カンプノウで引き分け。良く追いついたと思う一方、リーガの勝ち点差を考えれば勝ちを得たかった試合だったという思いもある。
そんな内容だったこの試合を振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
MF:ケディラ、シャビ・アロン;ディマリア、エジル、ロナウド
FW:ベンゼマ
予想通りのメンバー。いろいろありながらも、この組み合わせをこれまで一番多く使い、成功してきているだけに、信頼はあるだろう。
■バルセロナの先発メンバー
GK:バルデス
MF:ブスケツ;シャビ、セスク
FW:ペドロ、メッシ、イニエスタ
最終ラインは緊急事態。サイドバックのアドリアーノがセントラルに入った。ボールを持つバルセロナといえど、ちょっと辛い組み合わせ。
■リーガの成功を踏襲
バルセロナのやり方は変わらない、ならばマドリーのやり方をどうするかということがポイントとなっていた最近の対戦。
マドリーがリーガで手応えを得ていたことから、そのやり方を踏襲。高いラインを保ちながら前線も守備参加は怠らない。非常にコンパクトな陣形でボールを奪えたら、エジルを経由してサイドやトップへ速めに入れる。
不安定と見られた最終ラインを狙った放り込みの継続はあまりなし。低い位置で奪った時に蹴りだすことはあったが、狙いというよりはクリアの意味合いが強い。また、バルセロナのプレスが組織立たない時は一度落ちつく術は徐々に身についてきていることもある。モウリーニョ体制の初期には、とにかく速攻への意識が強すぎて、効果的な攻撃にならないのに突っ掛けて失敗しボールを失うことが多かったが、うまくいなせるタイミングは出てきている。
こうしたことから、キックアンドラッシュのような蹴り出しは、今後も少しずつ減っていくことになるだろう。
ただ、奪った後、ペペやケディラが突進するシーンは何度か。これはかつてのペペシステムの時の速攻に通じるような形。最近はあまりなかったが、ここで一直線の上がりが復活していた。
勝つ必要がある試合だったので、このリスクは負ったということだろう。チャンスに絡めない代わりに、このプレーのために大きなピンチを迎えることもなかったが。
前半は、バルセロナのプレスが良くなく、マドリーは奪ったボールをそこそこ前へ運ぶことが出来ていた。
アタッキングサードに入ってしまえば、急造の最終ラインはそれなりに揺さぶれる。ボールを素早く動かして、最後はベンゼマのポストプレーからロナウドが決めて先制に成功した。強く蹴ってニアを抜く素晴らしいシュート。
直後のベンゼマのシュートは、あまりにも残念。思っていたよりボールが速かったのかと思うが、決めるべきボールを決めきれない彼の悪いところがでてしまった。
マドリーはサイドの2人にボールを運んでもらうのが第一の選択で、奪ってサイドで勝負。
そこに持っていく回数が重要なのだが、唯一捌きを期待したエジルが前半は酷い出来。判断が悪く、囲まれて奪われる場面が何度もあった。それだけ彼をボールが経由していたということでもあるが、彼のところで前半から繋げていれば、もっとチャンスらしいチャンスが増えていたはず。
左サイドは、マルセロがペドロに完敗し続けていて、ちょっとお粗末な出来だった。駆け引きでも、仕掛けのドリブルでもいいようにやられ、ここがウィークポイント。アウベスが負傷して下がったのが救いになった。
バルセロナの同点の場面は、ペペが直接の原因だが、あそこまで押し込まれるとさすがにバルセロナは落ち着いている。ああなる前に処理したかったところだが、バタつきは許してもらえなかった。
■運動量が落ちてから
後半のポイントは、運動量が落ちた時の対処。
60分くらいから明らかに運動量が落ち、戻りが遅くなって4-2-1くらいの人数で守ることが多くなった。さすがに速攻を受けそうなときはサイドも急いで戻っていたが、前半のコンパクトさを維持できなくなっていった。
そうなるとまず、ファールが多くなる。イニエスタやシャビが受ける技術が高いのは明らかだが、ここを1人で見ることが増えて、結果振り切られファールを犯すことがどんどん増えていった。
以前のような感情的な試合にはならなかったが、シャビ・アロンソは退場に値したし、逆転はメッシによる直接フリーキックによる得点だった。
前回のリーガでの対戦ではもっと戻りが速い印象だったが、疲れは勿論あっただろうが、守備よりも攻撃に目を向ける意思があったと考えるべきだろう。
私は、出来の悪かったエジルを早めに下げ、より守備に期待できるモドリッチを入れるか、ケディラを下げてエッシェンの運動量で活性化させる方策を取るべきと思っていたが、勝ち点差を考えれば、そうした交代は後回しになるべきだし、実際エジルに代わったのはカカだった。
時間帯からいっても、ギリギリまで引っ張って最後にカカの突破に賭ける作戦を当初から考えていたと見るべきだ。
その前に退場者が出ず、プランが壊れなかったのは、幸運というほかないが。
前半の出来にも拘らずピッチに立ち続けたエジルは、再び同点とするロナウドの得点をアシストし、モウリーニョの起用に応えた。
後半はスペースがある状態でボールを持つ機会も増え、結果として彼が出続けたことで成功した。なかなかフル出場がなく、体力的な面でモウリーニョのやり方について来られていなかった報道もあったエジルだが、昨シーズンのリーガに続きこういう時間帯に仕事をできたことは自信にもなるし、チームの信頼もより高まっていくことになるだろう。
先述のように、マドリーはエジルをカカに替えた。ベンゼマもイグアインに替えており、運動量の落ちた後半は縦への意識を強めた形となった。
理想はカカやイグアインの推進力を生かした突破でチャンスを作り、勝ち越すことだったが、間延びした状態ではそう何度も好機はなかった。イグアインがパスミスしたカウンターのチャンスでは、同数だったので落ち着いてボールを運びたいところだったのだが、上手く行かず。
終盤はバルセロナもスペースを生かして攻めたが、マドリーも最後の最後は集中を維持。
2-2で試合終了となった。
■もろもろ
最初に書いたように、試合としては、アウェイで一度リードを許しながら引き分けで終えられたことは評価すべき。
ただ、勝ち点差を考えれば勝ち点3が欲しいところだったし、実際そのチャンスもあったので、複雑な思いが残る。
今はバルセロナの取りこぼしに期待するしかないが、その時にプレッシャーをかけられる位置についておくことは大事で、その点で最低限の結果を出したとはいえるだろう。
しぶとさを見せてくれたので、これを契機により成熟したチームになってくれればと思う。ロナウドの勝負強さも磨きがかかってきていて、頼もしくみえてきた。
代表戦があるため、今週末はリーガはお休み。
次節は来週末、セルタをベルナベウに迎える。