リーガ、サンチャゴ・ベルナベウでのバルセロナ4連戦の初戦を迎えた。スタジアムの雰囲気は素晴らしい。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
56分:ベンゼマ→エジル、66分:シャビ・アロンソ→アデバイヨル、ディマリア→アルベロア
マルセロは最終ラインで起用された。そしてモウリーニョはペペの中盤起用を採用。3センターできっちり守って、速い攻めを狙う。
■バルセロナの先発メンバー
GK:ビクトール・バルデス
FW:ペドロ、メッシ、ビジャ
58分:プジョル→ケイタ、66分:ペドロ→アフェライ、79分:アドリアーノ→マクスウェル
プジョルが負傷明けで先発。間に合わせた、という感じ。
考え得る限り、ベストな布陣。
■ペペシステム
ペペのアンカー起用は、少なくとも公式戦では前節のアスレティック戦が初披露だった。それをこの試合でも採用。
バイタルのスペースをとにかく使わせないようにするのが第一の目的で、シャビ、イニエスタ、メッシにはある程度ついていって、気分良くボールを触らせないようにするのが第二の目的。
シャビとイニエスタに時間を与えないように、シャビ・アロンソとケディラも高い位置までついて行っていた。
バルセロナのボール支配率は7割を超えていたが、このやりかたでバイタルを使わせないことに成功。
ディマリアはいつものことだが、ベンゼマ、ロナウドもパスコースを消しに戻っていたので、中盤の3人はかなり的を限定してプレッシャーをかけることができていた。ペペがきっちりポジションにいる時はすぐに体を寄せられるので、メッシも徐々にポジションが下がり、怖くない位置でのプレーを強いる時間帯もあったので、この”ペペシステム”はおおむね成功したといっていい。
危なくなる前に低い位置でつぶしに行くこと、シャビ、イニエスタに楽に仕事をさせないこと、メッシをバイタルから追い出すこと、これらのミッションは完遂できた。
危ないのは、ピケが持ち上がってくる時に誰が見るのかあやふやなこと、チャンスとみてプレスをかけに行った後、陣形を修正する前にシャビから良いパスを出されていたこと、ビジャ、メッシ裏狙いへの対応。
バルセロナはスタイル通りに組み立てなおしてくるが、守備網が整う前に仕掛けられたらまずそうな場面もあり。そのあたりも織り込み済みでペペやケディラが前へ出て行っているのかもしれないが、そうだとしたらよく計算されている。
守備は機能した、では攻撃はどうか。
奪った後、前線の3人が良い位置にいたら長いボールで狙うのがファーストチョイスだったが、特に右サイドから左サイドのディマリアへのロングボールは良くチャンスを作っていた。
ディマリアはボールを奪ってからちゃんとフリーランをしているから、アウベスの裏を狙って競走ができる。
ロナウドは、足元へのパスを多く求めるので、プレスにかかる頻度がとても高い。効果的なのがディマリアの方なのは明らかだった。マルセロがボールを持った時に右サイドを走れば、そこを狙う意思統一はされていたし、何度かに一回は良い形になるとは思うのだが、そうなった時は中に絞っていることも多い。
であれば、前半のゴール前での決定機は決めておかなければならない。
ベンゼマは、彼までボールがどんどん入るわけではないし、一発で裏を狙うわけでもなかったが、キープして落ち着かせる地味な仕事をこなしていた。シュートを放ってコーナーを得る場面もあり、少ないながらも攻撃面で仕事はできていた。
■PK後
バルセロナのPKの場面はアルビオルがお粗末。エリアでビジャに前を向くチャンスを与えたこともそうだが、その前のボールの処理をそもそも間違っているから、そういう厳しい対応をする羽目になる。
レッドはちょっと厳しいように思うが、PKは妥当。ああいう対応をするようでは、今後任せるのは不安だ。
10人になったマドリーは、一旦ペペを最終ラインに組み込む4-4-1で修正。
56分にベンゼマに代えてエジルを入れてからはロナウドをトップにし、その後ディマリアとシャビ・アロンソに代えてアルベロア、アデバイヨルを投入し、結果、
FWアデバイヨル
という形に。
これにより、ペペシステムを再構築した。また、アデバイヨルへの放り込みからロナウドやエジルがセカンドボールを拾う形を狙う。
アデバイヨルが入ってからは、ちょうどプジョルが負傷交代してしまい、高さ、強さを失ったこともあり、バルセロナのラインを下げさせることができた。ヘディングが好きでなくとも、アデバイヨルの高さがあれば、単純に跳ね返されることは少なくなる。こぼれたところにうまく詰められれば面白い。
バルセロナのラインが下がったことにより、マドリーにとってのスペースもできてきた。エジルがキープして時間を作り、ケディラが入りこんできたり、ロナウドやアデバイヨルが開いてもらったり、後半の途中からは一定の攻めの形ができていた。
バルセロナにもビジャに左サイドで2度ほどチャンスを与えてしまったが、負けている状況では、こういう展開もやむなし。それより、攻撃の形を作って良い場面を迎えられていた期待感があった。
攻めた後、だんだん疲れてきて、前半同様に戻るのは大変だったが、遅攻の時の2ラインの形成は見事。
モウリーニョは、インテルでの守備組織をマドリーでも構築したように思えた。攻撃が大好きな選手たちに我慢をさせて、チームのために動いてもらう、そこまでモウリーニョはよく鍛えた。
82分、マルセロが得たPKをロナウドが決めて同点。ロナウドはバルセロナ戦初得点。
あの場面、マルセロが他のクラブとの対戦と同様に、エリア内へ駆け上がっていったことが素晴らしかった。守備で粘って、ここぞで上がって攻撃での仕事をする。あの場面で仕掛けることはアルベロアでは不可能で、あれこそマルセロのプレーだ。
その後、互いに良いところまで行くものの、最後まで守備は乱れず1-1で終了となった。
■コパ&CLへ向けて
ペペシステムの成功により、守備は一定の目処がたったと言っていいだろう。アルビオルが不安なので、セルヒオ・ラモスがセントラルに入るか、コンディションが良ければガライの起用を考えた方がいいが、中盤で相手に仕事をさせなければ、大分良いところまでいくだろう。
攻撃面では、オフザボールで素晴らしいディマリアが、ボールを持つとプレーのチョイスが悪いのが残念。
あとは、ロングボール狙いは明らかなので、先述のとおりロナウドはもっとフリーランをした方がよく、こちらはオフザボールが残念だった。
両サイドで彼らが走り、FWと2,3人でシュートへもっていくようにしたい。
あとはアデバイヨルを先発させて、最初から彼を狙うようにするかどうか。バルセロナのラインが下がるようであれば、効果的な選択肢となるが、セカンドボールを拾えないとバルセロナは安心して元の位置へラインを戻す。
アデバイヨルが先発するなら、セカンドボールの狙いをどうするか、ロナウドやディマリア、エジルが拾える位置に入りこむやり方を徹底できれば。
これは、トッテナムが第1戦でクラウチを中心にしたやり方と似ている。低い位置でも奪ったら、両サイドをシンプルに狙い、ダメならセンターフォワードに当ててセカンドボールを取りに行く。はまれば少ない人数で先制することは十分に可能だ。
実際のところ、勝ち点差は8のままなのでリーガは厳しくなったが、コパとCLで今日より精度の高いプレーを出来れば、勝利するチャンスは十分にある。
そういう戦い方を出来たと考えている。