今シーズンはELを戦っており、リーガでもCLを狙える位置につけるビジャレアルとの対戦。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:カルバハル、バラン、ペペ、マルセロ
MF:ベイル、ルーカス・シウバ、クロース、イスコ
72分:ルーカス・シウバ→ヘセ
ルーカス・シウバが続けて先発。復帰は秒読み段階となっているモドリッチが帰って来た後はどうなるだろうか。
■ビジャレアルの先発メンバー
GK:アセンホ
DF:マリオ・ガスパール、ドラド、バイイ、ハウメ・コスタ
MF:ジョエル・キャンベル、セルヒオ・マルコス、ピナ、モイ・ゴメス
FW:モレーノ、ジオバニ・ドスサントス
61分:ピナ→トリゲロス、62分:ジオバニ・ドスサントス→ビエット、68分:セルヒオ・マルコス→ジョナタン・ドスサントス
ELをアウェイで戦った後で、主力を休ませながらの構成。
■さすがのビジャレアル
CLの決勝トーナメントで各クラブと互角に渡り合っていた頃から、ビジャレアルはボールを持ってしっかり攻める形を継続している印象。降格を経ても、いかにもリーガらしいスタイルで戦っていた。
マドリーの守備はそれほどさぼっていたわけではないのだが、狭い局面をパスで打開できるビジャレアルからボールを奪うことは出来ず、寄せにいったところをかわされて最終ラインが晒された状態で守らざるを得ない場面を何度も作られた。
モイ・ゴメスとジョエル・キャンベルの両サイドは献身的で、しっかり守備ブロックを作れる位置に下がって、そこから攻撃に参加することを繰り返していた。彼らが実直に上下動を繰り返すので、マドリーはサイドから守備のずれを作ることができず、守備ではサイドのケアに人手を割かなければいけないことなった。
マドリーは、危うい場面こそ少なかったものの、下がらざるをえなくなる最終ラインとともに、中盤も低い位置に戻ることを余儀なくされ、ボールを奪い返す位置が低かった。
最初の寄せにいった面々は前に取り残されていることが多く、ボールを取り返した位置との距離が遠くなってしまっていた。その状態では前線が中盤より後方のプレーヤーと連携していくのは難しい。
マドリーのとりうる方法は、奪われた瞬間に奪い返すだけのプレスをするか、きっちり下がってBBCを中心としたロングカウンターでビジャレアルの守備が整わない状態で攻めるかのどちらかで、今のチームであれば通常は後者を選ぶことになる。だが、忠実に守備に戻るビジャレアルを上回るだけの徹底した形は作れず。結局、4-4のブロックを作られた後にその外側から攻めの形を作っていくことになり、下がった相手に対し手数を要することになった。
守備の網の中へ入っていく有効なプレーが少なく、最終的にはクロスで終わることが多かったマドリーの攻撃。
もともとクロスに合わせることを主たる形としていないマドリーがこうした流れになった時のクロスには全く期待が持てない。少し前まで良いボールを供給していたマルセロも、シーズン序盤のようなノーチャンスのボールを何度もあげて、相手にボールを渡してしまっていた。
狭い局面でもつなげるパスワーク、チームの状況に合わせて上下動を繰り返してくれる両サイドと、ビジャレアルのまとまりがマドリーを上回った。
ビジャレアルはミッドウィークにELの試合をこなしており、マドリーよりもコンディションが良くなく、控えのメンバーも多かったにもかかわらず、ベルナベウで互角だったことは、彼らがチームとして整備された形を持っていること、それを主力と遜色なく実行できるメンバーがいることを示している。
コンディションの面でも優位に立っていたはずのマドリーが攻めあぐねたことで、ビジャレアルの良さが浮き彫りになった前半だった。
■幸運のリードも
マドリーはエリア内でロナウドがバイイに倒され、52分にペナルティ。ロナウドが普段とは逆の向かって右にきちんと決めて先制に成功。
ここまで決定機はほとんどなく、倒された場面から言っても非常に幸運な得点。うまくいかない前半を過ごし、後半の立ち上がりにウンが転がってきたので、これを生かしたいところだった。
リードを得て、マドリーは無理をしなくなるが、前半でもビジャレアルに脅威を与えていたわけではないのにギアを落としすぎた。前半の内容でビジャレアルは自信を得て、ビハインドを負っても焦らずやり方を維持。
徐々にオープンになっていくと、マドリーにも得点機はあるが、当然ビジャレアルにもあることになる。行ったり来たりの展開でビジャレアルのメンバーはよく走っており、マドリーがリードを守れるかは運任せといった状態に。
ボールを失うことを避けるようプレーするならばわかるが、そのあたりの意思統一が中途半端だった印象で、ビジャレアルに必要以上にボールを与え、前半よりも難しい守備をせざるをえなくなった。
マドリーにとっての光明はクロースとルーカス・シウバのプレー。
ルーカス・シウバがプレーするようになって、中盤右よりの守備はかなり安定した。クロースとの兼ね合いもまずまずで、うまく切り盛りしている。彼らが何とかしなければ、もっと危ない試合になっていたはず。
モドリッチが復帰してくればモドリッチがファーストチョイスになることはまず間違いないことだが、守備的に試合を進めたい時のルーカス・シウバは重宝しそう。そうした役割になるはずのケディラは繋げないことが相手にも味方にもわかられているし、ゴール前に出て行くこともあって、守って試合を締めるには心もとない。ルーカス・シウバはそれなりにボールを動かせ、守備を考えたプレーをしているので、印象が良い。
ビジャレアルを率いるマルセリーノの交代は先手の対応。
61分と62分に主力のトリゲロスとビエットを投入し、プレーレベルを高める。
64分にクロースがエリア少し外でボールに届かずこぼしたところをモレーノが隅に決め、同点に。
その後もトリゲロスは中盤でうまいボール捌きを見せ、ビエットは前線でポストプレーや飛び出しでマドリーの最終ラインにプレッシャーを与え続けていた。
68分にジョナタン・ドスサントスを送り出して、早くも交代枠3つを全て使用。控えの多いチームで臨んで良い形で乗り切り、うまく同点に追いついて残り30分から25分ほどで勝負をかけるという、ビジャレアルにとっては理想的な展開。
アンチェロッティの交代は例によって遅めで、マルセリーノとは対照的。
勝ち越しを目指してルーカス・シウバに替えてヘセを入れたのが72分。イスコを中央に入れ、ヘセが中盤のサイドに。無理にでも攻めたい時はBBCを残しつつヘセを足すことを今年何度かしており、リスクを負って攻勢に出るのかと思ったが、78分にイスコをイジャラメンディと替えたのには驚いた。
アンチェロッティはバランスを取るためと述べており、確かにヘセ、イスコ、クロース、ベイルの中盤でビジャレアルの攻撃を受け止めるのは難しい。
だが、そうであれば、イスコとヘセ、ルーカス・シウバとイジャラメンディというように同じポジション同士で替えた方が良く、ベルナベウで勝ちたい状況で一旦攻撃的な交代をしながら、僅か数分でバランス重視となったことに説明はつかない。
ボールを運べ、最後のところで前線をうまく使うことの出来るイスコがいなくなり、ピッチの上でも前線が個々に何とかしなければいけない状況になったし、今やマドリディスタの寵児となったイスコが下がったことで、ベルナベウの雰囲気としても勝ち越しに向けた勢いを殺ぐことになった。
中盤との距離が遠く、ロナウドやベイルを生かすようなプレーが少なかったベンゼマを諦めて、スピードのあるチチャリートを入れたのは妥当。裏抜けでペナルティかという場面があったが、得点に繋がらず。
結局引き分けで勝ち点1を得るに留まった。
ビエットのシュートが決まっていればその勝ち点もなくなる恐れもあったが、カシージャスが威厳を見せた。
■最後に
控えが多かったがチームとしての質を保ったビジャレアルを相手に勝ち点1。マドリーは得意の攻めの形を作れず、ペナルティを得た運も生かせなかった。
こうしたクラブを相手に、リーガでなかなか勝てないのは、タイトルに向けての懸念材料。それだけELやCLを目指せるあたりのクラブの実力があるということで、リーガを見る者としては嬉しいが、マドリーはその中でも勝つべきクラブ。このクラスのクラブとの試合はまだまだ残っており、ここで取りこぼしが続くと、リーガは難しくなる。
モドリッチ、セルヒオ・ラモスと主力の負傷者が帰って来るのは良いニュース。戦力が揃い、この先チームとしての完成度を高めていければ。
次節はアスレティックとアウェイで対戦。
難しい試合が続く。