レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

モウリーニョとの契約解消を発表

ペレス会長は、月曜日に開催された役員会の後、モウリーニョとの契約解除に合意したこと、6月16日に会長選挙を行うこととし、その選挙に自身も立候補することを発表した。

本来であれば、モウリーニョとの契約解除は非常に大きなニュースではあるが、ずいぶん以前から来シーズンは違う監督になるだろうと報じられていたため、驚きはあまりない。

違約金の取り扱いについても、双方合意の下での契約解消のため、どちらにも支払い義務が発生しない形で解決しており、これも想定通り。

来るべき日が来たという印象だ。

モウリーニョの功罪は簡単には表現しづらいものがあるが、純粋にピッチ上に限って言えば、他を寄せ付けないほどの強さを誇ったバルセロナに並びリーガでは1度上回って優勝を達成したこと、CLベスト16の壁を破って、10回目の優勝の可能性を強く感じられるまでに引き上げたことは評価すべきだろう。

バルセロナとの争いについて言えば、バルセロナの力の低下もあり、一概にマドリーのレベルアップだとは言いづらいが、CLで勝負弱かったマドリーをトーナメントで勝てるチームにしたことは、大きな功績。トーナメントで勝負強いモウリーニョらしいチームをマドリーでもしっかりと作り上げたと言える。

高い個人の技術を背景とした攻撃は良いが守備は雑ということが長らくマドリーの印象であったが、モウリーニョはその守備を整えることに成功した。

一方で、攻撃面では3年間大きな改善がないままに終わってしまった。確かに守備からのカウンターは整備されたし、それによって奪えたゴールもあったのだが、リトリートされると途端に手詰まりになってしまう状況はずっと引きずってしまった。ゴール前での個々の選手のプレーの質の問題はあり、それは監督の力量で一気に良くなるものでもなく、仕方ない面はあったが、きちんと守備をされて上手く行かなかった試合は数多くある。

計算できる守備を作り上げた反面、得点を取ることについてはロナウドに頼ることになり、チームとして計算できる形は多く作ることは出来なかった。

とは言え、全体としてみれば、CL準決勝に3回進出したことは単なる幸運ではなく、やはりモウリーニョの力量が成し遂げたものとして評価すべきものと考えている。

■ピッチ外の失敗

ピッチの中では成績を残したモウリーニョだが、チームのマネージメントという面では上手く行かなかった。

外部に敵を作って内部をまとめていくお馴染みの手法で臨んだモウリーニョは、追いつき追い越すべきライバルであるバルセロナや、リーガの運営、判定などさまざまな物に噛み付いていった。また、チーム内の”反乱の兆候”は厳しく取り締まり、招集されない罰を受けた選手はカシージャスセルヒオ・ラモス、ペペなど、かなりの人数に及ぶ。

こうしたやり方で内部を引き締め、団結を図ったモウリーニョだったが、マドリーの選手たちは同調しなかった。

モウリーニョにとって不運だったのは、スペイン代表が非常に強く、結果を残していることかもしれない。代表では良きチームメイトである選手たちを貶めることを、カシージャスセルヒオ・ラモスといった面々が快く思わなかったということは十分にあり得る。代表が上手く行っていないのであれば、バルセロナに対する敵対キャンペーンも奏功したかもしれないが、代表が素晴らしい雰囲気で結果を残している状況で、彼らを敵に回すようなことは、スペイン出身のカピタン級選手たちが応じなかったし、現地メディアもモウリーニョにあまり”協力的”にはなってくれなかった。

チームの雰囲気を作ることは監督だけの問題ではなく、こうして空中分解してしまったことに対する責任は、結局最後まで監督と上手く対話できなかった選手たちにももちろんある。

モウリーニョの根本的な考え方は相容れなくとも、プロフェッショナルに最後までチームとしてやるという選択肢は、いつからかなくなってしまい、今シーズン途中には完全にチームの体をなさなくなってしまった。

モウリーニョにとっては、ビッグクラブを率いるようになって以降、これほどチーム内をまとめられなかったことは初めて。終盤は、これまで経験してきたやり方では対処できなくなっていたと言うべきだろう。

モウリーニョのこうしたやり方はマドリーの伝統的な考え方とは相容れないし、バルセロナの敵失がなければ、もっと早く瓦解していただろう。昨シーズンのリーガ優勝や今シーズンのクラシコでの勝利は、モウリーニョのやり方を続ければ結果が出ると信ずるに足る結果だったが、結局のところ綱渡りを続けていたことに変わりはなかったということ。

かなり以前から、こうしたやり方による金属疲労はあり、それが3年で限界を迎えたということだろう。

■先を見据えて

6月半ばに選挙が行われることが明らかになり、今後に向けての方針は選挙戦で争われることになる(とは言っても、ペレス以外に立候補者が出ない可能性も十分にあるが)。

モウリーニョがピッチに残した成果は大切にしながら進化させ、マドリーにとって必要のない、無益な争いはこれまでとして、新しいシーズンに良い雰囲気の強いマドリーが出来上がっていくことを期待したい。

様々なことがあったが、とにもかくにもマドリーをここまで引き上げてくれたモウリーニョには感謝を。