大幅に遅れてアトレティコ戦。ベニテスの采配が議論の的となっているので、その点を中心に。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;クロース、モドリッチ
41分:カルバハル→アルベロア、65分:イスコ→ベイル、76分:ベンゼマ→コバチッチ
セルヒオ・ラモスが復帰。カゼミロが底でクロース、モドリッチと組む4-3-3。
■アトレティコの先発メンバー
GK:オブラク
MF:ガビ、ティアゴ;グリースマン、オリベル
FW:コレア、トーレス
46分:オリベル→カラスコ、57分:コレア→ビエット、63分:トーレス→ジャクソン・マルティネス
アトレティコはコケを負傷で欠いている。ビエット、ジャクソン・マルティネスはベンチスタート。
■ベニテスは間違ったか
結果として逃げ切りに失敗したことから、76分のベンゼマをコバチッチに替えた交代が槍玉に上がっている。勝ち点1を得たとはいえ、追いつかれてのこの結果は、気持ちとしてはすっきりしないものがあるのは確かだ。
しかし、今のアトレティコはかつてのお得意様だったアトレティコではないことは忘れてはならない。昨シーズンもビセンテ・カルデロンでは0-4と屈辱的な大敗を喫したし、CLもやっとのことで競り勝ったのだった。
アトレティコから何点も挙げることは難しく、この試合のように1点勝負とならざるを得ないことを考えると、70分を過ぎてしっかり試合をつぶしにかかったことは、私は問題と捉えていない。
それよりも、ほとんどの時間ボール支配で上回り、中盤の強みを生かして攻められていた前半に、ベンゼマの先制ゴール以降得点できず、後半にアトレティコの攻勢を許したことの方が問題視されるべきだろう。
後半ペースが落ちたことはベニテス自身認めているが、逆に言えばそれだけ前半に力を使い、実際に主導権を握れていたということでもある。その時間にもう1点取れていれば、後半のマネージメントはずっと楽になったはずだった。
その前半にも綾があった。
まずはセルヒオ・ラモスのミスをつかれたペナルティ。低い位置でのパスミスと、それを挽回したはずのプレー直後の持ち出しが雑になって奪われた2つのミスが一連のプレーで起こった。
ここまでリードして良い流れで来ていたチームに水を差すプレー。しかし、グリースマンのペナルティキックはケイラー・ナバスがストップ。なんとか凌ぐことができた。
もう1つはカルバハルの負傷交代。
先制点のアシストとなったクロスは彼の独力突破からのもの。ダニーロが復帰していない現状で、右サイドの攻撃は彼によるところも大きい実際、ダニーロとのポジション争いが良い刺激になっているようであり、今シーズンのカルバハルは精力的にプレーしている。そのカルバハルがいなくなり、アルベロアが入ったことで、右サイドの攻撃は迫力を欠くようになった。
アルベロアはベテランとして落ち着きはもたらしてくれるが、攻撃面での速さは求められない。前線がイスコだったこともあり、右サイドは縦の速さを失った。
また、左で作って右で仕掛ける形が使えなくなったことで、マドリーの攻撃全体が停滞することとなってしまった。
このことで後半マドリーはボールを持つことを諦めたとも考えられる。
ポゼッションでは力を発揮できるイスコを下げてベイルを投入したのは、カウンターを狙う定石どおりでもあるし、こうした前半を受けての対応でもあった。
ここで最初の話に戻るが、ベイル、ベンゼマ、ロナウドという前線になり、アトレティコが攻めながら時間が経過していく中で、カウンター狙いにシフトしながら1点を守りきる選択が間違っていたというのであれば、あまりにもアトレティコの力とそのプレースタイルを軽視している。
マドリーのスタイル上こうした逃げ切り策は受け入れがたいというのなら、見栄えの良い格好で華々しく勝ち点を落とし、タイトルを逃しても何も言わないことだ。
予算上はバルセロナとの二強状態だが、結果を見れば混戦となっているリーガでタイトルを得るためにはこうした厳しい試合で勝ち点を得ることは非常に重要で、現実的な采配は受け入れる必要がある。
ここまでの得点の少なさ、格下相手にもスコアの上では競られることの多いベニテスの守備的なスタイルに対する批判はあるだろうし、私もその点は不安に感じている。しかし、その話をこのアトレティコ戦に持ち込むことには大きな違和感を感じる。
CLでも準々決勝や準決勝まで上がってくるクラブが相手であっても、マドリーはやりたいようにだけプレーすべきだし、それで勝てるはずだ、という考え方は否定しないし、ベニテスはそうした采配をしないからマドリーにふさわしくない、という考えもあるだろうと思うが、現実的にはそれで勝てる可能性が高くなることはないのは明らかだろう。
私はそうしてタイトルを取り逃しても良いという考えには与しない。それよりも、しぶとく勝ってカップを掲げるチームが見たい。それは誰が監督で、どんなメンバーのチームであっても同じことだ。
ベニテスがマドリーでそうしてタイトルを取れる監督なのかについては当初から疑問を持っているけれども、少なくともこの試合で見せた対応は、勝つためにはさほど悪いものではなかったと考えている。