遅れてしまい、バロンドールの話題で持ちきりになってしまっているが、その前のエスパニョール戦を振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:アルベロア、ペペ、バラン、コエントラン
MF:クロース;イスコ、ハメス・ロドリゲス
54分:ハメス・ロドリゲス→ナチョ、63分:ベンゼマ→イジャラメンディ、81分:クロース→ケディラ
中盤より前はお馴染みのメンバー。最終ラインは変更が多く、アルベロア、バラン、コエントランが先発となった。
■エスパニョールの先発メンバー
GK:カシージャ
DF:アルビージャ、コロット、アルバロ、フエンテス
MF:ジョルダン、カニャス;ビクトル・サンチェス、モンタニェス
FW:セルヒオ・ガルシア、カイセド
63分:ビクトル・サンチェス→ルケ、68分:ジョルダン→ストゥアニ、81分:セルヒオ・ガルシア→アブラアム
10位のエスパニョール。ホームでは9試合で勝ち点15を得ているが、アウェイでは8試合で勝ち点5。アウェイの乗り切り方が課題のようである。
■ありがたい先制点
連敗で新しい年をスタートしたとはいえ、マドリーはやり方を変えることはせず、基本的な考え方はこれまで通り。
最近は運動量の低下もあって、4-4-2への可変4-3-3というよりは、前線が居残りがちな純然たる4-3-3といった雰囲気ではあるが、ベイルが戻ってくる時は中盤に組み込まれるようにはなっている。
この試合ではカルバハルが出場停止で起用できずアルベロアだったので、右サイドの攻撃の厚みには欠けていた。その分、守備はベテランらしい安定感。ベイルにとってはデコイになってくれたりコンビプレーも出来たりするカルバハルでなく辛い状況ではあった。
イスコとハメスを併用したわりにはボールを持てず、恐ろしかったのは焦れる展開になること。前線にお任せするような攻撃になって淡白になり、ゴールが決まらないとベルナベウも敵に回ってしまう。
そのため、12分と早い時間に先制できたことの意味は大きかった。
得点できたことでチームも落ち着けたし、ベイルの右から左への大きな展開、ロナウドのダイレクトの落とし、ハメスもダイレクトでのシュートというゴラッソだったので、ベルナベウの観衆にあったであろう連敗で起こった懐疑的な思いや不安を忘れさせることができた。
バレンシア、アトレティコとの試合と変わらず、内容はさほど良くないのは確か。中2日での試合が続いてコンディション的に上向くことは期待できない。何とかバランスを取っている状況のチームが走れないとなれば、攻守ともに支障をきたすのは当然のこと。どうやら例年通り冬の移籍市場で動くこともなさそうなので、しばらくはこの状況のまま、結果に関わらずぱっとしない内容の試合が続くのではないかと考える。
アンチェロッティはローテーションして休ませると述べているが、リーガの勝ち点差も余裕はなく、さらに登録人数が少ないこともあって、無理が続くポジションも出てくるものと思われる。アンチェロッティの考え方としても、休みの与え方はほどほどで、大きなローテーションで乗り切るつもりはもともとない様子。
CLが再開されるまではこの調子で行くことを許容しなければならないが、そのために内容もさることながら、こうしたスペクタクルを見せておくことは、クラブを取り巻く環境を考えると大事。2点目のベイルのフリーキックも同様にチーム、マドリディスタの士気を取り戻すようなゴールになった。
もちろん、普段控えでコンディションが主力より良いプレーヤーたちにはハードワークを期待する。
そうしたプレーはマドリーが戦えるチームであると相手に意識付けることにもなるし、走り回ったり守備の寄せで頑張ったりするプレーは周りのプレーヤーに伝染する。
昨シーズンのディマリアのように頑張るプレーヤーを、チームは見捨てないものだ。
出番は少ないけれどイジャラメンディ、ケディラといった中盤のプレーヤー、アルベロアやナチョ、コエントランといった最終ラインのプレーヤーにそうした役割を担ってもらえればと思う。
■エゴというより
美しいフリーキックで得点を挙げたベイルだが、彼に対する批判はやんでいない。
後半、またしてもフリーのロナウドへパスを出さず、難しいプレーを選択した、ということが話題になっていて、バレンシア戦でも似たような場面があったことからエゴイストとも書かれるようになってしまった。
ベイルは遠からぬ将来ロナウドの位置を継ぐことになるだろう。とはいえ、2人が並び立つのが現状で、マドリーでの最初のシーズンであった昨シーズン、ベイルはかなり利他的に、自分のやりたいことを脇においてプレーした。その中でコパ、CLと重要なゴールも挙げて、十分周りを立ててプレーしたという思いがあり、2シーズン目は少し攻撃に特化し、自分で思うようにプレーしたいと思っているかもしれない。ところが、マドリディスタはまだそれほどの自由を与えるほどにはベイルを買っておらず、「まだ君は特別ではない」と宣告したように見える。
私自身、攻撃の組み立てや守備への貢献の低さについて、何度も書いてきており、バランスの維持という観点から言っても、ベイルがロナウドのような”特別な立場”になってしまうことには賛成しない。いずれベイルがロナウドの立場になるにしても、それは今ではない。彼のようなプレーヤーには厳しく、またチーム事情から来る勝手な希望だが、今はディマリアのようなプレーでチームに組み込みたいのだ。
ただ、ロナウドの後継者として見た時、槍玉に上がるような場面で物分かり良くパスを出すというのも考え物で、自分が何とかしたいという強いメンタリティはなくさずにいてもらいたいもの。その意味で言えば、最近の彼のプレーは低調と批判されることはあっても、ことさらエゴイスティックと言われるべきものではない。
彼は現状と将来とにそれぞれ異なるスタイルのプレーを期待されている。
ロナウドがいる現状のチームを助けるプレーだけでは将来的にマドリーは困ることになるし、だからといって今からロナウドのようにプレーすることには無理があるのだ。
その難しい立場は察した上で言うと、自分でやるのも良いけれど、それならきちんと決めないといけない。難しいプレーだろうが、決めてしまえば批判はほとんど出ない。むしろゴラッソと称賛されさえする。
そうしたプレーで決めきれないところが、彼の今の調子を表していると感じる。
■少しだけ
51分にコエントランが退場となり、マドリーは対応を余儀なくされる。リードを守るべくナチョをいれ、中盤にも守備ができるイジャラメンディとケディラを順次入れて、落ち着かせた。
バレンシア、アトレティコとはレベルが違う試合ではあったが、ここから失点をしなかったことは大事。
こうした起用をされるということは、イジャラメンディの守備は評価されていると思われる。その割に出場時間が増えないのが不思議。守備面での課題克服のために、良い選択肢になりうると思うのだが。
81分のケディラ投入まで底で使われなかったことに、クロースへの信頼と期待の高さとイジャラメンディのそれとの差を感じてしまう。クロースを休ませられるようにするためにも、イジャラメンディはうまく使っていってもらいたい。
77分、ナチョが初ゴールを決めて3-0とし、一人少ないながら試合を決定付けた。カンテラーノの先輩アルベロアが一番に駆け寄って抱き上げたのが印象的。
退場のアクシデントを乗り越えてマドリーは2015年初勝利。後半をうまくコントロールし、落ち着いて試合を終えることが出来た。
マドリーは1試合消化が少ない状態で2位バルセロナと勝ち点差1の首位。ただ、未消化分はセビージャ戦で、勝ち点3を得るのはなかなか難しい相手。接戦が続く。
ミッドウィークにアトレティコのコパ第2戦をはさみ、次節はヘタフェとアウェイで対戦。アトレティコに逆転勝利を期待するのはかなり厳しいが、最低限ハードワークは見せてもらいたい。