レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

CL準決勝第2戦 vマンチェスターC.

昨シーズン躓いた準決勝。今シーズンは負傷者を抱えつつも、何とか結果を出した。

■マドリーの先発メンバー

GK:ケイラー・ナバス

DF:カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ

MF:クロース;モドリッチ、イスコ

FW:ベイル、ヘセ、ロナウド

56分:ヘセ→ルーカス・バスケス、67分:イスコ→ハメス・ロドリゲス、88分:モドリッチコバチッチ

カゼミロの代わりはイスコ。クロースが低い位置に入り、イスコは2列目。ベンゼマを欠く前線ではヘセが起用された。

マンチェスターC.の先発メンバー

GK:ハート

DF:サニャ、オタメンディ、コンパニ、クリシ

MF:フェルナンド、フェルナンジーニョ;ナバス、ヤヤ・トゥーレ、デブライネ

FW:アグエロ

10分:コンパニ→マンガラ、62分:ヤヤ・トゥーレスターリング、69分:ヘスス・ナバス→イヘアナチョ

第1戦でシルバを負傷で失っている。復帰してきたヤヤが先発となった。

■シティの理想と実際のプレーの差

先にシティについて。

シティは、彼らのホームでの初戦をスコアレスで終えた。リードを奪えなかったものの、アウェイゴールを与えなかったことは重要で、うまくやればベルナベウで主導権を握ることもできる立場となった。つまり、マドリーがアウェイゴールを与えないよう慎重にプレーしたら、シティはボールを持って攻撃に力を割くことができる可能性があるということ。

問題は、上で触れたように第1戦で負傷したシルバを欠いていたこと。

中央から左サイドにかけて彼の存在感は大きく、第1戦では離脱するまでマドリーは彼を捕まえらなかった。その代役として入ったヤヤに対する期待は大きかったはず。十分な技術とともにシルバにはない高さもあり、身体能力も生かせる彼が中央に入ることで、攻撃の中心となってくれることを望んだ起用と思われた。

マドリーが彼に集中すれば、両サイドが空く。ナバス、デブライネがサイドバックと勝負して、アグエロが決めるというのが、シティの理想的な展開だっただろう。

シティにとって問題となったのは、そのヤヤの出来。コンディションも万全ではないように見受けられ、シンプルな捌きはさすがの技術を見せていたものの、高い位置でボールを出し入れをするための動きが乏しく、ボールに触るためにポジションを下げていき、フェルナンド、フェルナンジーニョより後方に位置することもしばしばという状態に。

そこからのパスは十分な精度だったが、2列目の中央に彼がいなくなったことで、フェルナンド、フェルナンジーニョが前に出て調整するようになった。こうなると、シティの中央攻撃の力はぐっと落ちてしまう。

彼らにとってはカゼミロを欠いたマドリーの中央は1つの狙い目になるはずだった。それを突けるプレーヤーがいなくなり、代役も後方に下がってしまったことで、シティの攻撃は単調になった。

マドリーにとっては、中央の心配がさほどない状況となって、守備の狙いが絞りやすくなった。シティはナバスとデブライネの両サイドにボールを供給するが、そこしかないという状況で受け止めれば、そうそうは突破できない。両者とも見せ場を作るまでに至らず、マドリーの守備陣がきちんと対応していた。

マドリーはカゼミロを欠いて、守備の不安が大きかった。

守備時はクロースが底に下がり、その前にモドリッチとイスコが入る。ベイルとヘセが、攻撃の終わり方によってサイドを変えつつ両サイドを埋めて、負傷明けのロナウドがトップに残る4-1-4-1の形。

懸案はカゼミロのいない中央をどうカバーするかということで、クロースだけでは心もとなく、イスコとモドリッチも普段以上の守備負担が必要。だが、ヤヤが後方に下がり、そこにも誰かがついていって距離を詰め、警戒を怠らなかったことで、シティの中央の圧力が想像よりずっと低くなり、ここが問題となることはそれほど多くなかった。

サイドもベイルとヘセが戻って埋め、サイドバックを孤立させないよう努力していた。ここで数的不利を強いられると、ずれていってスペースが生まれることになる。そうならないよう、攻撃から戻って守備参加していたし、間に合わない時でもひとまず4-3で遅らせ、その間にどちらか1人は戻るということが徹底されていた。

このように、守備ではシティの問題とマドリーの守備意識が相まって、大きなピンチを迎えるには至らなかった。シティはアウェイゴールを狙って大胆にプレーすることもできる状況の第2戦だったにもかかわらず、シルバを欠き、ヤヤも低調だったことで、理想よりもずっと低いレベル、マドリーとしては待ち構えているところにそのまま来るという攻撃に終始した。また、そのことで、チームとしてどうプレーするか、勝ち抜けという結果を得るためにどうすればいいかという方針がぼやけたままプレーすることになってしまったように見受けられた。

■マドリーの攻撃もいまいち

ではマドリーの攻撃はどうかというと、こちらもぱっとしなかった。ベンゼマを欠いて、前線での受け手がいなくなっており、特に遅攻となると影響が大きい。

ただ、ボール運びは安定していた。シティはマドリーが厳しい状態でボールを持った時はプレスをかけていたが、最終ラインとクロース、モドリッチ、イスコのパス、足元の技術でするするとかわし、前線へとボールを運ぶ。率直に言えば、ボールを持ちがちなイスコ、パスは素晴らしいがたまにおかしな奪われ方をするクロースあたりは不安もあった。だが、シティのプレスは組織立ったものではなく、マドリーも下手な奪われ方は避けるよう注意してプレーしていたことから、大きなミスはなし。特にイスコは、詰めてきたディフェンダーをかわしてのターンで何度も前を向いてボールを運んでいて、安心感があった。

マドリーの問題はその先。最終的にどうゴールを奪うかというところ。

ロナウドのコンディション不良は明らかで、運動量が少なく、中央に居座らざるを得ないことが多かった。守備ではそれを加味して彼を前に残し、その他で対応することができていたが、攻撃ではそうもいかない。中央の彼を生かすには、サイドからのクロスで活路を見出すしかないか、という雰囲気だった。

そのサイドも、左はイスコ、マルセロ、ロナウドの連携がうまくとれず、近すぎたりパスがずれたりと、良い形は僅か。左に寄せてから使いたい右も、左サイドがそうした状況ではうまくスペースを得ることが出来ていなかった。

マドリーにとって幸運だったのは、マドリーの攻撃以上にシティの守備が不出来だったこと。シティの攻撃の形がぼんやりしていたのはやむを得ない部分もあっただろうが、守備も締められず、緩くなるとは思っていなかった。

それなりに人数をかけた前線のプレスはあるが、散発だし後ろとの連携も取れていない。そのため、マドリーはきちんと人数を割いてこれをかわすことができていた。中盤より後ろも距離が遠く、マドリーのようなレベルのクラブ相手には致命的とさえいえるほど。

そうしたことからずるずると下がらざるを得なくなり、マドリーは跳ね返されたボールを悠々と回収できていたし、ポジションを高く取れるので、間にクロースやモドリッチが入り込んでブロックのズレを誘うこともできるようになっていた。

とはいっても、そこからゴールに繋がるチャンスが多数あったかというとそうではない。シティの不出来に助けられてある程度のところまでは行くが、エリア付近での崩しはアイデアが少なく、そうそう得点できるとも思えなかった。

■問題はありつつも

このように、シティ、マドリーともに問題があり、互いにやりたいことを十分にやれなかったことから、試合としては序盤からなんともぱっとしない展開に。

チャンスは少なくても守り合い、中盤のせめぎあいに見所が多い試合もあるが、互いに守備は最低限の約束を守ってはいたもののそれ以上ではなく、速攻に繋がるようなプレスもなかったことから、見所が極めて少ない試合となった。

シティは早い段階で負傷によりコンパニを失い、マンガラを投入。緊急的な対処が必要となってしまい、難しい状況に追い込まれた。

コンパニが交代したことが全てではないが、これによって守備に更なる不安を抱えることになったことは確か。もともとふわっとしていた守備が更に不安定になって、マドリーとしてはそれなりに良い場面を作れるようになっていった。

先制点は20分。右サイドでフリーになっていたカルバハルにパスが通り、そこからエリア内でラインの裏へ走ったベイルへ。角度はなかったが、クロス気味のボールがフェルナンドの足に当たり、これがハートの上を越してゴールに入るコースに飛んだ。

ボールのコースが変わったのは幸運。だが、ベイルが不得手な右足で蹴ったチャレンジが生んだゴールでもある。何度も書いているように、ここで切り返してしまうか、勇気を持って右足で蹴り込めるかが大きな違いとなる。右サイドでプレーする以上、こうした場面では多少精度が悪くても蹴って欲しいし、そうしたプレー選択があってこそ、こういうゴールが生まれることになる。

記録としてはオウンゴールとなったものの、ベイルの判断を評価したい場面だった。

リードを得たマドリーは、慎重なプレーに切り替え。

シティのサイド攻撃を丁寧に処理、ピンチは奪われてから左に展開されてシュート、ポストに当たって事なきを得た場面くらい。中盤の攻守も激しくなく、全体としてはこれで良いのかという思いになってしまう試合展開に。

差が1点、アウェイゴールを奪われれば一気に窮地となることを忘れてしまいそうで、セットプレーやちょっとしたミスからの失点でだらけた報いを受けそうな、不安な状態のままハーフタイムを迎えた。

■不可解なシティの姿勢

56分にヘセに代えてルーカス・バスケス。シティにとって唯一可能性があったサイド攻撃に対処しようという交代。

相変わらず攻撃はぱっとせず、速攻につながる守備もなかったので、2点目を取れそうな雰囲気はなし。30分以上を残し、徐々にとは言え、ここから守りを意識しだすのは少し早すぎるのではないかと思われた。

対するシティは、62分にヤヤに代えてスターリングを投入。結局高い位置で効果的なプレーはなかった。シルバの代わりとしては、十分とはいえない出来。疲れてくる時間帯に彼を諦めてスターリングを入れ、サイドを中心にスピード勝負できる形へとシフトした。

1点取れば良いシティが攻撃的に交代を出来る一方、マドリーは守備的な交代が限られていた。早い時間にルーカス・バスケスを出したため、あとは最後を凌ぎきるためにバランを入れることが出来るくらい。

イスコをハメスに代えたのは中盤の運動量回復を意図してのものだろう。ハメスの立場もあるので、こうした試合で出番を作ることは大事。

ただ、得点が奪えておらず、全体の流れとして緩く、1点差では何があるか分からない状況でこの交代は、不安が大きかった。

シティとしてはこのあたりにつけ込むチャンスがあったかもしれない。

イスコと比べると後方に下がる意識も少なく、低い位置でのプレーが得意ではないハメスが入り、マドリーの攻撃も守備もこれまでとは違うものになる恐れもあった。

直後の69分にイヘアナチョを投入したのには、ここをきっかけとしたいペジェグリーニの意図が見える。

しかし、シティは最後までふわっとしたプレーに終始。

確かに、もともと望んだような形ができなかったのであるし、追いかける展開で、攻撃的なプレーヤーを入れて多少バランスを崩していることもある。だが、そうしたチームとしての形とは別に、一つ一つのプレーに気迫が感じられなかった。

マドリーにも十分隙があったのに、速攻につながる奪い方をしよう、サイドから何とかボールを供給しようというような熱意が感じられなかった。いろいろ考えても、結局のところ、プレーヤーが頑張るしかないという面はある。そこでどれだけしっかりプレーするかによって、試合展開は大きく変わってくるもの。

マドリーもしばしば気の抜けたプレーをしてその罰を受けるし、その一方で、バルセロナ戦では普段からそれくらいでやれればとも思ってしまう熱意のこもったプレーをするので、そうした浮き沈みの差は痛感している。とはいえ、通常であれば何も言わなくても全力で行くようなCL準決勝という大きな舞台で、モチベーションの感じられないプレーをする理由はわからない。

ペジェグリーニともあろう監督が、ここまで試合に入れないままのチームでこの試合を迎えたことは不可解という他ない。

マドリーは、ギリギリの展開ならバランを入れるかと思っていたが、それもせず。最後の交代ではモドリッチを下げコバチッチを投入した。、最後の時間の運動量を気にしたという点は理解できるが、中盤の核を交代させたことには驚いた。ボールの失い方さえ気をつければ大丈夫という判断のようであり、ジダンとしてはスクランブルでバランを入れなくても良いということだったのかもしれない。

それほど後半のシティのプレーは対処しやすかったとも言えるだろう。

ただ、それでも石橋を叩いて渡る慎重さがあってもよかったようにも思う。ここでバランを入れて凌ぎきるのではなく、ポジションを維持してコバチッチを入れたような考え方が、ジダンの甘さとならなければ良いのだが。

結局、シティのシュートは4本だけ。枠内は前半のポストに当たったシュートのみと、最後のところは何もさせなかった。

チャンスを作りながら決められず、その点については不満も残るが、ロナウドが負傷明け、ベンゼマがいないという状態で得点を挙げ、この試合を90分で終えられたことを評価すべきだろう。

負傷者の穴埋めという点で、マドリーはシティを上回り、個々のプレーヤーのモチベーションとそこから来るプレーレベルでも差があった。この舞台としてはしまりのない、見所の少ない試合だったことは疑いなく、前日の試合を見た後では尚のこと試合内容に不満は感じてしまうが、この試合だけを見た時、難しい状態の中で勝ち抜けという結果を得るにふさわしかったのはマドリーの方だろう。

最高峰のレベルではなくとも、それなりに対処することで、マドリーはデシマのシーズン以来の決勝進出を決めた。

■決勝へ

モチベーションの維持は難しい。

最高レベルのプレーヤーを死に物狂いで働かせるという課題に多くの監督が苦労してきた。マドリーも前半戦は同じような問題を抱えていたことが思い出される。

この試合でも、シティの面々がもっと動いていれば、最後の15分ほどでなりふり構わずプレーしていれば、マドリーの決勝進出は覚束なかったかもしれない。

何気なく左足に持ち変えるか、右足でも何とかボールを送ろうとするのか。得点の場面で触れたように、ベイルが不調の時のように消極的な判断をしていれば、決勝点は生まれていない。

気持ちの問題で全てを片付けるつもりはないが、プレーの選択はピッチにいる各々がするしかなく、モチベーションがその選択に少なからず影響を与える以上、拮抗したレベルにおいては、良いムードで試合に入った方が良い選択をし、良い結果を得る可能性が高まるのだと改めて感じた。

決勝はアトレティコとのデルビー。CL決勝、デルビーというだけでも十分だし、最近の対戦成績が悪いマドリーがここでチャレンジする気持ちにならないことは考えづらい。

あとは、ベンゼマ、カゼミロ、ロナウド、この試合で負傷したナバス、ベイルといった面々がコンディションを整え、心身ともに万全の状態で試合に臨めることを祈りたい。

決勝は5月28日にサン・シーロで開催される。