大いに盛り上がったセビージャ戦を今更ながらに振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
MF:シャビ・アロンソ;ラス、マルセロ;カカ
55分:アルベロア→ファン・デル・ファールト、ラス→グティ、77分:カカ→ラウール
マルセロが久々の中盤。グラネロ、ファン・デル・ファールト、グティがベンチだった。
■セビージャの先発メンバー
GK:パロップ
DF:コンコ、スタンケビシウス、ドラグティノビッチ、フェルナンド・ナバーロ
FW:ネグレド
20分:コンコ→アドリアーノ、48分:カペル→カヌーテ、77分:ネグレド→ドゥシェル
3位争いの真っただ中にいるセビージャ。ネグレドはそれなりに時間をもらって頑張っている。中盤の前3人は強力。
■2トップをどう生かすか、扱うか
ロナウドとイグアインの2トップが以前の好調時、2009年末の頃よりサイドに開かなくなっていることは以前にも書いた。
エリアの幅でプレーすることが多いということは、自ら得点する機会を多く持とうとしていることを意味する。
彼らが中央にいることが多いと、カカやファン・デル・ファールトといった選手がフォワードのポジションに入ってくることができなくなるので、ポジションチェンジは少なくなる。
チームとしてみた場合に、より効率的に機能するのは、昨年末の2トップがサイドに開くやり方の方だ。
その意味で、この変化はチームにとってありがたいものではなく、”個人のための”変化だった。
だからといって、この2トップが自己中心的なのかというと、そうではない。
この試合では、いつもにも増して積極的にボールを追っていた。ゴール以外でもチームのために働こうという姿勢は素晴らしい。
問題は、この献身的な姿勢をどう効果的に生かすかだ。
今節は中盤より後ろが前線の守備についていかなかった。セビージャを相手に最初からラインを押し上げることへの警戒があったのは確かだ。
一方で前線はビッグゲームに張り切って動き回っている。
このあたりの整合性をどうつけていくかが、今後に向けてとても大事に思われる。
リーガでは積極策、CLのようなトーナメントでは安全第一という使い分けがしっかり出来ていくと、安定してくると思うが。
さて、試合は10分、シャビ・アロンソのオウンゴールでセビージャが先制。
ヘスス・ナバスがうまくマドリー左サイドを破った点、そのクロスが逆サイドの流れた後、カペルが時間をかけずにダイレクトで折り返した点でセビージャが良かった。
左右に視線を振られるとやっぱり辛い、ということがよくわかる失点だった。シャビ・アロンソの責任ではない。
前述のように、マドリーは2トップの幅が狭く、中央で攻める。
ごちゃごちゃしているが、適度にミドルシュートがあったことで、ストレスが溜まる印象はそれほどなかった。
ただ、シュートを処理するたびにパロップが安定してきているのが嫌な感じだった。
前半の枠内シュートは9本。
狭い中央でもチャンスを作り、シュートを放っているロナウドはさすが。
■交代策的中
失点以降の前半に、何とかなりそうな雰囲気を感じていただけに、ドラグティノビッチのフリーキックでの失点は残念だった。
カシージャスはシャビ・アロンソがクリアすると思い、シャビ・アロンソはカシージャスが処理すると思った、すれ違いでの失点。CLでは絶対に見たくない、余りにももったいない失点の仕方で0-2。
2点差がついてしまったので、55分にアルベロアとラスに替えてファン・デル・ファールトとグティ。
マルセロをサイドバックに下げて、攻撃的構成に切り替え。
交代策でチームの姿勢はよりはっきりした。
グティは縦パスで前線にボールを供給し、ファン・デル・ファールトはフォワードのラインまで飛び込んで仕事をしようと動いていた。
特にファン・デル・ファールトの動きによって、ロナウドとイグアインは、広くピッチを使うようになり、結果としてチームがよく機能するようになった。
60分、マルセロのパスがカットされてこぼれたところにロナウドが反応して決め、1-2。
さらに64分、グティのものすごいミドルの後のファン・デル・ファールトのコーナーを、セルヒオ・ラモスが頭で合わせて同点。
こうなるとサンチャゴ・ベルナベウのファンは心強い。
ものすごい盛り上がり方で選手を後押ししてくれる。現金だなあと思うが、見ていてわくわくするスタジアムに一瞬で変貌するのは面白い。
互いに攻め合う展開になって、これはマドリーにとって好都合。
押せ押せムードの中、ロスタイムにセルヒオ・ラモスのクロス、イグアインのヘッドがパロップに防がれたところにファン・デル・ファールトが詰めて3-2。
大逆転で上位対決を制し、アルメリアと引き分けたバルセロナと勝ち点で並び、得失点差で首位に立った。
■もろもろ
55分の交代策が当たった。
一刻の猶予もないことを選手たちにはっきり示したし、ファン・デル・ファールトの動きでスペースがうまくシェアされるようになり、そこにグティの縦パスが送り込まれるという、良い組み合わせができた。
交代策にはあまり積極的ではないペジェグリーニだが、この交代は結果も出ているし、評価できるものだ。
一方セビージャはカペルを下げたのがもったいなかった。
カヌーテより、独力で何とかできるカペルがサイドにいた方が、マドリーとしては攻めに転じにくかったのが正直なところ。
リヨン戦では、シャビ・アロンソが出場停止のため、ファン・デル・ファールトかグティに出番があるだろう。
今節同様の働きを期待したい。
それと、最初に書いたように、張り切って動くトップの動きをどうするか。
セビージャ戦の勝利で盛り上がるはずなので、それにどこまで乗って、どこで自重しておくかというバランス調節が重要になってくる。