マドリーにとっての鬼門のひとつ、リアソールでのデポルティーボ戦。初戦からなかなか面倒な相手とスタジアム。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース;イスコ
FW:ベンゼマ、ベイル
66分:イスコ→アセンシオ、72分:カゼミロ→マルコス・ジョレンテ、80分:ベイル→ルーカス・バスケス
先発はスーパーカップのマンチェスターU.戦と同じ。バルセロナ戦で輝いたコバチッチはお休み、アセンシオもベンチスタートとなった。
■デポルティーボの先発メンバー
GK:ルペン・マルティネス
DF:フアンフラン、シェア、シジネイ、ルイジーニョ
MF:ギリェルミ、モスケラ;フェデ・カルタビア、ボルヘス、バカリ
FW:アンドネ
54分:バカリ→ブルーノ・ガマ、65分:ボルヘス→アドリアン、79分:フェデ・カルタビア→ボルハ
契約条項により出場できなかったが、フェデ・バルベルデがカスティージャからレンタル移籍している。このメンバーの中でどれくらい出場機会が得られるだろうか。
■難しいベイルの扱いも、ゴールは大事
基本的にマドリーがボールを持つ展開。デポルティーボのプレスはそれほど厳しくなく、時折追われることはあっても低い位置でも問題なくかわして展開できていた。
それほどプレーの強度を高めているようには見えないのに、個人の技術でも、複数人でのパスワークでも余裕を持って回避できているところに、充実振りが伺える。
そうなった時に問題となってくるのがベイルの取り扱い。
ボールを持って押し上げられるのがチームにとってメリットが多くあることは当然なのだが、縦の奥行きはなくなるので、ベイルの能力は生かしづらくなる。
サイドに出た時に仕掛ける余地がないため、サイドでは繋ぎに徹するほかなく、得点に絡むためには中央でクロスを待つことが多くなるのだ。
狭い局面でボールを失うとか、流れを悪くするといったプレーがなくなったのは、マドリーに来て以降の彼の基本的な技術の向上を示すもの。しかしながら、そういうことをメインで求めるなら、彼よりも適任者がいる。ベイルの長所を生かしてゴールに向かうプレーをしてもらうには、センターフォワード的に振舞うしか今のところない。
そうなると、ロナウドと役割が重複することになる。この試合ではロナウドが出場停止でいないため、こうしたプレーで味方と被るようなことはなかったが、問題なくロナウドがいる場合は、ベイルはその控えとならざるを得ない。
ベイルが個人的にそれで良いなら軋轢は少ないのかもしれないが、ベイルが早くも「ロナウド化」しているとなると、彼らの併用やBBCの並ぶ形は採用しづらくなる。
中盤が充実しているがゆえに、スタイルの面でそこに組み込めなくなっていることが見て取れる状況だった。
ただ、そのベイルが先制点を挙げるのだから面白い。
20分、モドリッチのミドルシュートをGKが前にこぼし、ベンゼマの元へ。GKを外すパスをベイルに出して、ベイルが誰もいないゴールに蹴り込んだ。
フォワードとしては、何はともあれゴールを決めることが大事。扱いが変わりつつある中で目に見える結果を出したことで、彼自身のプレーも良い方向に変わって行ってくれれば。
■自由なカゼミロ
更に27分、40本以上のパスを繋いで自陣から組み立て、最後はマルセロの速いクロスにカゼミロが合わせて追加点。
今のマドリーは、バルセロナ戦のようにカウンターも出来るし、こうしてポゼッションしながら相手を崩していくことも出来る。相手に合わせてやり方を変えつつ、効果的な攻撃でゴールに迫ることが可能なのが、毎試合得点する強さの根源だ。
ゴール前にカゼミロが参加しているのは、中盤の形を流動的に変えながら攻撃を作るメリットの1つ。クロースとモドリッチが低い位置のカバーを意識するので、流れの中でカゼミロがするすると前線に出て行くことができている。
一方で、カウンターを受ける時に枚数が足りなくなることがあるのが、カゼミロの自由さ、流動的な中盤のデメリット。
アンドネは序盤から何度か裏を狙って決定的な場面を作っていたし、バカリやフェデ・カルタビアも良い動きを見せていた。個の能力で何とかできたから大事にはならなかったが、彼らがマドリーの守備を少しはがせれば、人数が足りなくなりそうな場面は何度もあった。
どういった場面なら攻撃参加するのか、ある程度は整理していかないとやられることは増えるだろうし、何よりこの3人でなければうまく行かないということにも繋がる。
中盤の流動化に伴うゴールという結果と、不安定な守備の両方が見られた試合となった。
■攻め合いから3点目
両チームともプレシーズンの疲れがあるのか、前半の終わり頃から互いにかなりスペースを空けての試合に。せっかくリードがあるので、行ったり来たりの展開が長く続くことは望ましいものではない。
が、そこはマドリー。こうなると生きてくるベイルを中心に、速い攻めもしっかり作って、デポルティーボのゴールを脅かし続けた。
62分、ベンゼマ、イスコ、ベイルと左サイドで繋いでボールを運ぶと、エリア内へ仕掛けたベイルからマイナスのクロス。これをエリア外までフォローしてきたクロースがしっかり決めて3-0。
速攻の形ながら、この場面にクロースが登場するのも、2点目と同様自由な中盤のメリットだろう。
えぐってマイナスのクロスを入れるパターンは昨シーズンから何度も見られる形。CL決勝でのロナウドの2得点もそうだし、アトレティコ戦でもこうしたゴールが見られた。
誰かはフォローに入ってきてダイレクトでシュートできるポジションを取る約束になっているのだろう。エリアすぐ外あたりへの折り返しはこの試合だけでも目立っていた。
■終盤は悪いマドリー
3-0となって磐石、といかないのがマドリーお馴染みの悪い癖。
間延びするのはやむを得ないにしても、アウェイゲームでもあるのだから、事故が起こらないよう淡々と試合を締めて良いのだが、緩んだら緩みっぱなしでばたついてペナルティを献上。
アンドネが外してくれたのでクリーンシートとはなったが、今シーズンもマドリディスタはこういう終盤を何度か味わうことになる、という良い予告になった。
しかもアディショナルタイムにセルヒオ・ラモスが2枚目のイエローで退場。これも最早お馴染みで、リーガ史上最多タイとなる18回目の退場となった。
2枚目は相手から接触があったもので、マドリーも取り消しを求めるようだが、そもそも1枚目が暴力行為で、一発退場でもおかしくなかった。それを考えれば、あわせ技でやむを得ないかとも思う。
追う展開で気が立っていたならわからないでもないが、2点のリードがありながらわかりやすく相手に手を出す必要はない。序盤からアンドネを掴まえ切れていなかったこともあってか、フラストレーションがあったのだろうか。
今更彼が変わるわけもないので、感情を動かすなと言うつもりもないが、損得勘定で考えてこんなもったいないカードはもらわないようにしてくれれば良いのだが。
終盤は余計なことが積み重なったものの、リアソールで3得点の勝利は十分すぎる結果。2つのカップ戦に続き、きっちり勝利を挙げてリーガの開幕を飾った。
■最後に少し
どんな流れでも点を取れそうな攻撃の質は素晴らしい。今のところは守備の不安を補って余りあるといえる。あとは、試合の間隔や相手の状況に合わせて、メンバーや形を少しずついじって調整していければ。
せっかくの選手層を生かしていかない手はない。
次節はベルナベウでバレンシア戦。再建中だが、デポルティーボに続いて厄介な相手との対戦となる。
ロナウドは相変わらず出場停止、現状のままではセルヒオ・ラモスも欠く状況で、不安はある。特にセンターバックはバジェホも負傷中で招集できるか微妙。ナチョとバランのコンビで落ち着いたプレーを望むしかない。
重鎮2人がいない試合、今のマドリーらしく、若い優秀なプレーヤーの活躍に期待。