんとスペースを消す基本的な対策がどんどんと進んでおり、対するマドリーはそれを打開する術を今のところ持っていない。モドリッチの組み込みも遅れており、今日のような展開での引き出しは、非常に少ない状況だ。
今日もボールを持ったが、効果的な崩しはあまりなく、前半のうちにクロスに上手く飛び込んだロナウドが同点ゴールを決めたことが救い。
それにしても時間がかかりすぎている。あまり使っていない組み合わせとはいえ、何とか追いついた印象で、ここから期待が持てる状況ではなかった。
■逆転するも・・・象徴的な後半
後半開始からモドリッチに替えてディマリアをいれた。これによりエジルが真ん中のいつもの形に。
上に書いたように、モドリッチの疲労が理由とされており、確かにその通りだと思っているが、モドリッチとエジルの併用のメリットを十分に享受できていないという印象もあったと思われる。
ディマリアは右サイドでボールを持ってアタッキングサードへ入っていける唯一の選手であり、コパの罰があったにせよ、今は彼に出てもらうしかなかっただろう。
早速、3人のディフェンダーを相手にしながらボールを持ち上がり、逆転の場面に繋がる一連の流れを作った。
だが、これまで何度も書いているように、アタッキングサードでのプレーの幅が多いわけではなく、左に持ち替えてのシュートかクロスがほとんど。ここで工夫のできる選手が、今のマドリーにはいないことが苦しい。サイドで、ボールを持って仕事ができる選手がいれば。
逆転のゴールはコエントラン。コーナーから流れたボールをペペが左サイドで持ち、中のロナウドへ。ロナウドはシュートも匂わせながらボールを持ち、上がってきたコエントランへパス。コエントランはうまく体を入れてディフェンダーを遮り、ゴールへ流し込んだ。
ペペがサイドでワンツーを受ける動きをしたことで、ちょっとできたギャップにコエントランが上手く飛び込んだ。
こうした崩し、飛び出しが試合中もっと見られれば良いのだが。
この後、チャンスがありながら勝ちきれないのが今シーズンのマドリー。安全なリードを得る機会は一度ならずあったが生かすことができず。
昨シーズンならば、試合を終わらせる得点を挙げられる攻撃があったし、1点差でも逃げ切れる雰囲気があったのだが、今シーズンはその両方ともがない。
もちろん、この2つは関連したもの。相手を突き放す得点も取れなければ、終盤死に物狂いで勝ち点を取りに来る相手の勢いを押しとどめなければいけないことになる。
後半の早い時間に逆転しながら停滞してしまったこの試合に、今シーズンのマドリーの状態が象徴的に表れているように思う。
■最後に
バルセロナはアトレティコとの試合に勝ち、マドリーとの勝ち点差は13。しかし、バルセロナが好調であろうとなかろうと、今シーズンマドリーの出来ではリーガの制覇は非常に難しいものだっただろう。
引かれると手詰まりになる攻撃。サイドの停滞。セットプレーでの不安定な守備。こうした問題点は、この試合でもはっきりと表れた。
これらがこの試合だけの問題ではないことは、以前から書いてきたつもり。その点については、最初に書いたように、記事を分けて書くことにしたい。
次節は2012年最後の試合。マラガとアウェイで対戦する。