今シーズンのリーガを左右する直接対決。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:セルヒオ・ラモス、カンナバーロ、メッツェルダー、エインセ
MF:ガゴ、ラス;ロッベン、マルセロ
FW:ラウール、イグアイン
59分:マルセロ→フンテラール、72分:セルヒオ・ラモス→ファン・デル・ファールト、79分:ロッベン→ハビ・ガルシア
■バルセロナの先発メンバー
GK:バルデス
MF:トゥーレ;シャビ、イニエスタ
FW:エトー、アンリ、メッシ
61分:アンリ→ケイタ、86分:トゥーレ→ブスケツ、イニエスタ→ボハン
バルセロナも手抜きなし。ローテーションせずベストのメンバーで臨む。
■右へ、裏へ
プジョルを空けておいて、パスを出させるのはバルセロナ対策の定番。
ところが、マドリーはそんな定石に構わず、序盤から追いかけまわす。シャビとイニエスタは基本的にはラスとガゴが見なければならないはずだが、マークを外してでも前で追いかけようという意志が見えた。
だが、ひきこもらずプレスをかけるやり方は、いなされると一転してピンチに陥る。
メッツェルダーが入って高くなっているラインの裏を狙うバルセロナが、いい形を何度も作っていた。
マドリーのプレスは、頑張ってはいたけれども、選手個々がそれぞれに追うといった印象が強く、高い位置でボールを奪う場面が少なく、シャビとイニエスタを空けてしまうことが多かった。
ロッベンがいて、セルヒオ・ラモスがいる右サイドがマドリーの主な攻撃手段。バルセロナもその裏を狙って左サイドをよく使うので、画面手前にボールがあることが多い。
ロッベン対アビダルではロッベンが勝てるのが序盤でわかったので、ここにはバルセロナの選手が2人以上つく。寄っていくラウールやイグアインと上がるセルヒオ・ラモスと数的優位を作ることを狙う。
先制はその右サイドからマドリー。14分、セルヒオ・ラモスのセンタリングにフリーのイグアインが合わせた。
これで面白くなるかと思っていたら、17分、左サイドで抜け出したアンリがうまく流し込んですぐに同点。さらに19分、シャビのフリーキックにプジョルが合わせて一気に逆転を許す。
マドリーが先制した時にイグアインをフリーにしてしまったプジョルがやり返した。
マドリーは前線でくさびのボールを受ける選手がいない。イグアインがそうした仕事をそれほどしないのはわかっていたので、ラウールがもっと受けに来ても良かったのだが。
くさびが入らないので、中盤が楽にならない。長い距離からロッベンを狙うくらいしか効果的な手がなく、確率的には低くなる。前で受けられる選手が揃うバルセロナとの決定的な違いが見える。
ガゴ・ラスは守備では頑張れるが攻撃的にボールを扱うことはできない。やはりグティの不在が悔やまれる。
35分、出しどころがなく困った感じのラスにバルセロナのプレスが掛かり、シャビがボールを奪うことに成功。最後はメッシが落ち着いて決めて1-3。
防げたはずの失点を喫して、前半を終える。
■対策がおかしい
後半開始時点では両チーム交代なし。
後半の最初はマドリーが気持ちを入れ直してきた感じがして、ボールを持って攻めようとしていた。50分過ぎまではバルセロナを押し込み、チャンスをうかがう。
この時間帯にマルセロが初めて(と言っていいだろう)まともにボールを持っていた。
56分、前半と似たような位置からのフリーキックをロッベンが蹴り、するするっと入ってきたセルヒオ・ラモスに合わせて2-3。
1点差として、さあここからという時に、アンリに簡単に裏を取られ58分に2-4。高いラインになるのは良いとしても、パスを出す選手、受ける選手の両方ともに楽なプレーを許している。バルセロナにとっては簡単なプレーで得点を奪われ、勝ちは遠くなった。
59分にマルセロに替えてフンテラール。
攻撃的に行くにはまずフンテラールを入れるほかないが、中盤に下がってまでフンテラールが守備をするのでは意味がない。相手最終ラインを追う守備をさせたいが、簡単に中盤にボールが入るからこうなる。ということはマドリーの中盤の守備がおかしいということだろう。シャビとイニエスタが楽に前を向けるのは、どう考えても対策として間違っていた。
72分、セルヒオ・ラモスに替えてファン・デル・ファールト。前でボールを奪うチャレンジをしては一歩遅く、アンリにかわされてばかりだったセルヒオ・ラモスにブーイング。2点目を取ってはいるのだが・・・ディフェンスで良いところがなかった。
75分、メッシが得意なワンツー。シャビにボールを預け、すっとエリアに入っていく。シャビの反転も見事でガゴがかわされ、エインセはパスコースのフェイントに引っかかり完全に抜け出しゴール。
これで試合の行方は決まり。
最後にピケにもゴールを決められ2-6の完敗。
■将来へ
ホームということもあって、完全なひきこもりはせず、前で奪うことを狙ったマドリーだったが、まったくうまくいかなかった。
中盤でいい形でボールを奪うシーンはなく、逆にスペースを与えられたバルセロナが好きなようにボールを支配した。
退いてカウンターに徹するのが一番可能性があったはずで、色気を出して失敗したという印象も持つ蹴れど、サンチャゴ・ベルナベウで前回対戦のような試合はできないというのは、一つの事実。
仕方のない面があることは否めないだろう。
良くないことばかりの試合で、リーガの行方もほぼ決まってしまったが、今のマドリーの限界を見られたのは良かった。今後の糧にしたい試合だ。
特に、ガゴ・ラスの前にパサーがいないことの大きさははっきりした。
彼らが守備で頑張って奪ったボールを攻撃に切り替えた時にどう活かすのか。それをできる選手がいないと、まともにボールが繋がらない。強豪との試合では、守ってばかりではいずれゴールを割られる。相手の脅威になるボールを出せる選手が必要。
くさびを受ける選手がいないのがもうひとつ大きな課題だ。
奪ったボールを高い確率でポゼッションできるかどうかで、試合の流れは随分と変わる。中盤が前を向けないのでは苦しい。
これらはグティとファン・ニステルローイが怪我から復帰すれば解決する課題だろうか。
確かに今とは違う形が見られるだろう。しかし両選手はともに30歳を過ぎたベテラン選手で、これからも長く頼っているわけにはいかない選手たちだ。いつかは新しい選手に代わって活躍してもらわなければならない。
じゃあどんな選手が必要なのか。その選手は今マドリーにいるのか、獲得しなければならないのか。
そのあたりは選挙での議論をしっかり聞きたい。
「見ていて楽しい試合を」という以前に、強豪には実力負けしてしまう現状を変えなければならない。「まずは勝てなければしょうがない」のであって、そのためのプランを見せてほしいと思う。