遅ればせながら、アトレティコとの第2戦。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:ダニーロ、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース;イスコ
76分:ベンゼマ→アセンシオ、77分:カゼミロ→ルーカス・バスケス、88分:イスコ→モラタ
ダニーロが先発。ナチョだと万が一の時に対処しづらいということもあるが、それにしてもジダンは一貫している。
■アトレティコの先発メンバー
GK:オブラク
DF:ヒメネス、サビッチ、ゴディン、フィリペ・ルイス
MF:ガビ、コケ;サウール、カラスコ
FW:トーレス、グリースマン
56分:トーレス→ガメイロ、ヒメネス→トーマス、76分:コケ→コレア
第1戦はベンチだったトーレスが先発。
■2失点の後が鍵に
マドリーの立ち上がりは悪くなかった。もっとボールを持たれて押し込まれるかもしれないと思っていたが、攻められはするもののその分高い位置にボールを持ち上がることも出来ていて、思ったよりも拮抗しそうな立ち上がりとなった。
まず3点が必要なアトレティコは、最初から悠長なことはしていられないと、どんどんプレスをかける。それに対するマドリーは、モドリッチとイスコの個人能力で凌ぐ。追われる形の時の彼らのいなし方は何とも滑らか。人の間を縫ってするすると抜け出していた。
組織としては、カゼミロのところが弱点。、明確なミスはないものの、プレスをかわし攻撃を組み立てることに寄与できないプレーばかり。技術はそこそこあるのに、どうボールを動かせば攻撃が進んでいくかという考え方の点で、他の中盤のプレーヤーと比べると大きな差がある。普段は奪ったボールを周囲の優秀なプレーヤーに任せればいいので、ここまで顕在化しないが、こういう試合だと物足りなさが目に付いてしまう。
かつてのケディラほど明らかではないにせよ、カゼミロから出た先で問題が起きそうな気配がずっと出てしまっていた。
問題は抱えつつ、個々の能力の高さもあって、非常に悪い立ち上がりになることは避けたマドリー。
が、12分にコーナーをサウールに合わせられて先制を許す。
何とか最序盤を乗り越え、試合としても一方的にならないよう進めて来られていたのに、セットプレーで失点してしまった。ニアに良いボールが入り、ぴたりのタイミングで飛び込んだサウールを褒めるしかないが、失点の仕方、早い時間だったことは残念だった。
トラブルは続く。
15分、バランがトーレスをエリア内で倒しペナルティ。これをグリースマンにきっちり決められ、合計スコアで1点差となった。
前を向いてボールを持たれてはいたが、決定的な場面ではないところ。バランの足の出し方とタイミングは安直だったといわざるを得ない。せっかく懸念された不安定なボールの持ち方はなかったのに、こういう場面でこういうプレーをしてしまうのが彼の短所。
1点差となって、慌ててしまいそうなところだが、マドリーが素晴らしかったのは、この展開でも焦らずにプレーし続けた点。まだリードしていることをきちんと認識し、冷静な試合運びを変えなかった。アウェイでのこの大一番で、これはなかなかできることではない。
嵩にかかって攻撃の機会を作ろうとするアトレティコに対し、無理せずボールを動かして対処できていた。待ち構えているのではなく、相手が寄せてくる状況が増えると、空いたスペースを使うイスコとモドリッチのドリブルはさらに生きる。彼らが悪い奪われ方をすることはほとんどなく、最低でもファールをもらえていて、安心感があった。
セットプレーで先制し、ペナルティももらったアトレティコは、前半のうちに一気呵成に同点、逆転といきたかっただろう。点は取れる時に取るという勢いで、一旦落ち着いて、じっくりもう1点を取りにいくという考え方はないようだった。
そうした圧力で相手がバタバタすれば3点4点と得点を重ねられるチャンスが増えるのだが、この日のマドリーは至って冷静。追われることで返ってリードがあることを認識したようなプレーで、何度もファールをもらってはゆっくりリスタートを繰り返していたのが印象的だった。
追い回す方のファールがかさむのは道理。アトレティコは2点得た後の頑張りが空回りしてしまっていた。
1点差の試合となって、拮抗する時間が続くなか、ちょっとした隙からマドリーがチャンスを作る。
42分、アトレティコのなんでもないパス回しが乱れたところにロナウドがちょっかいを出してマイボールのスローインに。これを縦に出し、ベンゼマがコーナー付近で相手を背負いつつボールを受ける。この時点では彼しかおらず、中には誰も入れていなかったが、流れながら中を向かせてもらい、時間を作ると、ダブルタッチ2回でゴールラインギリギリを突破し、クロースへパス。クロースのシュートはオブラクが防ぐも、イスコが押し込んだ。
ベンゼマは3人に囲まれながら、キープするだけでなく、魔法のようなひらめきでこれを突破した。彼の価値を見せ付けるプレーで、貴重なアウェイゴールをもたらした。
■交代はいまいちだったが
再び3点が必要になったアトレティコ。
だが、前半にエネルギーの多くを割いたせいもあり、後半は前半ほどの勢いを出せなかった。10分様子を見た後、シメオネはガメイロとトーマスを投入。
マドリーは例によって交代が遅め。マドリーもペースが落ちると、スペースが広くなってきて攻め合いに。もちろん先に止めをさせれば問題なし。だが、そう簡単に2点目は取らせてもらえない。どちらかというと、アトレティコが攻める勢いを取り戻したような格好になった。
ダニーロも後ろを向いたプレーで致命的なミスがあったものの、ナバスが連続したセーブで最後はやらせず。ナバスはこうしてシュートを多く受けた方がリズムを掴むような印象。やられそうなほど反応が冴えていた。
アトレティコはコケをコレアに替え、ガビを底に置いて攻撃に枚数を割く。
マドリーは残り15分になってからベンゼマを下げアセンシオ、カゼミロを下げてルーカス・バスケスを入れ、明確な4-4-2に移行。サイドのバランスを取るためのバスケスだったが、試合はあまり落ち着かず。
2点目は取れれば良いが無理する必要は全くなく、まずは守備を整えたい時間。そして、いかにも守備を考えた交代とシステムの変更だったが、こういう変化は練習の中では想定されていないのかもしれない。今の戦力や序列を考えると、良くありそうな状況にもかかわらず、うまく消化できていない様子だった。
こうしたマドリーの隙に早い段階でつけ込まれれば危ない。アウェイゴールを挙げた後しっかり守りきりたくなる状況でも、交代は終盤まで取っておくジダンの判断には、こうした布陣の変更への不安があるようにも思える。
そう考えると、イスコを起用する時の無理やりな4-4での守備であっても長く引っ張るようなことにも合点がいく。
ただ、ジダンが優れているのは、こうした苦手な点をうまく隠して起用を続けているところ。戦術的に弱点を隠すような引き出しはないが、出来ることを積み上げてチームを作っていて、それが上手く回っている。
理想から出来ないことを引き去るのではなく、「こういうことが出来る」ということを足し算していっているというべきだろうか。だから各所に弱点を抱えつつ、プレーヤーは出来ることをやるのでモチベーションを持ってプレーし、結果に繋がっているような印象を受けた。
試合は、最後まで落ち着かなかったものの、3点目は与えず。合計スコア4-2で決勝進出を決めた。
■最後に
連続失点の後の前半の乗り切り方で、試合の進み方を決めた。そしてベンゼマの美しいプレーからのアウェイゴール。良く我慢し、このワンプレーのチャンスをものにした。
決勝はユベントスと。カルバハルをはじめとした負傷者にはできるだけ帰ってきてもらい、良い状態の先発を組みたい。あと1か月、リーガの行方も含め、どういうシーズンの終わりになるだろうか。
CL決勝までの残りの試合も厳しいが、ラストスパートで粘ってほしい。