連戦は続く。今週もミッドウィークの試合が予定されており、息つく暇もない。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
58分:カゼミロ→イスコ、77分:ベンゼマ→モラタ、88分:ベイル→ルーカス・バスケス
ペペが久しぶりに先発。中盤は疲労が心配される。
■ビジャレアルの先発メンバー
GK:アセンホ
DF:マリオ・ガスパール、ムサッキオ、ビクトル・ルイス、ジャウメ・コスタ
MF:ブルーの・ソリアーノ;トリゲロス、ジョナタン・ドス・サントス
FW:カスティジェホ、バカンブ、アドリアン
35分:アセンホ→アンドレス・フェルナンデス、57分:アドリアン→チェリシェフ、75分:トリゲロス→ロドリゴ
ビジャレアルはここまでリーガ最小失点。元々技術の高いチームという印象だったが、守備も強化されているよう。CL圏内は十分に目指せそうだ。
■攻撃には繋がらず
バレンシア戦は序盤の2連続失点で全てを失うことになった。
その直後の試合ということもあってか、マドリーは前半かなり抑制されたプレーで臨んだ。慌ててバランスを崩すようなことはせず、まずは試合に入っていくことを重視したような内容だった。
それを際立たせることになったのは、ビジャレアルの充実振り。
ブロックの周囲でマドリーの攻撃を処理し、ボールを持てば良く動かしてプレスをかわしていた。パスの技術の高さはさすがリーガ上位のクラブで、連動しないプレスではひきつけられて大きく展開されるばかりだった。
攻めさせておいてカウンターの一刺しを狙えれば良かったが、ビジャレアルのポゼッションに対し、マドリーの対応は中途半端。何となく追う時もあればそうでない時もあり、どういう形で奪って攻撃に繋げていくのかという意図が見えなかった。
ベイルが復帰してきたとはいえ、試合の延期で得た短い休みが明けてからの連戦で、全体的に改めて疲労が溜まってきているようにも思う。万全に走り回れるわけではない状態で、上手い相手のパス回しを寸断しようというのは、精神的にも肉体的にも厳しいもの。
それにも拘らず、きっちり下がってブロックを作って速攻に繋げる割り切りができなかったことで、攻撃の糸口を見失うことになってしまった。
マドリーの守備は、攻撃に繋がらない点を除けばそこそこ。最後のところをやらせないという点は前半はできていた。
ペペは久しぶりの先発機会ということを感じさせない安定感。ベテランらしいプレーで最終ラインを支えてくれていた。組み立てでも良いパスを供給できており、攻守に渡ってレベルの高さを印象付けた。
とにかくミスをしないことが、バランはじめ他のディフェンダーと彼の違い。身体的には衰えていくことになるが、判断は間違えないので、致命的な失敗に繋がる心配がいらない。
ポジションを争うバランは、その点においてまだまだ。以前から判断のまずさが見られ、直前のバレンシア戦でも彼のところから失点している。彼については、年齢的には若いのでこれから、あの年齢でマドリーのセンターバックをやれていること自体がすごいことだと言われる。確かにそうだが、もう何年もプレーしていながら、この点で進歩が見られていないことは憂慮すべきだ。
「上手いが危なっかしい」という状態は、安定感が求められるポジションでは厳しい。無難に仕事をやり遂げる点では、ナチョも台頭してきており、「ペペの世代交代はバラン」といつまでも期待しないことになるかもしれない。
幸い、ペペ自身がこの試合で見せたようなプレーができるので、今シーズンともう1シーズンくらいは、最終ラインを支えてほしい。その間後継者を見定める時間があればと思う。
内容としてはマドリーより随分良かったビジャレアルのアクシデントは35分。守備を支えるアセンホが負傷交代。
しかも、後には前十字靭帯の損傷と、ほとんどシーズン終了という負傷であることが明らかになってしまった。
■立て直せなかったことこそが問題
前半はスコアレスで経過し、勝負の後半。
としたいところだったが、バレンシア戦のような連続失点をまた喫し、アウェイで苦しい状況に追い込まれることになった。
50分、クロスをカスティジェホが折り返し、エリア内からトリゲロスがボレーで決め、ビジャレアルが先制。
更に56分、ブルーノのパスを受けたバカンブがセルヒオ・ラモスの寄せを受けながら正確なシュートを決め、僅か6分ほどで2-0とされてしまった。
1点目は精度の良いボレーシュート。2点目も、オフサイド気味ではあったが、パスとタイミングを合わせてうまく抜け出し、落ち着いてシュートを決めている。これら個々のプレーではビジャレアルの素晴らしさを評価すべきだ。
マドリーの問題は、それぞれ防げなかったことではなく、2試合続けてあっと言う間に2失点してしまったということにある。先制点は相手のうまさを認めざるを得ないにしても、そこから流れを修正できないままに失点を重ねてしまうのは自分たちの問題だ。
相手のプレーが上回ることはあるし、それで失点してしまうことがあるのはどうしようもないこと。重要なのは、その後に流れを取り戻すことだ。
マドリーの戦力なら、それなりのプレーができればゴールを挙げることはできるのだから、そういう展開にもっていくことが大きなポイントになってくる。失点して慌ててしまい、更に失点を重ねるなどという反応は全く擁護できるものではない。
ゴールの場面でのプレー以上に、失点後のチームとしてのリアクションを良く考えてほしいものだ。
勝利には3点以上が必要になったマドリー。
ジダンは、良い時に比べればぱっとしない中盤に手を入れ、58分にカゼミロをイスコに代え、クロースを底に置くことにした。
イスコは様々な場所に顔を出し、攻撃をスムーズに。後がなく、無理をしなければならなくなった状態も彼にとっては有利に働いた。自由に動くことが許され、彼の良さが出るようになったと言える。
64分、反撃のきっかけとなる得点。右サイドからのカルバハルのクロスをベイルが頭で合わせた。カルバハルのクロスの精度が見事。
ベイルはフリーで、合わせるだけで良かった。
73分には、エリア内でブルーノのハンドの判定。ここまでうまくやってきたビジャレアルにとっては酷な判定となってしまった。
抗議があり、スタジアムも騒然とする中で、ロナウドは何事もないかのようにいつもの向かって左のコースに決め、10分で同点に。ロナウドのペナルティを蹴る技術、動揺しない精神的な対応は、「どうせペナルティ」と見過ごされがちだが、こういう場面でしっかり言及しておきたい。
ビジャレアルはトリゲロスを下げてロドリゴ。攻撃面で貢献の大きかったトリゲロスを下げて、中盤の修正を図る。
マドリーのこうした攻勢の時の勢いはすごい。後半の最初の失敗を取り戻すべく、押し込んでアタッキングサードでのプレーを続けた。こじあけようとすると、どうしてもクロスが多くなりがちで、ある程度は対処されるものだが、イスコがいることで中央の崩しも狙うなど、使うかどうかはともかく選択肢を見せることができたことで、バレンシア戦よりは可能性を感じる攻撃ができていた。
83分、イスコが中盤でボールを奪い、ロナウドが持ち上がってマルセロへスルーパス。マルセロのクロスにモラタが合わせ、3-2と逆転に成功した。
イスコが守備で粘り、ロナウドからマルセロへのサイドの展開、そこからの精度の高いクロスと、いい形の速攻が最後に結実した。
モラタは途中出場でまたもゴール。ディフェンダーからの逃げ方、飛び込み方はストライカーらしい。ゴール前での仕事という点では、ベンゼマを大きく上回る成果を出している。
逆転を許したビジャレアルは、ここから再び攻勢に。マドリーは負傷の心配のあったベイルをルーカス・バスケスに替えるお馴染みの交代で凌ぐことに。何とか失点はせず、3-2のまま勝利。アウェイで大きな勝ち点3を得た。
■今後に向けて
幸運な判定もあったが、それでもビジャレアルを相手にアウェイで2点差を逆転したことは、リーガタイトルを争う上ではもちろん、今後のチームのモチベーションを考えても非常に重要。
バレンシア戦と同様の失敗はあったものの、こうして盛り返せた結果が自信に繋がる。疲れ気味のチームに勢いを与える試合になるだろう。
ベイル、モドリッチと負傷が懸念されたプレーヤーも問題なかったようで安心。
バレンシア戦、このビジャレアル戦と、成果と課題ははっきりしているので、修正しつつCLに向かっていきたい。
ミッドウィークはラスパルマスをベルナベウに迎える。