マドリーにとって久々、ラウールも手に出来なかったコパのタイトルを勝ち取った試合を振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK;カシージャス
69分:エジル→アデバイヨル、103分:ケディラ→グラネロ、119分:カルバーリョ→ガライ
出場停止のアルビオルの代わりにセルヒオ・ラモスがセンターバックに入り右はアルベロア。ペペの中盤起用に変更はないが、ポジションは底ではなく左。
リーガでの対戦で良いところを見せたエジルが前線に入る。
■バルセロナの先発メンバー
GK:ピント
FW:ペドロ、メッシ、ビジャ
106分:ビジャ→アフェライ、108分:ブスケツ→ケイタ、118分:アドリアーノ→マクスウェル
コパのGKはピント。
プジョルが不在のため、最終ラインにマスチェラーノが入る。中盤より前は盤石だが、最終ラインに不安を抱えている。
■第2プラン
守備ブロックをきちんと作り、待ちかまえてボールを奪っていたリーガでの対戦。
モウリーニョはそこから積極策に打って出る。すなわち、ペペとケディラを中心とした高い位置からのプレスの敢行。
ペペやケディラはロナウドと並ぶ位置まで相手を追いかけていくこともあった。ロナウドの1トップを最大限生かす、カウンターを効果的に狙う意図で、奪えれば一気に得点のチャンスになるが、かわされれば数的不利になる恐れの高い、攻撃的なやり方だった。
結果的には、マドリーのプレスにより、バルセロナのパスのリズムは狂った。
安全策を取って、ボールを下げる場面が多く、縦にくさびをいれさせない守備ができていた。また、マドリーも出ていく時と下がっていい時の判断が良く、欲張って出て行ってピンチを招くようなプレーがなく、統制のとれた守備をこの試合でも続けることができていたと言っていい。
もっと高い位置でボールを奪えれば満点だが、バルセロナ相手にそれはむずかしい。ピントも正確に繋げており、欲張ると痛い目にあうので、無理せずリトリートするやり方のほうが、最終的にはよさそうだ。
これでマドリーは誘い込んでボールを奪うやり方と、前線でプレスしてボールを奪うやり方の2通りを提示したことになる。
シャビ、イニエスタ、メッシを抑え、バイタルを使わせないのに効果的な戦術だが、これはペペの中盤起用がカギであり、彼とケディラの身体能力、攻守にさぼらない精神力、そして下がる時は下がる判断力があって機能した方法だ。
守備に重きを置くならリーガでのやり方(第1ペペシステム)攻撃にメリットがあるのはこの試合でのやり方(第2ペペシステム)だが、どちらも同じ組み合わせの中盤で、配置を変えて役割を変えれば切り替えが出来るのが非常に大きなメリットになる。
つまり、成熟すれば試合中に変換することも可能になるわけで、試合展開によって形を変えられる、今後も有用なシステムになり得る可能性を見せたと考えられる。
さて、前線の3人も守備には参加。
ディマリアはどこまでもアウベスにお付き合いしていて、試合を通し、オーバーラップしてもくっついて行ったのは面白い。マルセロと上下が入れ替わることもあり、攻撃面ではメリットを失うが、彼のスタミナを最大限に生かしたサイドでの守備だった。マークを受け渡すよりは、この方が単純明快、やりやすいと考えたのだろう。
ロナウドは”それなりに”ボールを追っていたし、下がってもいた。ベンゼマに比べれば守備の運動量はさほど多くなかったと思われる。が、これまで彼に与えられてきた役割は攻撃。今回もそこはぶれなかったように思う。
最後の一人、エジルは、このやり方で一番大変だったかもしれない。とにかくスタミナを消耗するのに、常に走りサイドもケアしなければならないポジションは厳しい。スタミナが長所ではない彼が最初に交代してしまうのもやむなし。
であれば、出場時間内にもう少し攻撃にインパクトを残したい。彼が入ったことで、攻撃の改善はみられるが、より多いものを求めてもいいレベルに、彼はいる。
■バルセロナの対応とマドリーの不備
マドリーのペースだった前半を受けて、バルセロナは配置を変更。メッシを右サイドに出し、ペドロを左、ビジャを中央と入れ替えた。
これにより、マドリーはサイドのメッシのケアをしなければならなくなったが、ここで未熟さを露呈。ペペがどこまでサイドに出ていくか、またそれに連動するか、というところでうまくいかず、疲労もあって、中盤の中央にスペースを与えてしまった。
ここにシャビ、イニエスタがドリブルで侵入する。ずれた所でメッシに渡る、メッシもドリブルで突っかける、というバルセロナの流れになった。
メッシがドリブルした時にアウベスという選択肢をディマリアが消していたのは大きく、また、最終ラインの位置で最後まで粘る守備ができていたので、オフサイドにも助けられたが、結果無失点で終えることができた。
この精神力は大いに評価したい。
また、中央には強いがサイドにはそれほど強さを発揮できないことも判明したので、修正が必要なポイントを見つけることができたと言うべきだろう。もちろん、勝ったからその程度の振り返りで住んでいるわけだけれども。
■最後に
この戦術をより良く機能させるために重要だったのは、上でも少し触れているが、ディマリアの超人的なスタミナと最後まで与えられた役割をこなす献身的な姿勢だ。
決勝点につながるクロスをあげた時のワンツーでは、完全に読んでいたアウベスをスピードで抜き切っていたし、良く戻って守備に参加してくれていた。
また、ロナウドも得点という形でチームに貢献。彼もまた与えられた役割を最後の最後にこなしてくれた。
チームが1つになって、最強のライバル、バルセロナを下し、タイトルを獲得した。
この流れがCLにも生きることを期待したい。