初戦はアウェイで2-0。落ち着いて試合に入れるリードを得ての第2戦。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:ダニーロ、セルヒオ・ラモス、ペペ、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:ハメス・ロドリゲス、ロナウド、ベイル
61分:ベイル→ルーカス・バスケス、76分:モドリッチ→ヘセ、84分:カゼミロ→コバチッチ
カゼミロが先発。このところの出場機会でチャンスを得た形。前線ではベイルが先発。
■ローマの先発メンバー
GK:シュチェスニー
DF:フロレンツィ、マノラス、ズカノビッチ、ディーニュ
MF:ケイタ、ピャニッチ;サラー、ペロッティ、エル・シャーラウィ
FW:ジェコ
46分:ピャニッチ→バンクール、74分:エル・シャーラウィ→トッティ、86分:ケイタ→マイコン
前回対戦では0トップだったが、今回はジェコが明確な1トップで先発。
■互いに強みを消し合いながら
マドリーはカゼミロを先発起用。既にリードを得ており、まずは失点しないことを重視したのだろう。また、今後を考え、万が一カードをもらっても良いよう調整を図ったのかもしれない。いずれにせよ、カゼミロはリーガに続き、大きな試合でもチャンスを得た。
彼の良さは攻守にバランスが取れていること。パス精度は一定程度あり、かつてのケディラのようにあからさまに組み立てで避けられるということはない。また、守備でも厳しく寄せることができ、底で相手の攻撃を潰すことができる。前者はクロースには及ばないものの、後者は上回っており、底でプレーすると守備はより安定する。守備においては、危険であればファールしても止めてしまう狡猾なプレーができるのも彼の良さで、ふわっと当たって終わりになることもしばしばあるクロースとはその点で大いに異なる。
ローマはジェコを先発起用し、第1戦とは違いトップの位置をはっきりさせてきたが、マドリーはカゼミロがいることで、まずまず対応できることとなった。
第1戦、ローマは足の速い2列目を生かし全員がしっかり退いたところからカウンターを狙ってきた。この試合ではジェコが入ったことで基点がはっきりしたが、その分第1戦のようなカウンターの回数は減り、マドリーとしては守備面ではやりやすくなった。
その一方で、リトリートしての守備ではなく、比較的高い位置からプレスをかけるようになったことで、マドリーの組み立てはこれまで同様苦労することに。ぺぺとセルヒオ・ラモスが揃ったことで最終ラインからの展開は安定し、プレスを回避することはできるようになったものの、中盤から前線へと繋ぐ形では引っかかることが多く不安定。
前線でベンゼマを欠き、ロナウドとベイルがいる状況では受け手もおらず苦しい。強みを手放しオーソドックスな形を選んだローマがマドリーの攻撃を阻害することとなった。
ローマも攻撃は停滞気味。サラーは何度かスピードを生かした突破を見せ、サイドで存在感を見せていたが、第1戦ほど回数は多くなかった。ジェコはいまひとつ彼のメリットを出せず、前半にファーで抜け出した場面はあったものの、ナバスにコースを消されシュートは枠外と、ストライカーらしい迫力を欠いていた。
問題はマドリーの守備が緩慢だったこと。2点のアウェイゴールがあり、攻撃は無理をする必要がないが、守備は別。1点取れば流れが変わりバタバタするかもしれない状況にもかかわらず、間延びした状態になることもしばしば。前半、決定的な場面はローマの方が多く、不安を残す展開となっていた。
ハメスやベイルはさすがに守備に帰っており、個々の意識はさすがにCLというように見て取れたのは救い。それもなければ、ベルナベウでもっと酷い内容になっていたかもしれない。
■交代策が当たり
後半頭からローマはピャニッチに替えてバンクール。配球できるピャニッチが下がったことで、ローマの攻撃の構築能力は下がった。フロレンツィが右サイドで高い位置を取りながら顔を出し、改善を図ることに。
良い場面もあったものの前半をスコアレスで終え、ローマはとにかく得点が必要で、リスクを負って攻撃にシフトしたかっただろう。彼らにとっては残念な交代となった。
マドリーは60分でベイルを下げ、ルーカス・バスケス。これは予定された交代と思われる。
復帰後2試合目のベイルはまずまずのプレー。ポジションを変えて左右両サイドに顔を出しており、特に左サイドではさすがのクロス。速く正確なボールを供給していた。
自分でシュートに至る場面がなかったのは残念。右サイドから中央に入っていったり、中央でボールを運んだりするプレーでエリアに進入することはできなかった。チームとしてうまくボールを進められなかったことも影響しているので、彼だけの問題ではなく、悲観するような試合ではなかったとは言える。
そして途中交代で入ったルーカス・バスケスが仕事をした。
64分、モドリッチから右サイドでパスを受け、エリア内で仕掛け。またいでタイミングをずらし、縦に出て低いクロス。これを似兄は知りこんだロナウドが合わせ先制に成功した。
仕掛けの判断に甘さがあることは否定できないが、エリア内ならばルーカス・バスケスのドリブルは相手にとって脅威。タッチが細かいので足を出すとペナルティの危険がつきまとう。このような位置ならば彼のプレーを大いに生かすべきだろう。
タイミングを合わせて飛び込んだロナウドの動き出しは見事。今シーズンの彼らしいゴールだった。
68分にはカウンター。ロナウドが前を向いてドリブルし、ハメスが並走。自分でコースを作ることもできたかもしれないが、1点取った余裕からかロナウドはシンプルにハメスに追い越させ、パス。
厳しい角度からハメスはシュートを選択、これがシュチェスニーの股を抜いて決まり、2-0とした。
打って出たかったローマを尻目に、交代で入ったルーカス・バスケスとロナウドのプレーで得点を奪い、5分以内にもう1点。全体の流れとしては前半とさほど変わらず、互いに主導権を握ったといえるほどではない時間が続いていた中で、マドリーがほんのいくつかのプレーで勝負を決めてしまった。
ロナウドが抜け出して先制してしまった第1戦と似たような展開で、そのあたりの1つのプレーの怖さはローマよりマドリーが上だったということだろう。ナバスの落ち着いたプレーもさることながら、ローマは2試合を通じて迎えていたチャンスをふいにし、結局1点も取れなかったということが全てだった。
いかに不安定であろうとさすがに4失点の心配はなく、マドリーは残り15分で中盤の大黒柱モドリッチを下げる余裕の展開に。頑張っていたカゼミロをコバチッチと替えても問題にはならず、そのまま2試合を通じ無失点で勝ち抜けを決めた。
■今後に向けて
第1戦、第2戦と先制ゴールを挙げたロナウドのプレーで2試合を通じた趨勢が決まった。
ただ、チームとしては手詰まり感があり、こうした一発がないよう丁寧に封じられる相手だと苦しくなるのは確か。それでもロナウドやベイルが決めきるならば、もう少し上に進めるかもしれない。また、彼らにそうした場面を提供できるよう、停滞しても集中を切らさず、守備から攻撃に移る機会を狙っていければ。
準々決勝までにはベンゼマが復帰しているだろう。彼の復帰で少しでもボールを持たされる状況から脱却し、ポゼッションに怖さが出てくると良いのだが。
週末のリーガは遠いアウェイのラスパルマス。コンディション的には厳しいが、もはやリーガは無理しなくても良い状況。うまくローテーションしていきたい。