レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

CL準々決勝第1戦 vアトレティコ

今シーズン7回目のデルビー。以前はバルセロナとの対戦が食傷気味になるほど多かったが、昨今はアトレティコと。CLの魅力は他国のクラブとの対戦だと個人的には考えているが・・・

■マドリーの先発メンバー

GK:カシージャス

DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ

MF:クロース;モドリッチハメス・ロドリゲス

FW:ベイル、ベンゼマロナウド

75分:ベンゼマ→イスコ、85分:カルバハル→アルベロア

この試合で先発復帰といわれたペペは、結局先発せず。

アトレティコの先発メンバー

GK:オブラク

DF:フアンフラン、ゴディン、ミランダ、シケイラ

MF:アルダ、ガビ、マリオ・スアレス、コケ

FW:マンジュキッチ、グリースマン

77分:グリースマン→ラウール・ガルシア、83分:コケ→トーレス

マンジュキッチが先発。グリースマンはこのところ好調を維持している。

■マドリーの前半

前回対戦は0-4。離脱していたプレーヤーが多かったとはいえ、何もできないまま90分やられ続けた内容は衝撃的だった。

前線と中盤の激しいプレスに遭い、ボールを前に進めることもままならず速攻を何度も受け、結果的に4失点。もっと取られてもおかしくないような状況で、数字に表れる以上のダメージを受けた。

あの試合に比べると、今回は、エリア付近までボールを運びチャンスになり得る形を作ることができていた。

これには、マドリーとアトレティコ双方に理由がある。

1つ目は、マドリーの中盤のボールを運ぶ能力の改善。

前回対戦時の中盤はクロース、ケディラ、イスコ。今回はクロース、モドリッチ、ハメス。

前回対戦時はモドリッチ、ハメスが負傷中で招集外となっており、恐らくは高さと守備を考慮しイスコではなくケディラを先発させていたが、彼を起用するメリットはほとんど受けられず、ボールを運べないというデメリットが前面に出る状況となった。

今回はモドリッチが先発したことで、高い確率でボールを前に進めることができるようになった。ハメスもよく走っていたし、ボールを動かしてリズムを作り、中盤の安定に寄与していた。

2つ目は、アトレティコの守備が慎重だったこと。

前回と同様中盤の圧力をかけることも可能だったアトレティコだが、今回は退いてスペースを消すことが優先されていた。

アウェイゴールが重要なトーナメントで、自分たちが得点する可能性を高めることを考えるより、失点するリスクを最小限に抑えようとした形。

今シーズンのここまでの対戦を考えれば、これまでうまくいっていた積極的な守備を継続してもおかしくない中、現実的な路線を選択したシメオネは賢い。また、それ以上に、チームの形をきちんと実践したアトレティコのプレーヤーの我慢強さは称賛されるべきもの。功を焦って中途半端に出て行けば、全体のバランスが崩れかねないが、そうしたことはなく、組織立った守備を90分間維持していた。

こうしたことから、マドリーは中盤から前へ進めない、といったことにはならずに済んだ。

一方で、しっかりブロックを作ったアトレティコの守備は堅く、アタッキングサードでの崩しはうまくいかず。アトレティコの守備組織の外側でボールを動かすものの、その中でスペースを使うことはなかなかできなかった。

個々のプレーヤーの球際の集中力も非常に高く、マドリーが良い場面になりかけた時はすぐに寄せて楽にシュートさせてくれない。

組織として攻撃を概ねはねかえし、その網を潜り抜けてきたものは高いレベルの個々が対応する、組織と個の両方が機能していたアトレティコの守備は本当に強固だった。

それだけに、4分のチャンスをベイルが決め切れなかったのは痛い。

あんなふうにボールがこぼれて抜け出せるチャンスなど、そうそうあるものではない。ましてこの舞台、この相手ならなおのこと。こうした拮抗した勝負を分けるかもしれない場面だった。

オブラクのセーブは見事という他ないが、ベイルが決められなかったのは今シーズンの状況を象徴しているかのようだ。ベイルにもともと1対1が得意という印象はないとはいえ、昨シーズンは重要な試合(コパ決勝、CL決勝)で勝負を決めるゴールを挙げられていた。この場面もそうした類のものだった。一時期よりは動きも良く、ゴールも挙げられているものの、まだまだなのかと感じざるを得ないシーン。

アトレティコは、前半のうちは前述の通り下がって守ることを第一としていた。そのため、ボールを奪ってからの速攻もこれまでのような迫力を欠いた。ボールを奪ったら素早く人数をかけてゴールに迫るのではなく、前線の少ない人数で何とかできれば、というくらいの形。

カウンターに出て行く判断を誤ってカウンターをし返されるリスクを負わなかったということ。マドリーのスピードのある前線にスペースを与えないために、自分たちの攻撃機会でも危うい判断をしなかった。

マンジュキッチもいることから、まずはエリアを回復し、うまくいけば収められる、というような長いボールを使うことも何度か。マドリーのマンジュキッチへの対応は(荒くカードがもっと出ていてもおかしくはなかったが)及第点。さほど基点を作られることなくボールを回収できていた。

マドリーはアトレティコの守備を崩すに至らず、アトレティコも無理なプレーは避けていたことで、前半はマドリーがボールを持ちエリア付近に迫り続ける展開ながらスコアレスで終了。

アトレティコの後半

後半はアトレティコが徐々に盛り返す。

前半の守りで、ある程度までは問題ないと判断したのかもしれない。前半よりは攻撃に人数を割くことが増えていった。

コーナー、フリーキックスローインといったセットプレーをマドリー陣内で得た時、アトレティコは自信を持ってラインを上げ、攻撃に転じていた。セットプレーへの入念な準備と自信が伺える。また、マドリーの対応が悪い事も分かった上で、こうしたプレーを選択しているのだろう。特にコーナー付近に行った時は、突破して流れの中でチャンスを作るというよりコーナーを取ろうという意識があるように見えた。

実際、セットプレーの守備は怪しく、そのどれかがゴールになってもおかしくなかった。最初のボールに対する対応はもちろん重要だが、大きく跳ね返せなかった後が怖い。マドリーのようなクラブでは無理もないことだが、そうした場面でもクリアせずに繋ごうとすることがしばしばあり、そこを狙われることがある。無理せずはっきりしたクリアをした方がアトレティコ相手には無難。

前半のアトレティコのように、カウンターに出られる場面かどうか、より高いレベルで判断しなければならない。いつもであれば、多少リスクがあっても出て行くかもしれないが、リスクとリターンの天秤をもっと慎重に見定めて対応する必要がある。

危なかったのはセルヒオ・ラモスパスミス

試合を通じて、何度か相手にボールをプレゼントしていた。アトレティコがそれほど積極的でなかったことで、その後の対応によって事なきを得たが、そう何度も見たくないシーン。

この試合では欠いていたぺぺとセルヒオ・ラモスのパス出しはマドリーの組み立てには必須。落ち着いて危ない場面を引き起こさないようプレーして欲しいが、それ以上に今後萎縮してパスを出すことをためらわないで欲しいと思う。

アトレティコではアルダが躍動。自分で仕掛け、良いパスを供給してマドリーの守備陣に脅威となっていた。一方でコケがちょっとブレーキになっており、マドリーとしては助かったところ。

マドリーは前線もいつも以上に守備参加。4-4-2の形でかなり低い位置に下がることも厭わずアトレティコのセットプレーを中心とした攻撃に対応していた。できればカウンターを見据えて1人2人残したかったところだが、セットプレーになると高さのあるプレーヤーが下がらざるを得なくなるし、クリア気味に蹴りだすことも多かったので、マドリーもカウンターへ繋がる場面は少なかった。

前半はマドリー、後半はアトレティコが攻める展開で、互いにまずはそれをきちんと受けることを優先したことから、行ったり来たりのバタバタとした時間は最後までなく、攻める時は攻め、守る時は守る、という構図が時間帯によってはっきりした試合となった。

より良い流れを作るというよりは現状を悪くしないことが求められる試合の状況となっていたため、互いに交代は遅めで、3枚を使い切らなかった。

アトレティコはグリースマンを下げ、高さを使えるラウール・ガルシア、先述の通り調子が良いとは言い難かったコケをトーレスに替えた。セットプレーを中心に、うまく1点取れれば、という交代。

マドリーはベンゼマをイスコに替えて、中盤を厚くし、ロナウドとベイルをカウンターに備えさせる形に。カードを貰ってもおかしくなかったカルバハルをアルベロアに替えて守備を落ち着かせた。

これらの交代はすべて75分を過ぎてから。互いにそれまでの流れを下手に変えないよう注意した、細心の采配。

アトレティコは最後の最後で1点を狙えそうな雰囲気だったが、時間切れ。

0-0で試合終了し、勝負はベルナベウでつけることとなった。

■第2戦へ

マドリーとしてはベイルの場面をはじめ、どこかでアウェイゴールを取れた試合。それを逃したことは、ベルナベウでの第2戦に向けて大きなマイナスポイント。

この試合でアトレティコが実行したように、とにかく失点を避けるプレーをマドリーもしなければならない。それはマドリーがあまり得意ではないこと。しかもその上で、どんな形でも1点を取らなければならないのだ。アトレティコを相手にそれをするのは非常に難しい。

しかもベルナベウが味方につくとは限らない。攻撃に出ないことにプレッシャーがかかるようだと、マドリーは浮き足立って出て行くことになりかねないし、そうあるとアトレティコの思う壺。

状況に動じず、少なくともこの後半のようなレベルのプレーをベルナベウでもする必要がある。

一方で、ここまで散々だったアトレティコとの対戦成績と、それから来る印象を多少なりとも改善できたであろうことはプラス。

メンバーが揃い、いつも通りプレーすればこれくらいはやれる、ということを自分たちが確認し、自信に繋げられれば。第2戦が難しい状況の試合なのは間違いなく、弱いメンタリティでそれに臨むのは余りにも分が悪い。

どうあっても状況は変わらない。であれば、精神的な部分で優位に立って試合に入ることを目指すべきだ。その意味でこの結果は、アンチェロッティが言うように「さほど良い結果ではなかったが、自信が持てる」ものだったと言える。

この試合で得られたプラスの面を最大限に生かし、勝ち抜けを目指して欲しい。