レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

リーガ・エスパニョーラ第22節 vアトレティコ

完膚なきまでに叩きのめされたアトレティコ戦。そういう時こそ、きちんと記憶に留めておきたい。

■マドリーの先発メンバー

GK:カシージャス

DF:カルバハル、ナチョ、バラン、コエントラン

MF:クロース;ケディラ、イスコ

FW:ベイル、ベンゼマロナウド

46分:ケディラ→へセ、69分:イスコ→イジャラメンディ、73分:ベンゼマチチャリート

センターバックは若い2人。ハメスの分はケディラが先発となった。

アトレティコの先発メンバー

GK:モジャ

DF:フアンフラン、ゴディン、ミランダ、シケイラ

MF:アルダ、ガビ、ティアゴ、コケ

FW:マンジュキッチ、グリースマン

10分:コケ→サウール、71分:サウール→ラウール・ガルシア、77分:マンジュキッチトーレス

3位につけるアトレティコ。まだまだリーガの先は長く、連覇を狙える位置。

■がら空きの両サイド

アトレティコの4-4-2に対し、マドリーは4-3-3。

中盤が中央に3人となる形で、アトレティコの中盤のサイドはそのままでは空いてしまう格好になる。

対応としては、ベイルとロナウドのポジションにいるプレーヤーが帰って来てサイドバックと2人体制となるのが基本で、後は中盤の3人もボールのあるサイドにスライドしてスペースを消していく必要がある。

にも関わらず、ベイルとロナウドはいつものように戻って来ず。中盤のスライドも遅く、マドリーの両サイドバックは単独でサイドの守りを担うことに。

放置しても何とかなる相手ならば良いが、アトレティコほどのクラブに対して無策なのは致命的。

もともとサイドを使うのがうまいアトレティコは、マドリーのサイドの守りがサイドバック1人なのを早々に見抜いて、フアンフランとシケイラの両サイドバックが高い位置に進入し、サイドで2対1を作ってやりたい放題だった。

特にマドリーの左サイドは、アルダとフアンフランのコンビにいとも間単に崩された。クロースは助けに来るのだが、中央に戻るのも遅く、サイドに出て行ってはクロスを上げられ、空いた中央と逆サイドでチャンスを何度も作られていた。

先制の場面が象徴的で、陣形を乱されクロスを跳ね返すのが精一杯で、マドリーのプレーヤーは皆エリア内。セカンドボールを拾ったティアゴが気持ちよくミドルシュートを放てた。サイドがダメで、それをカバーしようとして中央が空いてしまう悪循環。

アトレティコとの対戦では、セットプレーも含めサイドからのボールの処理に苦労するマドリー。この試合ではセンターバックがナチョとバランで、普段よりも厳しいのは明らかだった。

アンチェロッティがそれでも4-3-3を選択した理由はよくわからない。

昨シーズン守備のバランスを整えることに成功した4-4-2を、今シーズンは使ったり使わなかったり。4-3-3に近い形を採ることで、前線の3人の守備が昨シーズンよりも非常にルーズになってしまっている。マドリーでの2シーズン目となるベイルを、ベンゼマロナウドとともにうまく生かして攻撃を作りたいということもあるだろうが、この起用法もあって昨シーズンのように献身的に中盤のブロックに参加することはほとんどなくなってしまった。

3人が守らないとなると守備は非常に厳しい。高いレベルで守りきることはほとんど不可能と言って良いだろう。

かつての4-2-3-1でも、マドリーは3の両サイドと1トップの守備参加のなさにずっと悩まされてきた。モウリーニョ期に守備の方法とともに守備への参加意識が一気に改善され、そしてアンチェロッティがやってきた。彼はある程度攻撃に専念できる2トップの一角にロナウドを組み込むことに成功。その上でベンゼマロナウドの守り方を整え、ディマリア、モドリッチアロンソ、ベイルの中盤で両サイドの守備の問題を解決した。

現在のBBCの3人が悠然と守備を放棄する状況には、一気にモウリーニョ以前にさかのぼったかのような印象を受けてしまう。

今シーズン、アンチェロッティはチーム一のテクニシャンであるイスコを、その足元の技術を生かしながらうまく守備には知らせることに成功した。ディマリアのように、技術の高い走れるプレーヤーを今シーズンも中盤に置いて、バランスの取れた形を再構築できるかと思っていたし、今でもそれを期待しているのだが、4-3-3で前線の3人に楽をさせていてはそれは実現しない。

力のあるクラブがこうしてサイドを使ってきた時、もちろんベストであればぺぺとセルヒオ・ラモスがある程度は跳ね返せるだろうが、守備が計算できる形を取り戻さなければ、この試合のようにやられてしまうだろう。

センターバックコンビ

ナチョとバランのセンターバックコンビには、こうした大きな試合での出番に奮起して良いプレーをしてくれることを期待していたのだが、完全に期待はずれに終わってしまった。

フィードは良くなく、コパでもセルヒオ・ラモスのフィードが狙われていたように、待ち構えているアトレティコへのプレゼントになるばかり。また、クロスへの対応も酷く、アトレティコのプレーヤーにエリア内で何度もマークを外され、シュートを許した。

もちろん、試合全体の内容の悪さは彼らだけの責任ではない。例えば、マイボールになった後に、アトレティコの守備をいなしてボールをどう運ぶかは整理できなかったのは、前線にも問題がある。また、クロスへの対応でも、走りこんでくるアトレティコのプレーヤーを中盤の面々が捕まえきれず、数的不利になってどうにもならないこともあった。

だが、局面ごとに切り取って見た時に、もう少しきちんとした対応を取れただろうと思えるシーンは決して少なくなかった。

フィードについては、味方には届かなくとも相手には良い形で奪われないところを使う、クロスへの対応でも少し体を寄せるなど、最高ではなくても、悪くないと言えるレベルのプレーはして欲しかった。

そのあたりのプレー選択の落ち着きが経験の有無なのだろうし、彼らにはまだ成長の余地はあるが、現状においてはぺぺとセルヒオ・ラモスの偉大さが際立つ試合となってしまった。

■精神的にも

この試合のチームの形としての問題は前述の通りだが、明らかに難しい形で試合に入ったことよりも残念だったのは、難しい状況になったことに対する反応の悪さ。

10分までくらいは互いに様子見で無難な内容、その後一気にアトレティコペースとなったにも関わらず、精神的に盛り返そうという気配もなく、普段と変わらないプレー振りで淡々とやられていたのはなぜなのだろうか。

ペペもセルヒオ・ラモスも、モドリッチもハメスもいない状況は厳しいものだったし、戦前から難しい試合になることは予想されてはいた。アトレティコにペースを握られるのも致し方なかっただろう。

だが、逆に言えば、事前に分かっていたセンターバックの問題をフォローしようとすることもなく、やられるに任せたということでもある。センターバックが難しい分、中盤や前線のプレーヤーが守備的に振舞って負担を軽減することも出来たはず。このデルビーに勝つために、自分がやりたい得意な仕事だけでなく、チームのために不得手なことも担って補おうとする意思が決定的に欠けていた。

時間の経過とともに相手に慣れ、それなりの内容だった時間も僅かながらあったが、前半と同じようにプレーしたことも指摘したい。内容は散々とは言え、数字の上では0-2。ハーフタイムに気持ちを入れ替え、勝つために必要なプレーをして盛り返すこと、少なくともそうしようとすることはできたのに、せっかくのハーフタイムに切り替えることもできなかった。

マドリーのようなレベルのクラブにしては、余りにもお粗末なメンタリティだったと言わざるを得ない。

必死になって走り回るのがいつまで経ってもイスコだけ、という状況は悲しくすらあった。

単なるリーガの1試合であればそうした雑さも許容しなければならない時もあるだろうが、デルビーであり、そもそも力のあるクラブとの試合であるこのアトレティコ戦で、勝つためにやるべきことをピッチ上で探さなかったプレーヤーが多くいたことは、本当に腹立たしい。

目の前の試合に勝ちたければ、ロッカールームでの指示を遂行するだけでなく、時としてピッチ上で必要なことをそれぞれのプレーヤーが考えなければならない。それをせず、漫然といつも通りにプレーし、苦しい味方のプレーヤー、そしてチームを助けようとしなかったことは、強く反省してもらいたい。

■忘れずに

チームとしてもマドリディスタとしても、久々に忘れ去りたいような試合となった。だが、こうした試合こそ強く心に刻まなければならない。ベストのメンバーがいなかった、ミッドウィークに試合があってコンディションが相対的に良くなかったなどと、それなりの理屈に逃げたい気持ちはあるが、そうして忘れてしまえば、また同じ過ちを繰り返すことになる。

プレーでも精神的な面でも、アトレティコはマドリーを上回った。

マドリーは、酷い内容でライバルに負けたという何もない地点からリスタートを図るべきだ。その出発点としてのこの試合の内容、悔しさを忘れるべきではない。

敗戦を糧として前進することとは、速やかに忘れて切り替えることではなく、その辛い経験の上に立って改善していくことだと私は思っている。

次節のデポルティーボ戦では、この試合から学んだことを少しでも生かした内容となることを期待している。