特別な試合、とはいえ、そんな意味合いも薄くなるほど、近年対戦が多い。
■マドリーの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
MF:ケディラ、シャビ・アロンソ;カジェホン、エジル、ロナウド
FW:ベンゼマ
蓋を開けてみれば通常の4-2-3-1。ディマリアの代わりにカジェホンが入った。
■バルセロナの先発メンバー
GK:ピント
DF:アウベス、ピケ、プジョル、アルバ
MF:ブスケツ;シャビ、セスク
FW:ペドロ、メッシ、イニエスタ
74分:ペドロ→アレクシス・サンチェス、85分:セスク→チアゴ
コパでお馴染みのピントが先発。ベストメンバーと言って良い11人。
■思い通りの前半、攻め合いの後半
どんな相手にもやり方は変えないバルセロナに対して、マドリーがどんな対策を採るのか、というのがモウリーニョによるマドリーの初期のテーマだった。
今やマドリーはバルセロナ対策をほとんど完全に見つけ出している。前線は最終ラインのボール運びを阻害し、相手の持ち方が怪しいときはぐっと人数をかけて取りにいくこと。それがならない時は、きちんとリトリートし、ボールを得る位置は低くても良いから、長いボールでスペースのあるサイドを一気に攻めきること。
昨シーズンくらいから、こうしたやり方を徹底し、90分続けることができるようになってきている。
つまり、今のこの対戦では、双方ともやり方が整ってきていると言える。だから、基本的にボールを持つバルセロナがどう出るのかが大事で、マドリーはそれに合わせて微調整していけば良いということになる。
今朝のバルセロナは、前線の運動量に乏しかった。メッシがゴールマシーンとしての役割に徹しているのはわかってはいたが、ペドロ、イニエスタからマドリーのボールを囲い込んでショートカウンターを狙うようなシーンは、それほど多くなかった。
コンディションの問題かもしれないし、アウェイでは無理しないと決めてあったのかもしれない。いずれにしても、マドリーは後方でさほど無理なくボールを持てる時間があった。
そういう状況ならシャビ・アロンソは仕事が出来る。
最近、存在感が薄れている彼だが、何回か大きな展開をして、ボールを早く前に運ぶことに貢献していた。
マドリーにとっては、彼を中心に作った形がぴったりはまる流れ。
前線が高い位置でボールを奪わないので、バルセロナの中盤が低い位置からボールを繋いでいくシーンが多かった。
その時のマドリーの守備は、ベンゼマからスタートしてコースを徐々に限定していく動きで、これは効果を上げていた。確かに繋がれはするが、中盤以降が破綻しないように時間をかけさせ、狭いほうへ追い込めるシーンが何度か。実際に奪えた場面もあった。
それが上手くいかなくて下がった時、ポゼッションを回復したらボールを受ける役割が多かったのがエジル。彼は、守備にさほど労力をさかず、この役割を与えられているような印象だった。それほどカウンターの際にボールを持ち上がる回数が多かった。
彼がそのままゴールすることは難しいから、ボールを運ぶ間にロナウドやベンゼマが駆け上がってフィニッシュする形が狙いだったのだろう。その点、フィニッシュするべきロナウドやベンゼマがボールを運ぶより、この形の方が可能性が高い。
ただ、エジル自身にゴールを狙う意思が見られなかったことは本当に残念。彼が狙うことで周囲も使えるようになるのだが、パス第一のプレーが多く、結果としてディフェンスの目がエジルに集中しない。以前からの課題なので、改善してもらいたいところ。
マドリーはボールを蹴りださなければいけないような場面が少なく、余裕があったため、エッシェンとケディラが攻撃に絡んで上がる場面が前半何度もあった。
以前はそんなことを考えられないほど、速くボールを前に出さなければいけなかったし、それで前線に任せようという形になっていたのだが、そこまで慌てなくても良くなった。
慣れもあるだろうし、バルセロナがそれほど追ってこなかったこともあるが、前半やりたいことをやれていたのはマドリーの方だった。
50分に失点。
奪った後に再び奪い返されて抜け出したセスクがゴール。カジェホンがポジションに戻りきる前にスルーパスを出されてしまった。バルセロナらしい奪い返しからの攻めをやられて、アウェイゴールを与えた。
ここでチームが瓦解しなくなったのも、マドリーがバルセロナ戦で改善された大きなポイントの一つ。
浮き足立って失点を重ねた過去の姿はもうなく、落ち着いて試合を続けることが出来ていた。
とはいえ、ビハインドで終わりたくないマドリーは、前半より前にかける人数を増やしていく。マドリーの攻めは良い形を作っていて、ロナウドやベンゼマがあとちょっとのシュートまで何度もたどり着いていた。それらを決められなかったのはもったいない。
また、疲れてきてフィニッシュにいけなくなることが多くなると、バルセロナのカウンターに最終ラインが晒されることになった。ペドロが外した場面など、準決勝そのものが終わってしまいかねないような状況でもあり、前半とはうってかわって、撃ち合いといった様相となった。
ここで得点できなかったのは残念だったが、失点もしなかったことで、まだ運があるという印象。
同点ゴールはバラン。
セットプレーの流れからエジルのクロスに合わせた。
シャビのシュートをゴールラインで防いだシーン、カウンターでセスクのボールを奪ったシーンと、攻守に大きなプレーを見せてくれた。
■バランとディエゴ・ロペス
バランは、目立つ活躍もそうだが、90分本当に良く落ち着いて守備をしてくれた。技術的なことももちろんだが、精神的な面の能力の高さを示し、マドリーにいる理由を自ら証明した。
この落ち着きで19歳ということが末恐ろしい。今後を楽しみに出来る選手だ。
マドリーへの帰還を果たしたディエゴ・ロペスも落ち着いたゴールキーピングを見せてくれて、今後に向けて安心できる材料となった。
マドリーの雰囲気を知る彼が入ったことで、全くの新加入の選手よりもずっと馴染みが早いように思う。しばらくはアダンとの併用状態になるかもしれないが、カシージャスの穴をうまく埋めて欲しい。
チームとしては、チャンスがあっただけに決め切れなかったという不運と、2失点しなかった幸運が同居した感じ。
これまでになくチャンスがあったので、勝ちたかったところだが、チーム状況を考えれば、引き分けでも十分な結果と考えたほうがいいかもしれない。カンプノウで無失点はきわめて難しいミッションなので、いずれにせよ点は取る必要があったと開き直って第2戦を迎えたい。
■週末
今週末はグラナダとアウェイで対戦。
緊張感のある試合の後でゆるみが出ないように、一度リセットしてリーガに向かってもらいたい。結果はもちろんだが、特にこれ以上負傷者が出ることがないように願っている。